誰が名づけたか、
「バブル方式」
COVID-19感染拡大防止策として、
国際的なスポーツ大会で、
選手や運営関係者を隔離し、
外部と接触させない方式。
泡(つまりbubble)の膜でとり囲むように、
内部と外部を遮断することから命名された。
東京オリンピック・パラリンピックで、
このバブル方式が採用されている。
来日したウガンダ選手団の1人から、
空港検疫の陽性が判明した。
しかし、他の8人はそのまま、
濃厚接触者とは認定されないまま、
合宿地の大阪府まで貸し切りバスで移動。
その後、2人目の陽性者が判明した。
バスに同乗した自治体職員や運転手などにも、
濃厚接触者は広がっている。
バブルのなかに感染者が出て、
それが外部と接触している。
つまりバブルははじけた。
東京オリパラには、
約7万人が来日する。
どうなることか。
「バブル」と言えば、
1986年12月からのバブル景気を思い出す。
日本の株と土地の異常な上昇、
そしてその突然の下降現象である。
17世紀のオランダでは、
チューリップ・バブルが起こった。
チューリップ球根の価格が、
異常高騰を見せ、また突然下落した。
記録に残された最初の投機バブルである。
そのバブルという言葉を、
コロナ防止の言葉に対して、
平気で流布させる無感覚さは、
大いに気になるところだ。
海外で使われているからと言って、
それを日本でも使う必要はない。
「人流」という言葉にも、
その無神経さが見える。
どうも、現政権は、
「言葉」に対して鈍感である。
それは私自身を含めて、
国民や社会が言葉に対して、
無感覚になっているからかもしれない。
マザー・テレサの言葉。
思考に気をつけなさい、
それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、
それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、
それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、
それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、
それはいつか運命になるから――。
言葉は行動になり、
行動は習慣になり、
習慣は性格になり、
性格は運命となる。
そして言葉は思考から影響される。
言葉に鈍感であるということは、
思考が足りないのか、
思想がないのか。
残念なことだ。
[Message of April]
言葉
言葉は不思議だ。
人間が人間であること、
ヒトが他の生物と異なることを、
証明しているのが言葉だ。
たとえば日本語と英語・フランス語・ドイツ語。
「市場」と“Market・Marché・Markt”。
いずれにも狭義の「いちば」の意味があり、
広義の「しじょう」の意味をもつ――。
はじめに言葉ありき。
言葉は神とともにあり。
言葉はすなわち神なりき。
〈ヨハネ福音書〉
言葉で知覚し、
言葉で思索し、
言葉で伝達し、
言葉で議論する。
新人諸君、先輩諸氏。
社長も部長も店長も。
言葉に鈍感な者は退け。
言葉で考えぬ者は去れ。
評論家もコンサルタントも。
識者も学者も、編集者も。
言葉に愚鈍な者は衰えることを知れ。
考えぬ者は滅び去ることを悟れ。
ここには抜けている項目があった。
首相も閣僚も官僚も。
与党も野党も、右派も左派も。
言葉に無感覚な者に、
権力が与えられてはならない。
〈結城義晴〉