結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年05月31日(月曜日)

幸運なことが二つ「コロナワクチン接種予約」と「新著三刷」

Everybody! Good Monday!
[2021vol㉒]
2021年第22週。
5月最終週で、
明日からもう6月だ。

しかし夏の祭りの中止が、
相次いで決定されている。
日経新聞が報じた。

さみしいことだ。

日本三大祭りのひとつ「京都・祇園祭」
7月の山鉾(やまほこ)巡行を中止する。
昨年に続いて2年連続。
〈公益財団法人祇園祭山鉾連合会公式サイトより〉
05

毎年6月開催の「金沢百万石まつり」も、
2年連続ですべての行事を取りやめる。

福岡の「博多祇園山笠」は、
私の故郷の夏の祭りだが、
「舁(か)き山」の実施を22年夏に延期する。
鑑賞用の「飾り山笠」は、
市内各地に設置されるものの、
男衆が担いで疾走する舁き山は延期。
〈博多祇園山笠公式サイトより〉
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高知の「よさこい祭り」も、
「秋田竿燈まつり」も中止。

こうなると町内・村内の小さな祭りも、
開催しにくくなるのかもしれない。

経済的な損失も大きいし、
商業への打撃も相当なものとなる。
人々の意識も落ち込む。

それでも東京五輪は、
灰色のまま進んでいる。

9都道府県の緊急事態宣言は、
6月20日まで延期される。
北海道・東京・愛知・大阪・兵庫・京都、
そして岡山・広島・福岡。

この9道府県とともに、
沖縄でも来月20日まで緊急事態宣言下が続く。

まん延防止等重点措置は、
神奈川・千葉・埼玉と岐阜・三重。
これも6月20日まで延長される。

これからの20日間が、
祭りだけでなく、
五輪開催の白黒をつける日々だ。

いつまでも灰色でいることはできない。

唯一の希望はCOVID-19ワクチンである。

しかし大規模接種の東京会場は、
予約の空きが全体の3割強にのぼる。
5月31日の今日から6月6日までの接種分、
用意された7万人分のうち、
予約済みは4万7000人分だった。
〈防衛省・自衛隊ホームページより:以下同じ〉
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そこで私もこの週末に、
パソコンでネット予約を試みた。
社会人の娘が予約を後押ししてくれた。

そうしたら本当に偶然なのだろうが、
インターネットで5分も待たずに、
予約が取れてしまった。

東京・大手町の大規模接種センターは、
自衛隊によるワクチン接種である。
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東京23区の高齢者から始まって、
東京都全域へと順番に受け付けられた。
それでも予約は予定通りに進まず、
神奈川・千葉・埼玉に広げられた。

大手町は東京の中心部だが、
高齢者がここまでやってくることは、
なかなか骨が折れるのだろう。

横浜在住の私は毎月、
大手町プレイス内科で、
血液検査と診察を受けている。

アクセスも比較的便利で、
6月6日に接種することとなった。

ありがたいことだ。
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5月18日のブログで書いた。
渋滞学の権威・西成活裕東京大学教授の分析。
渋滞を軽減するためには、
「譲り合い」が必須である。
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同感だ。

だから私は考えていた。
それほど急ぐこともない。
慌てることもない。

だが、空きが3割となると、
今度はそれを埋めることも、
全体最適に貢献する。

ということで、
自衛隊のモデルナ接種が決まった。

正直なところほっとした。
68歳なりに万全の態勢を整えて、
それでも仕事であちこち動き回った。

ワクチン接種は、
人に迷惑をかける確率も軽減する。

ありがたいことだ。
感謝を忘れてはならない。

ワクチンの効果は4つ考えられる。

①発症予防の効果
感染しても症状が出ることを抑える。
新型コロナウイルスならば、
新型肺炎の症状が出るのを抑える。

②重症化予防の効果
症状が出ても重症にならないようにする。
現実的にはこの効果がいま、
一番期待される。

これら①②は個人の問題だ。

③感染予防の効果
感染そのものを防ぐ効果だ。
これは実証がなかなか難しいが、
感染しても発症しない人が多くいるから、
ワクチンの感染予防効果も、
ある程度考えられる。

臨床試験で調査もされている。
ワクチンを接種した人のグループと、
偽薬を投与した人のグループで、
発症した人の数を比較して、
発生予防効果を測定する。

そこでわかってきたのは、
感染予防効果もある程度見込めることだ。

④集団免疫の効果
多くの人がワクチンの接種をして、
多くの人がウイルスへの抗体を持つことで、
社会全体が守られる効果。

集団免疫は様々なもので解説されている。
山本太郎著『感染症と文明』がいい。
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国や地域などの集団の中で、
ほとんどの人が免疫を持つことで、
一部の人が免疫を持っていなくても、
感染が広がらない状態になる。

免疫を広げるための手段がワクチン接種である。

WHO(世界保健機関)は、
集団免疫の状態となる条件に関して、
人口の7割以上を基準にしている。

イスラエルは世界で最も早いペースで、
ワクチン接種が進んでいる。

そのイスラエルで効果を調べた論文では、
2回目の投与を受けたあと7日目以降では、
発症を予防する効果が94%、
重症化を防ぐ効果が92%だった。
無症状者を含む感染予防効果も92%だった。

集団免疫までは、
まだまだ時間が必要だが、
感染予防効果は心強い。

それから今日、
もう一つうれしいニュース。
結城義晴著「コロナは時間を早める」
第三刷が決定しました。
コロナ本

刷り上がりの予定は、
6月17日。

これで4月17日の初版一刷、
5月17日の二刷、
6月17日の三刷。

ありがたいことだ。

月曜日から感謝、感謝。

では、みなさん、今週も、
「ありがたい、ありがたい」で、
Good Monday!

〈結城義晴〉

2021年05月30日(日曜日)

ワクチン開発の歴史物語とワクチンの知識

「ワクチン」は、
ルイ・パスツールが命名した言葉だ。

パスツールは「近代細菌学の開祖」とされ、
ワクチンの予防接種方法を開発した。
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低温殺菌法もパスツールの開発。
だからパスチャライゼーション(Pasteurisation)という。

私たちはワクチンでも、食品に関しても、
パスツールに感謝しなければならない。

しかしそのパスツールは、
エドワード・ジェンナーの功績を評価して、
ラテン語の雌牛を意味する”vaca”から、
“vaccine”という言葉をつくった。

ジェンナーは、
産業革命が進む1749年に生まれた。
そして医者になった。

そのころは天然痘が流行していた。
ジェンナーは独自の研究と人体への実験で、
「牛痘の原因と効果の調査」という報告を書いた。
このなかで天然痘の予防法が示された。

家畜の牛にも「牛痘」という病気があった。
人間の天然痘によく似た症状を示した。
そして乳搾りをする人に牛痘が感染した。

ジェンナーの生まれ故郷には、
言い伝えがあった。
「牛痘に感染すると二度はかからない。
そのうえ天然痘にもかかりにくい」

言い伝えではあったが、
科学者の態度でジェンナーは、
これを検証しようと考えた。
そこで8歳の少年で人体実験を行った。

実験は成功して、牛痘を接種した少年は、
人間の天然痘にかからなくなった。
人類初のワクチンの発見であった。

それから約200年後の1980年、
天然痘は根絶された。
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手塚治虫の「陽だまりの樹」には、
大阪の関塾の緒方洪庵が、
人々の偏見や反対を押し切って、
牛痘を接種する話が出てくる。
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私たちはジェンナーにも洪庵にも、
そして手塚治虫にも、
感謝しなければならない。

ワクチンの発明と普及は、
2021年のコロナ禍で、
唯一と言っていい救世の手立てだ。
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そのワクチンは今のところ、
3つに分類される。

第1が、
実際のウイルスを使ったワクチン。

ジェンナーや洪庵と同じものだ。

⑴生ワクチン
実際のウイルスや細菌の中から、
毒性の弱いものを選んで増やす。
そして毒性の弱いウイルスそのものを
体内に入れることで免疫が働き、
ウイルスを攻撃する抗体などを作り出す。

はしかや風疹などに使われている。

⑵不活化ワクチン
実際のウイルスをホルマリンで加工するなどして、
毒性をなくしたものを投与するワクチン。

季節性インフルエンザワクチンがこれだ。
これも実際のウイルスを使ったワクチンである。

第2は、
「スパイクたんぱく質」ワクチン。

ウイルスそのものは使わず、
「スパイクたんぱく質」を、
人工的に合成したものを投与する。

「スパイクたんぱく質」は、
ウイルスの表面に出ている突起で、
ウイルスを攻撃する抗体の目印となる。
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それを人工的に作って投与することで、
人に備わっている免疫の働きが活性化され、
抗体が作り出される。

⑶VLPワクチン
ウイルス様粒子(virus like particle:VLP)を、
ベースとして開発されたワクチン。
VLPは動物や細菌、昆虫、酵母や植物など、
さまざまな種類の細胞で製造する。

⑷組み換えたんぱく質ワクチン
遺伝子組み換え技術を使って、
人工的にたんぱく質を作って投与する。

新型コロナウイルスでは、
日本の塩野義製薬が開発を進めている。

第3が、遺伝子ワクチン。
これは人工的に合成した、
ウイルス遺伝子を使うワクチン。

⑸mRNAワクチン
COVID-19に対して、
世界で初めて実用化された。

スパイクたんぱく質を作るための
遺伝情報を伝達する物質「mRNA」を使う。

人工的に遺伝子を作って、
注射で投与することで、
体の中でスパイクたんぱく質が作られ、
それに免疫が反応して抗体が作られる。

米国のファイザーやモデルナのワクチン。
日本でも第一三共が開発中だ。

⑹DNAワクチン
DNAを人工的に作り出して、
ワクチンとする。

投与されたDNAは、
体内の細胞の中で核に入り込んで、
これもmRNAをつくる。
それによってスパイクたんぱく質が作られる。

⑺ウイルスベクターワクチン
ウイルスのスパイクたんぱく質を作る遺伝子を、
無害な別のウイルスに組み込んで、
そのウイルスごと投与するワクチン。

「ベクター(vector)」は媒介するもの。

無害なウイルスがベクターとなって、
細胞に感染して、
スパイクたんぱく質をつくり、
抗体ができる。

英国アストラゼネカのワクチンがこれだ。
ジョンソン&ジョンソンのワクチン、
ロシアの「スプートニクV」もこのタイプ。

日本では⑸のmRNAワクチンが使われている。
私の新著『コロナは時間を早める』では、
第七章でこの話を取り上げている。
コロナ本
〈お願いします。読んでみてください〉

もともと癌治療薬として開発されていたのが、
ビオンテックの「mRNA」技術だった。

それがCOVID-19に転用され、
奇跡的なスピードで実用化に至った。

私たちはこの開発に携わったトルコ人、
ウグル・サヒンとオズレム・トゥレシに、
感謝しなければならない。

遅ればせながら日本でも、
ワクチン接種が進む。

私はこのとき、
心から感謝したいと思う。

パスツールにジェンナーに、
緒方洪庵に手塚治虫に、
サヒンやトゥレシに。

〈結城義晴〉

2021年05月29日(土曜日)

ワクチン接種予約の「早い者勝ち」と「マーケットデザイン」

一昨日の朝日新聞「天声人語」
タイトルは、
「先着どこ吹く風」
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新型コロナウイルスワクチン接種。
「予約の電話もネットもつながらない」

私にも横浜市港北区役所から、
ワクチン接種券が送られてきた。

確かに電話はつながらない。
しかしネットはタイミングさえあえば、
つながることがある。

天声人語。
「ネット弱者は置いてけぼり」

「かと思えば、コネや権威で
先にちゃっかり済ませた人も」

各地の市町村長ら自治体幹部が、
キャンセル分を利用してワクチンを接種した。
それが相次いで報道された。

㈱スギホールディングス会長夫妻の件も、
テレビや新聞で取り上げられた。

この件に関しては今年2月3日付で、
厚生労働省健康局健康課長から、
通達が出されている。
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「接種順位が上位に位置づけられる
医療従事者等の範囲について」
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このなかに、
「医療従事者等の具体的な範囲」が記されている。

⑴病院、診療所において、
新型コロナウイルス感染症患者に
頻繁に接する機会のある医師その他の職員。
⑵薬局において、
新型コロナウイルス感染症患者に
頻繁に接する機会のある薬剤師その他の職員、
登録販売者を含む。
[対象者に関する留意点]
当該薬局が店舗販売業等と併設されている場合、
薬剤師以外の職員については
専ら薬局に従事するとともに、
主に患者への応対を行う者に限る。

杉浦広一氏は岐阜薬科大学薬学部卒業で、
薬剤師資格を持つが、
現時点ではこの医療従事者の範囲に、
入らないのだろう。

伝聞情報でしかないが、
杉浦夫妻かその秘書かの行為は恥ずかしい。
が、市町村長の抜け駆け的行為よりも、
医療従事者の範疇には近いと思うが……。

天声人語は話を展開させる。
「早い者勝ち」へと。

「津々浦々で進むコロナワクチンの接種は、
“早い者勝ち”ならではの悲喜劇を生む」

アダム・スミスの「見えざる手」を思い出す。
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「個別投資家の行動が
自らに係る資産運用において
安全かつ効率的であろうとすることが、
結果的に、あたかも”見えざる手”に
導かれるかのように、
全体としての効率的な投資を実現し、
経済を成長させる」

つまり、市場における自由競争は、
最適な資源配分をもたらす、
自動的調整機能となる。

だとすると「早い者勝ち」は、
全体的に効率よく配分することに機能するか。

しかしこれは間違いだ。

慶応大学経済学部の栗野盛光教授が、
朝日新聞DIGITALでコメントしている。
「先着順はうまくいかない」

「マーケットデザイン」の第一人者で、
市場の制度設計を研究している。

マーケットデザインは、
経済理論やゲーム理論を実践して、
社会課題を解決するミクロ経済学。
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2005年のノーベル経済学賞は、
このゲーム理論の研究者だ。
ロバート・オーマンとトーマス・シェリング。

栗野教授が対象とする市場は、
お金で解決できない大学入試制度、
青田買いを防ぐ就活ルール、
臓器移植、モビリティー市場と、
多岐にわたる。

その観点から、
ワクチン接種の早い者勝ちを論じる。

「ワクチンの供給量や態勢が
ちょっとしかないのに、
圧倒的な需要がある。

「先着順にすれば、
スピード競争が生まれ、
アクセスが殺到します」

当然のことだ。

「また、悪い代行業者が横行します」

「今回のワクチンのように
公共性の高いもので、
圧倒的に需要が供給を上回る
特殊なケースの場合、
先着順は弊害の方が大きくなってしまう」

「ワクチンは無料なので、
通常の市場で行われる価格調整で、
需要と供給のバランスをとることもできない」

マーケットデザイン理論が、
機能している市場と、
機能不全に陥っている市場には、
共通することが多い。

「いろんな可能性がある中で、
現実的な制約を考慮して
どのような市場の設計が
公平で、効率的で
インセンティブの面からよいのかを考えます」

そして断言する。
「解決策は、
抽選制にあります」

「例えば、ある一定の期間内に
電話やネットで申し込みを受け付け、
接種日時の少なくとも第3希望まで
聞いたうえで抽選する」

「そうすれば、みんな同様に扱われ、
アクセスが早くても遅くても
当選する確率は同じ」

デメリットももちろんある。
「抽選が終わるまで待たないといけないこと」

「すぐに接種できないので、
スピード感が失われる」

栗野教授の言いたいこと。
「需要が供給を大幅に上回る状況では、
先着順はうまくいかない」

これは公平な商売にも通じるものだ。
すべての顧客が欲しがる商品を、
少しだけ調達できたとき、
どう売るか。

いつもの通り先着順か。
それとも抽選制にするか。

世界各国、様々なサービスでみられる現象。

「需要に供給が追いついてくれば、
先着順に戻してもよいわけです」

これも公平な商売に通じる。
需要と供給が均衡すれば、先着順だ。

「需要と供給のバランスをみながら、
その場その場に応じた
細やかな運用が大切です」

今の政治や行政には、
難しいかなあ。

しかしマーケットデザインは、
政治や行政にこそ必要だ。

「見えざる手」は、
あまりに古典的過ぎるし、
アダム・スミスの本意ではないだろう。

〈結城義晴〉

2021年05月28日(金曜日)

最後の「化け物級」清水信次の現役引退と「今日を生きる」

清水信次さん。
㈱ライフコーポレーション創業者で、
代表取締役会長兼CEO。
大正15年生まれの御年95歳。

私は「化け物級」と呼んでいる。

「事業基盤や業務執行体制の
強化が進んだことから、
今後は執行サイドとは異なる立場で
ライフの成長に貢献したい」

代表権を返上して、
取締役名誉会長にご就任。

最後の「化け物級」の現役退任。

さみしくもあり、
ほっとした感じもある。

あっぱれ! としか言いようがない。

イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さん。
セブン&アイ・ホールディングス名誉会長。
大正13年生まれ。

イオンの岡田卓也さん。
四日市の岡田屋七代目。
ジャスコとイオンの創業者で、
現在、名誉会長相談役。
大正14年生まれ。

伊藤さんも岡田さんも、
すでに現役を引退されているが、
清水さんは代表権を持った会長として、
経営の実権をもち続けてきた。

1926年、三重県生まれ。
旧制大阪貿易学校卒業。
1945年に清水商店を設立。
1956年に清水実業を創業。
それが日本一のスーパーマーケット企業となった。

実に75年間も経営の先端に立ち続けた。

岩崎高治さんが立派な後継者として、
その日本一の食品小売業をしっかり統率する。

ここにはまったく心配するところがない。

清水さんは日本小売業協会会長をはじめ、
日本チェーンストア協会会長、
日本スーパーマーケット協会初代会長、
生団連初代会長など、
業界の要職を文字通り歴任。

小売業界の論客としても大活躍。
政治に対しても重要なことは、
ズバリと言い切った。

月刊商人舎のプレ創刊号特集タイトルは、
消費税と商人の正義

清水さんにロングインタビューをした。
simizuintabyu-1

清水 この大日本国をどういう国家にして、
いかにして国民経済、国民生活、
社会福祉を守っていくかというのは
本当に大きな課題だ。
政治家、官僚、学者、経済人が協力し、
国家総力を挙げて知恵を絞り、
50年後、100年後の国家経営の
あるべき姿を展望して、
グランドデザインをつくらないといけない。

結城 いつも最悪のシナリオを
想定しなければいけないのは
本当に辛いことですが、
青臭い書生のような議論も必要だと思います。
そういうことを理解して、
考える人たちが増えることを期待しています。

清水 うん、だから僕はいま教育から
変えなければいけないと思っている。

教育を根本から変えるには
戦前の師範学校を考えたらいい。
終戦後にアメリカのGHQが
壊してしまったけれど、
あれは大事な制度だった。

師範学校は国が費用を負担して
いい先生をつくることを
目的としていたから、
ここで育った先生は
自分の出世や金儲けのためではなく、
自分を犠牲にしてでも
預かっている生徒を立派な人間、
国民にしようと努力した。

だから「恩師」なんだ。

明治時代にいろいろなものをつくって、
その中にはいいものもあれば
よくないものもあったけど、
僕は一番よかったのはこの師範学校で
いい先生を輩出したことだと思う。

結城 それは本当に大事なことです。
一方で、企業が社内教育で
いい国民をつくることも必要です。

清水 企業はボヤボヤしていると
潰れてしまうから(笑)。
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清水さんは教育を強調した。
結城義晴は同感した。

代表取締役を退いたけれど、
「化け物級」はその存在そのものが、
教育的であると思う。

ライフコーポレーションにかぎらず、
清水信次の「商人の正義」のDNAと、
その旺盛な生命力を、
受け継いでいなければならない。

最後の化け物級の現役引退。
感慨深い。

長光山妙蓮寺。
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私の自宅の最寄り駅前のお寺。

その門前に日々掲げられる住職の言葉。IMG_35491
今日を生きてこそ
明日がある

いくつになっても、
今日を生きる。

だから明日がある。
明日を夢見つつ、
明日を語ることができる。

〈結城義晴〉

2021年05月27日(木曜日)

サラリーマン川柳のトレンドと「三つの商業の論理」

サラリーマン川柳コンクール。
第一生命保険主催だが、
毎年恒例のイベントで、
第34回を数える。
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昨年9月・10月の募集期間に、
6万2542句が集まった。

そのなかから100句を厳選し、
さらに今年1~3月、
インターネットなどで人気投票を実施。

10万1149票が集計された。

人気投票数もすごいが、
川柳6万句を超える投稿もすごい。
新型コロナウイルス感染拡大で、
国民に創作意欲がわいているとしたら、
これはちょっといいことだ。

テレビも新聞も面白がって報道した。
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1位のグランプリ作品。
会社へは来るなと上司 行けと妻

COVID-19拡大で、
テレワークが広がる。

家庭と職場の板挟み?

これは歴代のグランプリの中でも、
とくにいい。

しかしいつも感じることだが、
サラリーマンというニュアンスと、
商人という概念とは、
一致しない。

だからこれは面白い川柳だが、
一般の企業の一般の社員の句だ、
といった印象が強い。

小売業、流通業、サービス業の、
とくに現場で働く人たちの感覚とは違う。

2位は、
十万円見る事もなく妻のもの

これは弱い夫という、
よくあるパターンの句。
商業も一般企業も同じ。

第3位が、
リモートで便利な言葉“聞こえません!”

この句も新型コロナ禍で、
遠隔会議が広まって、
やや軽薄なサラリーマン根性が表現された。

チェーンストアやスーパーマーケットは、
一般の企業とは異なる。

商業には三つの論理がある。
チェーンストアの論理、
商人の論理、
企業の論理。

この三つの論理が、
もっともうまく融合してきたのは、
イトーヨーカ堂だと思う。

イオンももちろん、
この三つの論理で成り立っている。

ヨークベニマルは、
商人の論理が強い小売業だ。
そこでイトーヨーカ堂のグループに入って、
チェーンストアの論理を強化した。

そこで融合度は絶妙となった。

サミットは、
良い意味での企業の論理が強い会社だ。
荒井伸也さんがノーマルなマネジメントを、
定着させたからだ。

イズミも平和堂もヤオコーも、
三つの論理がそれぞれの塩梅をもっている。

チェーンストアの論理と言えば、
故渥美俊一先生の、
独特なマネジメントが顔を見せる。

私の分析では、
アンリ・ファヨールの系統の理屈だ。
そしてここには新しい「現代化」が求められる。

それはつまりピーター・ドラッカーの論理だ。
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商人の論理は、
倉本長治の精神に象徴される。
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倉本長治は、
古い商人の論理を否定した。

「商人と屏風は、
曲がっていなければ立たない」
そう言われたら、
「商人も屏風も、
まっすぐなところにしか立たない」と、
見事に切り返した。

そして倉本の商人論は、
驚くほどドラッカーと似ている。
『店長のためのやさしいドラッカー講座』で、
私はそれを明らかにした。

最後に企業の論理は、
伝統的には会社第一主義だったが、
そこに最近は、
コンプライアンスやCSRが加えられた。
法令順守と社会的責任である。

ここでもドラッカーイムズは、
新しい企業の論理に貢献している。

三つの論理がご都合主義で、
様々な局面に顔を出す。
それがよろしくない商業を生み出す。

サラリーマン川柳は、
屈折した企業の論理を、
茶化したり、皮肉ったりして、
面白味を創造するものだが、
ドラッカーの論理から見ると、
これはあまり健康的ではない。

笑い飛ばしたり、クスッとすれば、
気分は晴れるし、ガス抜きにはなる。

しかしその冷ややかな視点の、
根っこにあるものは、
絶たれねばならない。

サラリーマン川柳第31回のグランプリ作品。
スポーツジム車で行ってチャリをこぐ

現代人のライフスタイルへの皮肉。

第31回には健康志向の句が多かった。
カロリーの低いメニューをおかわりし

ある、ある。

ドクターがダメというもの全部好き

私など、この句はよくわかる。

これらの健康志向は、
新しいトレンドだが、
関心が個人に向かっていることは、
いいと思う。

サラリーマン川柳も、
中身が変わってきている。

第21回グランプリ作品。
「空気読め!!」それより部下の気持ち読め!!

第17回グランプリ作品。
「課長いる?」返った答えは「いりません!」

第12回グランプリ作品。
コストダウン叫ぶあんたがコスト高

第10回。
早くやれ  そういうことは早く言え

いずれも組織に問題がありそうな川柳だ。

古い企業の論理が、
会社や産業を覆いつくしていると、
こういった皮肉が生まれてくる。

古い商人の論理や、
古いチェーンストアの論理も、
こういった矛盾につながる。

小売業、流通業、サービス業にとって、
現代化された三つの論理が、
健全な形で機能することが大切だ。

どれか一つが突出してしまうのも、
組織問題を起こす原因になる。

企業の論理、
商人の論理、
チェーンストアの論理。

三つの論理から導き出される事項が、
人を活かす方向を向いていれば、
それらの融合が的確になされていることになる。

サラリーマン川柳のトレンドからも、
問題の本質を垣間見ることができる。

〈結城義晴〉

2021年05月26日(水曜日)

皆既月食・スーパームーンの「数万年の未来」と「変化と変革」

地球温暖化の影響か。
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今年のアジサイは例年より早い。IMG_35421

しかし関東はまだ、
梅雨入り宣言されていない。IMG_35441

今日は朝からZOOM会議。
㈱True Dataの取締役会。
ビッグデータマーケティングは、
DXと相まって、
ますます重要性を増している。

そしてそれはサプライチェーンの、
プラットフォーム全体に及ぶ。

北海道新聞の巻頭コラム「卓上四季」
タイトルは「月に願いを」

「海の詩人」丸山薫の「月と土星」から。
望遠鏡を通して見た宇宙の深さと輝き。
丸山は表現した。

「数万年の未来の時間が
手にふれる思いがした」

今宵は「皆既月食」
満月が地球の影に隠れる現象。
さらに「スーパームーン」
月が最も地球に近づく現象。

コラムは「天候次第」と釘を刺す。

午後6時45分ころから欠け始め、
午後8時9分に皆既食となる。

横浜は南東の方面に雲があった。

だからスーパームーンはおぼろ月。

9時過ぎに皆既月食がほどけて、
半月のごとき月食。
??????????

望遠レンズを向けるとやはり美しい。DSCN930511

雲から外れると、
皆既月食のスーパームーン。DSCN93071

月食がほどけていく。??????????

満月が姿を現したら、
雲の中にボーッと丸い月が浮かんだ。??????????

新著『コロナは時間を早める』の冒頭は、
「三千年紀の夜明けに」で始まる。
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2001年から3000年までの1000年を、
「三千年紀」という。

COVID-19パンデミックは、
1000年に影響を及ぼす。

ヨーロッパ中世のペストから、
新型コロナまでだって、
1000年を経ている。

感染症の世界的流行は、
第一次・第二次の世界戦争に変わって、
世の中を変えていく。
変化の時間を早める。

その三千年紀の初めに、
私たちはどう考え、
どう行動するか。

それがこの本の底流を流れるものでもある。

丸山薫は望遠鏡を覗いて、
「数万年の未来」を見た。

三千年紀をはるかに凌ぐ視野である。
今宵はそんな未来を見るときだった。

2019年9月のMessage。
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地べたを這いつつ、
宇宙を見よう。

地べたを這いつつ、
宇宙を見る――。
「虫瞰図の眼」。
虫の視線ではるか宇宙まで見通す。
作家で運動家だった小田実のスタンス。

虫の眼、鳥の眼、魚の眼。
そして心の眼。
商人の眼。消費者の眼。
つくり手の眼、卸し手の眼、売り手の眼。
三方良しの眼。

(中略)

地べたを這いつつ、
宇宙を見よう。
虫の視線ではるか宇宙まで見通そう。
虫瞰図の眼をもってアメリカを歩こう。
虫瞰図の眼を活かして「今」を変えよう。

さらに今月のMessage。
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変化を受け入れ、
変革を実行せよ。

変化とは我々がそれを、
受け入れざるを得ない場合のこと。
変革とは我々がそれを、
意図的に実行する場合のこと。

変化のときには、
一方で確実な損失が待っている。
しかし変革を意図すれば、
不確実だが利益の可能性が生まれる。

今、損失や後退の原因は確かだが、
利益や成長の要因は不確かである。
それがキャズムの特徴だ。
ポスト・コロナの大前提である。

コロナ禍のキャズムは、
受け入れざるを得ない変化である。
その時のXformationは、
意図的に実行する変革である。

イオンが、
ウォルマート離れした西友が、
そしてイトーヨーカ堂が、
Xformationを始めた。

そのときには、
イオンとセブン&アイとの間に、
コラボレーションが起こる。
画期的な協業も発生する。

変化を運命とあきらめるか。
変革を自ら志向するか。
わかりきったことではあるが、
それは畢竟(ひっきょう)意志の問題である。

勇気とは、
未知なる世界に一歩、
目隠しで踏み込む、
心の在り方だ。

変化を受け入れ、
変革を実行せよ。
未知なる世界に、
勇気をもって踏み込め。

〈結城義晴〉

2021年05月25日(火曜日)

「商人舎動画サイト」とドラッカーの「読む人・聞く人・教える人」

パソコンのOutlookメールが、
突然、全部消えた。

どこを探しても見当たらない。

そこでメールアドレスはそのままに、
新しく立ち上げた。

私のパソコンからは、
これまでのやり取りが全部消えた。

商人舎全体としては、
私のメールのやり取りは保存してあるから、
いざとなったら探すことができるし、
それをメールの受信欄・発信欄に、
コピーしておいてもいい。

それから先日、
スマートフォンを変えた。

その際、ドコモから、
Yモバイルへ乗り換えた。

理由は、安いから。

しかしスマホのメールアドレスも変わった。

パソコンのメールとスマホのメール。
消えたり、変えたり。

ほんの短期間だが、
ご迷惑がかかって人もいる。
すみませんでした。

今日は横浜商人舎オフィス。

単行本執筆に時間がかかった影響で、
今年初めから計画している事業が、
遅れに遅れた。

商人舎の動画サイトだ。

ピーター・ドラッカーは観察する。
「世の中には、
読み手と聞き手がいる。
しかも、その両方であるという人は、
ほとんどいない」
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だから誰でも知っておく必要がある。

そして、問う。
「自分が読む人間か、
それとも聞く人間か」

小売業やサービス業には、
聞く人が多い。
店舗現場では実際に、
聞く体験が多いから、
聞く人が多くなる。

小売業やサービス業の中でも、
本や雑誌や資料や、
さらにマニュアルなどが好きな人は、
読む人間だ。

学者には読む人が圧倒的に多い。

ジャーナリストにも、
読む派と聞く派と、両方いる。

本来は両方が必要だが、
ドラッカーは、
両方である人はほとんどいないと言う。

ドラッカーは続ける。

「講義、書物いろいろある。
大切なのはいかに学ぶかだ。
書物から学べない人がいる。
講義から学べない人もいる」

「私の知る中には講義、書物ともに
学べない人さえいる」

つまり読む人でも聞く人でもない人もいる。

もしかしたらその人は、
見る人なのかもしれない。

商人舎を設立して以来、
知識商人の皆さんに提供してきたものは、
雑誌や単行本、そしてブログ。
これらは読む人向けだった。

講演会や研修会・セミナーは、
聞く人向けのツールだった。

海外研修会の場合、
テキストは読む人向け、
現地講義や現地インタビューは聞く人向け。
店舗を訪れたりすることは、
見る人向けだった。

その商人舎が提供するもののなかで、
新型コロナパンデミックによって、
「聞く人」「見る人」に向けたメディアが
極端に減ってしまった。

そこで、
動画サイトを立ち上げることにした。

結城義晴が中心に講義する。
ゲストに講義してもらう。
対談やインタビューもする。
座談会もやってみたい。

ここには商人舎と結城義晴の人脈が活かされる。

店舗クリニックや商品比較なども、
動画上で行う。

まずは講義や報道から始めよう。
スタートはまだ未定。

しかし番組の収録は少しずつ進める。

今日はその収録。
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まず、お手紙を読ませてもらった。
拙著に対するご感想のお便り。

お一人は石原靖曠先生。
日本の商業コンサルタントとして最長老。
86歳。

私の本に対して「歴史的名著」などと、
過大なお褒めの言葉をいただいた。

もうお一人は壽崎肇さん。
九州の寿屋の創業者で、
商業界九州連合会会長。
95歳。

「商人にとって必須の本」と、
こちらも褒めてくださった。

心から感謝します。

それを紹介させていただいた。
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それから『コロナは時間を早める』IMG_E35321

手に取って紹介。
購読の申し込みは、

IMG_E35351

30分ほど講義をして、1本仕上げた。

そして休憩。

それから背広を脱いで、
あらためて気合を入れた。
IMG_E35361

さらにRetail DXの進め方。
月刊商人舎3月号特集を、
最新の事例など加えながら、
丁寧に丁寧に35分ほど語った。
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動画サイトがスタートしたら、
是非、会員になってください。

お願いします。

楽しくて、面白くて、役に立つ番組。
つくります。

さてピーター・ドラッカー。
読む人でも聞く人でもない人が、
いると言った。

「書物から学べない人がいる。
講義から学べない人もいる。
私の知る中には講義、書物ともに
学べない人さえいる」

そして告白。
「実は私もそうだ」

ええっ!!!

そのうえで、言い切る。
「私は、
教えることによってしか、
学べない」

「読む」や「聞く」は、
情報と知見のインプットの方法だ。
一方、「教える」、
つまり「書く」「話す」は、
アウトプットの方法だ。

人はインプットして、
アウトプットする。

その繰り返し。
その両方が必要だ。

欲張りなようだが、
「読む」も「聞く」も、
「書く」も「話す」も、
さらに「教える」も、
全部できるようになりたい。

その中で自分は、
どれを強みとするのか。
それを知っておく。
人生を生き抜くときに最も重要なことだ。

〈結城義晴〉

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結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

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