結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年08月31日(火曜日)

二百十日の関西スーパーの「商人の本籍地と現住所」

立春から数えて210日目。
それが8月最後の今日、
二百十日。
「にひゃくとおか」

1985年から2020年までは、
平年なら9月1日が二百十日、
閏年なら8月31日が二百十日だった。

今年は8月31日。

台風来週の「特異日」とされるが、
実際に台風が来ることは少ない。

[極端気象]の今だから、
何が起こるかわからない。

商人舎流通スーパーニュース。
関西スーパーnews|
H2O傘下となってイズミヤ・阪急オアシスを子会社化

㈱関西スーパーマーケットが、
H2Oリテイリング㈱の子会社となる。
阪急と阪神が経営統合した、
エイチ・ツー・オーリテイリング。
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話はこの夏に急展開した。

関西スーパーは2016年10月27日に、
H2Oと資本業務提携契約を結び、
H2Oが筆頭株主となっていた。

その持株比率は10.65%である。

二番目の大株主は、
関西スーパー取引先持株会で9.19%。

そしてオーケー㈱の7.69%。

今回はこの筆頭株主のH2Oが、
100%子会社のイズミヤ㈱、㈱阪急オアシスと、
関西スーパーとの株式交換によって、
58.00%を保有し、完全子会社とする。

関西スーパーは12月に、
会社分割によって中間持株会社となる。
そのまえの9月中旬に、
100%子会社の分割準備会社を設立する。
この分割準備会社が、
現在の関西スーパーの事業を継承する。
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そのうえで、
持株会社は分割準備会社と、
イズミヤ、阪急オアシスを統合して、
3社の親会社となる。

関西スーパーの名前は残るし、
業容は単純計算で年商3727億円となり、
関西トップクラスのスーパーマーケットとなる。

現在の年商はそれぞれ、
関西スーパー1289億円、
イズミヤ1330億円、
阪急オアシス1107億円。

しかし関西スーパーは、
H2Oの完全子会社となる。

厳しい言い方だが、
関西スーパーが「名」を残し、
H2Oが「実」を取った形だ。

ただし、今日、
関西スーパーの株価は一時、
ストップ高となった。

関西スーパーの福谷耕治現社長。
よく頑張ったと思う。

玉村隆司会長も、
中西淳常務取締役も、
柄谷康夫常務取締役も、
よく会社に貢献した。

彼らは12月1日付で辞任する予定だ。
その後も準備会社の執行役などを務める。

【結城義晴の述懐】
202003_yuzawa_04
いつものように書いた。

あの関西スーパーが、
阪急百貨店と阪神百貨店の統合会社の
完全子会社となる。

感慨深い。

H2O子会社の阪急オアシスには、
すでにニッショーストアが吸収されていて、
かつてAJS加盟企業のリーダーだった、
トップ2社も今回、経営統合することになる。
それにイズミヤまでが統合される。

時代は進む。
「コロナは時間を早める」
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H2Oは7月下旬に、
㈱万代と資本の伴わない、
包括的業務提携をしている。

「オール関西はH2Oが牽引する」
そんな構想だろうか。

その万代は年商3676億円で、
㈱ライフコーポレーションは、
近畿圏の年商3758億円。

このライフ、万代と、
H2O傘下の関西スーパーの持株会社が、
ほぼ同じスケールで拮抗する。

関西スーパーの役職員諸君に贈ろう。
「商人の本籍地と現住所」という言葉を。

北野祐次・水谷久三イズムは、
永遠に本籍地として輝き続ける。
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その本籍地の輝きを失わず、
新しい現住所でさらに、
光らせてほしいものだ。

再び、コロナは時間を早める。

私たちはその早まる時間の中で、
生き抜いていかねばならない。

今日の朝日新聞「折々のことば」
第2131回。

理解すべきは、
このシステムは
悪人が悪意をもって
動かしているのではなく、
普通の人たちが
動かしているということです。
(英国の映画監督ケン・ローチ)

映画監督・是枝裕和との共著、
『家族と社会が壊れるとき』から。
ケンローチ

ローチ監督がここでいうのは、
「資本主義経済のシステム」のこと。

資本主義経済は、
「”不平等”を本質的に内在させ、
拡大してゆく」

ほったらかしにしておくと、
資本主義経済は不平等を増幅させる。

「経済格差とは別に、
他者の差別や排除も同じく、
“普通の人”の秩序感覚に
深く内在している」

そう、”普通の人”の秩序感覚が、
その格差や差別や排除を生み出す。

「その事実を見誤れば、
不幸を遠ざけることは
ついにできない」

この事実を見誤ることなく、
受け止めよう。

そうしなければ、
幸せは遠退(の)くばかり。

しかしこの事実を、
真摯に、正確に、受け止めれば、
どんな苦境のなかからも、
喜びと幸せと希望が見出される。

頑張れ。

〈結城義晴〉

2021年08月30日(月曜日)

「9月は食を愛でる月にしたい」 Good Monday!

Everybody! Good Monday!
[2021vol㉟]

2021年第35週。

8月最終週。
水曜日から9月。

2021年の8月は、
子どもたちの夏休みの間に、
東京オリンピックから、
お盆の休み、
甲子園の高校野球、
東京パラリンピックと続いて、
イベントの多い夏だった。

その間に新型コロナウイルスは、
大都市圏を中心に感染が爆発して、
第五波となった。

インド型デルタ株の猛威が、
その原因だったことは明らかだ。

一方で、ワクチン接種も進んだ。
しかし私たちはデルタ株を甘く見た。

大変な8月だった。

そして9月がやってくる。

新しい月には、
何ごとも甘く見ることなく、
一人ひとりができるだけ、
冷静で正確な判断をしたいものだ。

商人舎流通スーパーニュース。
イオンリテールnews|
9/1おせち受注開始/ECでは前年比2倍の149品目

9月に入るともう、
おせちの受注が開始される。

目数は前年比で約2倍の149品目。
本体価格10万円の和四段重「華鳳」から、
「1人前おせち」まで。

さらに洋風や和洋折衷タイプは、
最大33品目に拡充される。

おせちも早仕掛け。
ECと予約はおせちでも伸びに伸びる。

毎年、9月第1週に、
「紀文正月フォーラム」が、
開催される。
業界の風物詩ともなっている。
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しかし新型コロナの影響で、
昨2020年は中止となった。

今年も残念ながら中止だが、
今週の9月2日に、
無観客の講演会だけは行われる。

私も出講して、
「2021年末商戦の戦略と政策」を語る。

今年はこのフォーラムのビデオをとって、
それを商談会で流したり、
企業にプレゼントしたりする。

9月からもう年末商戦に備える。

気分を取り直して、
今年末から来年始を展望しよう。

今週の私のスケジュールは、
ずっと月刊商人舎9月号の執筆と入稿。

その間に紀文正月フォーラム。

いずれも全力投球です。
絶対に手は抜きません。

もちろん日常生活やプライベートでは、
手を抜くというわけではないけれど、
トンチンカンなことや失敗が多い。

ぼんやりしているときもあって、
周辺の人たちに迷惑をかけたり、
叱られたりばかりしている。

忘れ物も多い。

申し訳ないけれど、
仕方ない。

だが、仕事だけは手を抜かない。

さて北海道新聞の一面コラム。
「卓上四季」
先週金曜日は「格別のアイス」

コンビニで売っているアイス。

「東京五輪で来日した外国人記者が、
低温でも軟らかい餅の食感を
ツイッターで絶賛し、話題になった」

「すでに日本のアイス人気は
アジアや北米に波及し、
今年上半期の輸出額は
過去最高となった」

北海道新聞だけに、
世界に誇れる酪農王国・北海道の冷菓を、
国内外にPRしようと呼び掛けて終わる。

そういえば、
ワールドカップラグビーのときも、
来日したジャーナリストたちが、
「日本のコンビニのサンドイッチは世界一」と、
感動して、宣伝してくれた。

おせちもアイスもサンドイッチも、
日本の食べものは本当においしい。

新型コロナ禍によって、
社会には鬱々とした気分が蔓延している。

警察庁の発表。
昨年3月から今年5月まで、
国内で自殺した人は約2万7000人に及ぶ。
新型コロナ感染症が広がった時期だ。

東京大学の仲田泰祐准教授らは、
コロナ禍によって自殺者は、
約3200人増えたと試算した。

今年6月から2024年末までには、
2100人増えるという結果が予測された。

一方、厚生労働省の発表では、
児童相談所が対応した虐待相談件数が、
2020年度に全国で20万5029件となった。
前年度より1万1249件増えた。

集計を始めた1990年度以降、
30年連続で最多を更新したが、
20万件を超えたのは初めてだった。

コロナとの関係性はわからないが、
社会不安や格差問題が広がって、
人々のストレスが溜まっている。

そんなことにも、
日本のおいしい食べものは、
心の安らぎを提供してくれるに違いない。

暗いニュースや陰惨な報道も多いが、
それに目を背けず、
冷静に正確に判断をしたい。

その冷静で正確な判断によっても、
日本のおせちやアイスやサンドイッチは、
とてもおいしい。

野菜や果物、魚や肉もおいしい。
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豆腐や納豆も、牛乳もチーズも、
菓子も加工食品も冷凍食品も、
パンもスイーツもケーキも、
清酒もビールもワインも、
みんなおいしい。
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食欲の秋が始まる。

9月は食を愛でる月にしたい。
日本の憂鬱を晴らす月にしたい。

では、みなさん、
今週も、美味い食べものを愛でよう。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2021年08月29日(日曜日)

[日曜漫歩]横浜から池袋、そして飯能まで

朝7時59分の東横線に乗る。
私の最寄り駅は妙蓮寺。

菊名でL特急に乗り換えると、
渋谷までが東横線。

新宿を経由して小竹向原までが、
地下鉄副都心線。

それから練馬、所沢、入間、
そして飯能までが西武池袋線。

乗り換えなしで9時25分に、
飯能に到着。

都合、1時間26分。

神奈川県から東京都、
そして埼玉県。

一本で行ける。

便利になったもんだ。

池袋まではかつて、
週に2回通っていた。
2009年4月から2014年3月まで。
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立教大学ビジネスデザイン研究科で、
特任教授をやっていた。

2007年8月に㈱商業界を辞して、
2008年2月に㈱商人舎を創立し、
2009年4月に大学院特任教授に就任した。

あっという間の5年間だったが、
結城ゼミのゼミ生はきっちり30人。
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私の講義を履修してくれた院生は、
ざっと数えて250人くらい。20130720181215

キャンパスに研究室を用意してもらって、
給料と研究費をいただいた。

はじめの研究室は、
蔦の絡まる3号館だった。 DSCN9304-1

立教名物の第一食堂の隣の建物で、
私はとても気に入っていた。DSCN9302-1

それから4年目に15号館に移動した。???????????????????????????????

マキムホール。
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5階の研究室のロビーから、
キャンパスを見下ろす。
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M503号室。
20140322185912

平浩一郎教授と同室。20140322185713

在室・授業・会議・外出・帰宅。
所在を明らかにしていた。
20140322185655

2014年3月22日に、研究室を撤収。
20140322185620

このころ私は自分の部屋を、
三つもっていた。

横浜の商人舎オフィスと、
この立教の研究室。
それから神田の小部屋。
新日本スーパーマーケット協会にあった。

とても使い切れずに、
神田はご無沙汰ばかりだった。

立教で私はマーケティングを教えた。
故渥美俊一先生に反論するような内容だった。
20140326132550

池袋を通過するときはいつも、
そんなことが走馬灯のように蘇る。

それから飯能まで電車に揺られる。

飯能にも縁が深い。

杉山昭次郎先生が住んでいた。
私は「流通仙人」と呼んだ。
杉山昭次郎(著者近影)
80歳を超えるまで、
一緒にゴルフを楽しんだ。

飯能パークカントリークラブ。
それから焼鳥屋・多貫喜(たぬき)で語り合った。

杉山先生の晩年は、
水曜日にゴルフ、
後の6日間はフナ釣り。

「フナに始まりフナに終わる」
まさに隠遁の生活。

杉山先生は流通システム研究所所長。
コンサルタントとしては、
あの坂本藤良の弟子のひとりで、
血筋は申し分なし。

坂本藤良は日本のコンサルタントの草分け。
「倒産学」「再建学」などの著書でも知られる。

私は、㈱商業界に入社して、
1週間のうちに、
高橋栄松という先輩に連れられて、
杉山先生に会いに行った。

いきなり黒板に書きながら教えられたのが、
「ソシオ・テクニカル・システム論」。
杉山先生の持論だった。

故上野光平先生は杉山先生の盟友。
私はその門前の小僧をやっていた。

上野先生は堤清二さんの東京大学の先輩。
乞われて西武百貨店に入り、
実質的に㈱西友ストアーを創業した。
その後、流通産業研究所所長理事長。

上野先生は1987年に、
63歳で逝去された。

杉山先生は2013年5月22日、
肺がんで永眠、享年87。
20131125165053
商人舎公式ホームページに、
杉山先生の連載を書いてもらっていた。

その遺稿を単行本にした。

タイトルは、
『マス★カスタマイゼ―ション』
商人舎刊。
20131125103622
サブタイトルは、
「スーパーマーケットの現代化戦略」

結城義晴自身が使いたいタイトルを、
杉山先生に捧げた。

㈱商人舎の第1号単行本。
杉山先生の絶筆。

マスの時代が終焉し、
ポスト・マスの追求が始まった。
それがマス・カスタマイゼーション。

杉山先生はこの著書の中で書く。
「不特定多数を意味する”マス”に対し、
カスタマイゼーションとは
“固定客づくり”である。
“マス化”と”固定客づくり”を
両立させようとする、
相対立するものを結びつけた
新しい概念である」

その考え方や組織のつくり方、
問題解決のモデルが、
わかりやすく展開された。

飯能はだから、
私にとって馴染み深い地だ。

その飯能に今年8月3日、
「フーコット」がオープンした。

㈱ヤオコーの子会社が開発した、
新しいフォーマット。

ディスカウント・スーパーマーケット。IMG_78361
その店の前に立って、
感慨深いものがあった。

オープンしてから、
ほぼ4週間後の日曜日。

朝9時50分に到着すると、
300人くらいの行列ができていた。

オープンは10時。

ヤオコーやフーコットの人たち、
手ごたえを感じているに違いない。

その模様は月刊商人舎9月号に。

ヤオコー本体が目指すのは、
マス・カスタマイゼーション。
一方、フーコットは、
マスを追求する。

しかし実現させたいのは、
「旧いマス」ではないだろう。

どんな「新しいマス」なのか。

それがこのフォーマットのカギを握るものだ。

〈結城義晴〉

2021年08月28日(土曜日)

安倍晋三首相退任後1年間のコミュニケーション

昨年の今日、8月28日。
安倍晋三前首相が辞意表明。

ああ、あれから1年か。

この1年間、
COVID-19パンデミックが、
ここまで来るとは、
誰が予想しただろうか。

その間、菅義偉新首相が担って、
ここまで来てしまった。

どう受け取るかは、
個人によって差がある。

しかし世界がここまで来て、
日本もここまで来た。

1年前の安倍総理退任記者会見。
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質疑応答の最後の方で、
ジャーナリストの神保哲生氏が、
「安倍政権のメディア対策」と、
「政権のメディアとの関係のもち方」に関して、
鋭く質問した。

1年前が思い出される。

質問の主旨を簡単にまとめると、
事前に質問を提出させて、
それにあらかじめ答えを用意して、
メモを読みながら、
その質問にだけ答える記者会見を、
安倍晋三首相自身はいいと思うか。

正面からの答えは得られなかったが、
菅政権になってこの1年間、
この神保氏の指摘した点は、
さらにひどくなった。

最近の記者会見は、
見ていられない、
聞いていられない。

首相官邸側も、
記者もジャーナリストも、
ともに劣化が激しい。

結果として、
国民に真実が伝わらない。

戦後の総理大臣として、
大平正芳第68代・69代首相は、
秀逸だったと思う。

辻井喬著『茜色の空』で描かれる。
辻井はセゾン総帥の堤清二さんのペンネーム。
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大平は読書家でクリスチャン。
「戦後政界指折りの知性派」だった。

故田中角栄64代・65代首相は評した。
「大平君は政治家というよりは
宗教家だねえ、哲学者だねえ」

人間の知的活動にも学術・学問にも、
大平は終生、畏敬の念を抱いた。

演説や国会答弁、記者会見の場で、
「あー、うー」と前置きをした。
そこで「アーウー宰相」と言われた。

子どもたちまで「あー、うー」と真似をした。

しかし大平は頭の回転が早く、
発言も論理的だった。

「あー、うー」以降は早口でもあった。

その「あー、うー」のあとは、
乱れなく、見事な文章となっていた。

早野透著『田中角栄』で、
角栄が大平を評価しつつ、
記者たちを説教している。
「アーウーを省けば
みごとな文語文になっているんだぜ。
君らの話を文章にしてみろ。
話があちこち飛んで
火星人のように何をしゃべっているのか
分からんぞ」
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大平正芳や田中角栄。
彼らと競い合った福田赳夫や三木武夫も、
そして同時代の安倍晋太郎も、
自分の頭で考え、
自分の言葉で語った。

自分の戦略があり、
自分の政策があり、
だから自分の言葉があった。

それがこのところ消えた。

経営者にも実務家にも、
リーダーと呼ばれる人たちには、
必須の心構えであり、能力だろう。

毎日、毎時、毎分、毎秒、
考えに考え、考え抜いていれば、
自分の考えが固まる。
そして自分の言葉が出てくる。

自分の頭で考え、
自分の言葉で語る。

私も講義のときにいつも言う。
「結城先生の言葉を、
君たちがなぞっても、
説得力がない。
自分の言葉に置き換えて、
自分の事例を盛り込んで、
周りの人や上司、部下に語る。
それができて初めて、
その内容がわかったということだ」

安倍首相退任から1年して、
そんなことを思った。

演説も答弁も会見も、
そして会議での発言も、
毎日の店舗や部署での朝礼も、
コミュニケーションである。

ピーター・ドラッカーは、
教えてくれる。

コミュニケーションには4つの基本がある。
その第1が「知覚」。
知覚とは理解し、納得すること。
理解させ、納得させること。

だから、
コミュニケーションを成立させるものは、
受け手である。

コミュニケーションを成立させるのは、
その内容を発する者ではない。
聴く者がいなければ、
コミュニケーションは成り立たない。

故佐藤栄作首相の最後の記者会見は、
怒った首相が会場から記者を全員追い払って、
たった一人、テレビカメラに向かって語った。
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その場の受け手は誰もいなくなった。
カメラの向こうの視聴者だけとなって、
無残な姿が残った。

佐藤も最後に感情的になった。
それはコミュニケーションにとって、
大きなマイナスである。

ドラッカーの言う第2は、
「コミュニケーションは期待である」

「われわれは、
期待しているものだけを知覚する。
期待していないものは
受けつけられることさえない」

したがって、
「期待されているものが何かを
知らなければならない」

「期待するものを知って、初めて、
その期待を利用することができる」

第3に、
「コミュニケーションは要求である」

「従って、何かをしたいという
受け手の気持ちに訴えることが
何よりも重要である」

大平や田中は、
受け手である記者や国民の、
気持ちに訴えることができた。
大平はあくまで知的に論理的に、
田中は一流のわかりやすさと熱で。

最後にドラッカーは教える。
「情報とコミュニケーションとは
別物である」

現菅義偉首相の記者会見は、
書かれた情報の伝達である。

残念ながら「知覚」がない。
コミュニケーションがない。

それは本人にとって、
不本意なはずである。

記者やジャーナリストにとって、
国民にとって、
ひどく不幸なことである。

そうして1年が過ぎた。

自民党総裁選挙、
そのあとの衆議院選挙を経て、
このコミュニケーション不在の日本は、
あるべき姿を取り戻すことができるのか。

政治がコミュニケーション不在となると、
実業界までその傾向が伝染してこないか。

杞憂に終わればいいのだが。

〈結城義晴〉

2021年08月27日(金曜日)

オリックス宮内義彦の「ポストコロナ」と「コロナ敗戦」の検証

何も書くことがない日がある。

小林一茶など手に取る。

大の字に寝て涼しさよ淋しさよ
〈文化十年〉
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そろそろ夏も終わる。
今年の夏の最後のあがきのように、
猛暑日が続く。

それでも夏の終わりの淋しさよ。

日本経済新聞電子版「経営者ブログ」
宮内義彦さん。
オリックスシニア・チェアマン。
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ソフトな語り口ながら、
実に手厳しい。

今日のテーマは、
「コロナ敗戦」の検証、
政治の責任で

新型コロナウイルス感染症は今後、
「半年から1年くらいかけて、
世間はゆっくり落ち着きを
取り戻していくのではないか」

きっと、そうだろう。

動的均衡のなかで、
コロナと共生していく。
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宮内さんの読み。
「コロナ終息後には
世界で空前の消費ブームが
起きているかもしれません」

コロナ禍前とは異なる、
空前の消費ブーム。

イギリスは共生を目指して、
経済再開を決めている。

「日本は例によって、
前後左右の国々を見、
世論の動向に気を配り、
最も慎重な政策をとるように思います」

残念なことではあるが、同感。

二つ目の視点。
新型コロナをきっかけに浮き彫りになった、
日本の社会システムの欠点。

「欠点は何か、どこかを、
具体的に検証した上でなければ
次に備えて変えるべきものが判りません」

まず一つ目の指摘。
「新型コロナ禍のような非常時には
中央集権的に物事を進める」

非常時と平常時は、
組織マネジメントは異なる。

「しかし今回も縦割りで、
厚生労働省のキャパシティーの中で
取り組もうとしていた」

「結果的にワクチンの輸入が遅れ
承認も進まず、
先進国の中でも明らかに
接種が遅れました」

ワクチン注射の担い手など、
非常時には医師以外の手を借りる。

非常時に即応した法の改正ができなければ、
リスクマネジメントとは言えない。

ワクチンのサプライチェーンや在庫管理には、
メーカーの専門家を巻き込めば
効率よく進められた。

ワクチンの接種状況は、
地方の山村や離島で接種率が高い一方、
大都市が低いなどムラが出ている。

「最も必要とする所を優先する」

「優先順位を十分につけないまま進めた結果、
働き手や若い世代が取り残されてしまった」

「太平洋戦争のときも
食糧配給ができなかったのですが、
それと同じように感じます」

宮内さんはずっと指摘しているが、
「都道府県の縦割りも問題」

首都圏であれば東京だけなく、
神奈川、千葉、埼玉を加えた、
「グレーター東京」

関西でいえば、
「グレーター大阪」

そして、
「知事や市長の上に臨時に特命大臣を設ける」

都道府県を跨ぐエリア設定と、
一本化された司令塔。

これは大地震などの災害時でも役立つ。

もちろんチェーンストアは、
これを日常的にやっている。

イオンのリージョナルシフトは、
この構想と同じだ。

そして最後に、
「何がコロナ敗戦をもたらしたか」の検証。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のごとく、
「日本では大きな問題でも
十分に検証されないまま
やり過ごされがちです」

原子力発電所の事故も然り。

「まさに政治の責任において
これを行うべきです」

河野太郎あたりが、
きちんと検証すべきだろう。
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そして次の非常事態は何か、
と考える。

「大地震、大雨洪水、地域紛争、
新しいパンデミック等、
何があるかわかりません」

その意味で、
「リスクマネジメント」こそが、
国にも産業にも企業にも必須のものだ。

これこそコロナから学ぶことの、
最大のテーマだ。

喫緊の政策は、
「新型コロナとの共生をどうとるか」

長期的には、
「日本の欠陥はどこかを調べ、
次に備えるべき長期的な課題に
取り組まねばなりません」

宮内義彦さんは、
いつも冷静な大局観をもつ。

しかしこうやって考えていくと、
日本国をチェーンストアと見立てて、
それを経営、運営するように、
政治や行政を司っていけば、
上手くいくのではないか。

ウォルマートには、
「ビジネスコンティニュイティ」がある。

イオンにもBCMがある。
(Business Continuity Management)
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緊急事態対策チームだ。

もちろんチェーンストアにも、
大企業病が潜む。
悪しき官僚化が潜在している。

政治とはまったく、
それらの塊のような存在だ。

そして日本の国や社会全体に、
大企業病化と官僚化がはびこる。

日々、それとの闘いを決意したい。

大の字に寝て涼しさよ淋しさよ

〈結城義晴〉

2021年08月26日(木曜日)

コロナによる重症者過去最多1974人と「あすへの希望」

「処暑」を、
過ぎたというのに、
東京は最高気温35.7℃の猛暑日。

栃木県佐野市が37.2℃。
わが横浜市は34.8℃。

それでも夕方になると、
雲一つなかった空に、
うっすらと秋の雲。IMG_6426 (002)1

少しずつオレンジ色が迫ってくる。IMG_6427 (002)

そして夕暮れがやってくる。IMG_6425 (002)1
日没はどんどん早くなる。

新型コロナウイルス感染による、
重症者。
今日は過去最多で1974人。

お盆が終わってから10日が経過する。
新規の陽性判明者数も、
盆休暇の人の流れの影響によって、
これからまた、増えていくのだろう。

今日の全国の陽性確認者は、
2万4976人。

まだまだ第五波のピークのなかにある。
予断を許さない。

商人舎流通スーパーニュース。
新型コロナ感染news |
8月26日(木)発表の主要小売業陽性判明236人

今日発表された主要小売業の陽性判明者。
236件に及ぶ。

全国の小売業やサービス業の店頭では、
「明かりははっきりと見えはじめている」ではない。

今日は午後から商人舎オフィス。
昨日の万代知識商人大学では、
4時間を超える講義をした。

やはり疲労感はすぐには去らない。

片山隆さんと対談。
㈱寺岡精工の前社長で、
現在、RTKデザイン代表。
テーマは世界の小売業情勢。
IMG_6421 (002)1
2時間近くも熱談して、
実にスリリングだった。

もちろん二人ともワクチンは2回接種。
マスクをしてソーシャルディスタンシング。

片山さんは実感を込めて語る。
「欧米で破壊的イノベーションが起こっています」

私は自著から引用して、答えた。
「それはブレイクスルー思考です」

拙著『コロナは時間を早める』
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第五章・ブレイクスルーの「戦略計画」
・キャズム期に組織を若返らせる
・「経済活動とはリスクを冒すこと」
・「ブレイクスルー思考法」
・ブレイクスルー思考における演繹法

詳細は月刊商人舎9月号にて。
9月10日発刊。
是非、読んでいただきたい。
お申し込みは、

さて、朝日新聞「折々のことば」
今日は第2126回。

最善を望むことが
必ずしも
正しい希望の持ち方とは
限らない
(パオロ・ジョルダーノ『コロナの時代の僕ら』)
パオロジョルダーノ

「不可能なこと、
実現性の低い未来を待ち望むと、
何度も失望を味わうことになり、
不安がいっそう膨らんでしまうから」

このブログでは何度も、
ジョルダーノを引用した。

1982年生まれのイタリア人作家。
素粒子物理学を専攻したあと、
イタリア第一の人気小説家となった。

ジョルダーノは言う。
「コロナは今、僕らの文明を
レントゲンにかけている」

「恐怖にも浸され、
頭がいっぱいだけど、
それでも
“今までとは違った
思考をしてみるための空間”を
確保しておこう」

折々のことばの編著者の鷲田清一さん。
最善を望むことに関して、
「このことは
政治や組織運営についてもいえるし、
幸福もきっとそう」

鷲田さんも菅義偉政権に、
最善を望むなと考えるのか。

「大きな固まりとしてそれを求めると
不幸への近道になる」

「幸福は小刻みにし、
その一つひとつを
玩味するのがいい」

小売業・サービス業が提供するのは、
ちいさな喜び
ささやかな幸せ
あすへの希望

その一つひとつを、
丁寧に生み出す努力を続け、
顧客には玩味してもらおう。

ありがとう。

〈結城義晴〉

2021年08月25日(水曜日)

万代大学Financial Managementの「数字が好きですか?」

定宿はシェラトン都ホテル大阪。
部屋のデスクが気に入っている。
仕事しやすい。

朝、そのシェラトンからタクシーで、
東大阪の㈱万代本社へ。

帰りもタクシーで新大阪へ。
それからグリーン車で帰ってくる。

三密を徹底して避ける。

会議棟が私たちの校舎。IMG_64051

万代知識商人大学第6期。
スーパーマーケット業界最初の企業内大学。

今月のテーマは、
フィナンシャルマネジメント。
IMG_63221
両サイドの扉を開けて換気し、
十分にソーシャルディスタンスを取る。

司会進行は津田睦さん。
万代人事部マネジャーで、
万代大学第1期生の級長。IMG_63281

この講義の冒頭はいつも、
「数字は好きですか?」
IMG_63251

あなたは数字が好きですか。
実は私は大好きなのです。

数字の向う側の世界を、
数字を通して垣間見る。
そして前向きに、肯定的に、
モノを考える。

数字に媒介してもらうことによって、
雑念やしがらみや怨念が消える。
ゲーム感覚で、むしろ純粋な気分で、
状況が見えてくる。

数字はそういった浄化の機能を
持っているのです。
想像力を刺激する要素を
そなえているのです。

ただし、数字で人を
縛ってはいけません。
せっかくの浄化作用や想像の力が、
いっぺんにかき消されてしまいます。

いちじく
にんじん
さんしょに
しいたけ
ごぼうに
むくろじゅ
ななくさ
はつたけ
きゅうりに
とうがん

数字と商品を素直に結びつけて、
商業ビジネスにかかわる私たちは、
毎日、毎日、
夢を追いつづけています。

数字は清くて、正しくて、美しくて、
しかしも現実的です。
数字と商品を愛でることこそ、
私たちの仕事なのです。

さあ、あなたは
数字が好きになりましたか。
私と同じように
大好きになりましたか。
〈結城義晴著『Message』より〉
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それから「簿記と会計と財務の違い」。

「伊藤雅俊と岡田卓也」。
お二人ともフィナンシャルマネジメントを、
本当に重視した経営者だ。

次の講師は田縁(たぶち)仁平取締役。
財務経理・秘書・品質管理部門担当。IMG_63301

田縁さんの時間は120分。
社内の決算書や他社のデータを比べて、
実にわかりやすい講義だった。IMG_63331

田縁さんは三井住友銀行出身。
現在は万代に転籍して取締役。

だから銀行でたたき込まれた財務の見方を、
徹底的に教育してくれた。

たとえば、
「PLは下から見よ!」
損益計算書は、
一番上の売上高からではなく、
一番下の純利益から見ていく。
そうすれば損益がよく理解できる。IMG_63361

豊富な資料を提示して、
万代のフィナンシャルの現実を、
的確に示してくれた。IMG_E63451

田縁さんの講義のあとは、
結城義晴の1時間。

損益計算書と貸借対照表の、
基本的な意味と関係性と、
その両者の構造を、
私独自の解釈で明らかにしていく。

さらに「実地棚卸し」に関しての講義。
私はとても重要だと考えている。

ランチは、
いつも万代渋川店で購入。IMG_63531

一丁目一番地は、
農産部門の「徳用フェア」IMG_63501

桃がきれいに並ぶ。IMG_63541

水産部門は鮮度が命。
IMG_63481

今日の売りの一つは、
「真鯛お造り用」IMG_63551

そして惣菜部門。
よりどり1パック580円。
ボリュームがあって旨い。IMG_63591

ランチが終わると、
また結城義晴の講義2時間。
スーパーマーケットの計数の、
カギを握るエッセンスを解説し、
上場企業の決算を分析していく。

それでも脱線が多くて、
あっという間に時間は過ぎた。

そして三人目の講師は、
小宮秀友さん。
万代八尾曙川店店長。
「フラッグショップ店長」の位置づけ。
小宮さんも万代大学第3期生。IMG_63631

「店長は店舗経営者」というスタンスで、
「数字を変えよう!」と呼び掛けた。IMG_63651
万代の店長が実際に使う計数をもとに、
そのなかでいかに実績の改善をするか、
いかに成果を上げるか。
自分の経験をもとに、
丁寧に、詳細に、講義してくれた。

小宮さんとツーショット。IMG_63741

阿部秀行社長も聴講していて、
小宮さんの講義をほめてくれた。IMG_63761

最後にまた結城義晴の講義。
IMG_63831

フィナンシャルマネジメントを総括し、
シンプルな経営の在り方を提言した。IMG_63791

最後の最後はデジタル情報革命。
やがてフィナンシャルは、
デジタルにとってかわられる。
しかしAI(人工知能)ができないことを、
知っておかねばならない。
そして人間らしさによって、
意思決定しなければならない。

AIにできないことは8つある。
指折り数えながら講義した。IMG_63811
AIにないもの。
⑴意思がない
⑵人間のように知覚できない
⑶事例が少ないと対応できない
⑷問いを生み出せない
⑸枠組みのデザインができない
⑹閃きがない
⑺常識的判断ができない
⑻人を動かす力・リーダーシップがない

「常識的判断ができない」というのが、
実にユーモラスだ。

そして「小売りの神は細部に宿る」。
Retail is Detail.

その仕事を数字が後押ししてくれる。IMG_63851

講義が終わると一同礼。IMG_63861
ご清聴を感謝したい。

最後の最後は、
阿部秀行社長の講話。IMG_63951

6期生全員が集中して聴く。IMG_63971
1日の講義を短く総括し、
いちばん重要なことを1点、
絞り込んで講話してくれる。

これが実にいい。IMG_63911

その阿部さんと並んで写真。
IMG_64021
長い長い「計数」の講義。
終わってホッとした。

商人は数字が好きでなければいけない。
数字が応援してくれるまで、
数字になじまねばならない。

そして数字に縛られてはいけない。
数字が難しい、面倒だと逃げると、
逆に数字に縛られてしまう。

これでは本末転倒だ。

あなたは数字が好きですか?

〈結城義晴〉

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コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

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