大阪出張。
いつも右側の席を取る。
富士山を見るため。
しかし小田原のあたりで、
一瞬、頂のところが白く光っただけで、
あとは雲に覆われていた。
名古屋を過ぎて、
岐阜県・滋賀県に入ると伊吹山。
新大阪駅も人出は少ない。
車中もガラガラだった。
明日は万代知識商人大学第6期。
フィナンシャルマネジメントの講義だ。
今夜はパラリンピック東京の開会式。
パラリンピックはもともと、
「パラプレジア」(Paraplegia)と、
オリンピック(Olympic)からの造語。
Paraplegiaは、
脊髄損傷等による下半身麻痺者のこと。
1988年のソウル大会から、
正式に「パラリンピック」と呼ばれ、
「パラレル」(もう一つの)と、
「オリンピック」の造語という意味になった。
「多様性と調和の祭典」
パラリンピックのシンボルマークは、
「スリーアギトス」。
「アギト」はラテン語の「私は動く」。
障害のあるアスリートが出場する、
世界最高峰の国際競技大会。
パラ五輪の夏季大会と冬季大会は、
オリンピックと同じ年に、
同じ都市で開催される。
国際パラリンピック委員会は、
共生社会実現の促進を目指している。
国旗の入場と掲揚のあと、
国歌斉唱は佐藤ひらりさん。
全盲のシンガーソングライター。
そして選手団入場。
まず難民選手団。
アフガニスタンからも参加があった。
最後に日本選手団。
約4400人のパラリンピアンによって、
22競技で539種目が行われる。
日本選手団はそのすべてに参加する。
選手団入場が終わると、
橋本組織委員会会長の挨拶、
アンドリュー・パーソンズ会長のスピーチ。
それから天皇陛下の開会宣言。
さらに選手宣誓は国枝慎吾、浦田理恵両選手。
国枝選手は車いすテニス、
浦田選手はゴールボール。
そして突然、布袋寅泰のショー。
そして聖火入場と聖火点灯。
パラリンピックの発祥は、
ロンドン郊外の病院で開かれた、
車いす患者の競技会だった。
1948年のこと。
ドイツから逃れたユダヤ人医師が、
障がい者のリハビリに、
スポーツを取り入れた。
それが大きな成果を上げた。
ルートヴィヒ・グットマン博士。
その理念がいい。
「失われたものを
数えるな、
残された能力を
最大限生かせ」
義足の走り幅跳びジャンパーは、
東京五輪の金メダリストの記録を上回る。
ピーター・ドラッカーは、
「自分の強みを生かせ」と教えた。
グッドマン博士は、
障がいのある人のために、
「残された能力」と言う。
失われた能力を「弱み」と考えて、
残された能力の「強み」を生かす。
私も右目はほとんど視力がない。
光が入って、ぼんやりと、
形や動きがわかるくらいだ。
白内障、緑内障、網膜剥離で、
4回も大きな手術をした。
そのかわりに左目が機能する。
左目だけでは足りないので、
他のすべての能力が左目をカバーする。
そのために頭も使う。
野球やテニス、卓球はできないが、
ゴルフならできる。
動く球は打てないが、
止まった球は打てる。
「失われたものを数えるな、
残された能力を最大限生かせ」
そしてそれが生かせる領域で精進せよ。
すべての人間に教えてくれる。
「前を向いて、アギト」と。
パラリンピック開催の一方で、
緊急事態宣言の地域が、
さらに拡大される。
北海道・宮城・岐阜・愛知・三重・滋賀、
そして岡山、広島。
まん延防止等重点措置も、
新たに高知・佐賀・長崎・宮崎を追加する。
やはりモグラ叩きか、
小出しのがギャンブルか。
首脳閣僚が方針を固めて、
菅義偉首相が記者会見した。
25日(水)に基本的対処方針分科会に諮って、
了承されれば政府対策本部で決定する。
期間は8月27日~9月12日。
17日間。
期間に関する科学的根拠は見当たらない。
うがった見方をすれば、
自民党総裁選挙告示の9月17日前に、
何とか終息の目途を立てたい。
だから9月12日。
そうだとすると感染症対策が、
政治日程に関連づけられていて、
これはあまり、よろしくいない。
この緊急事態宣言は、
現在の13都府県と合わせて21都道府県、
重点措置の対象は差し引きして12県。
合計で33都道府県となる。
今日の新型コロナ陽性判明者は、
全国で2万1570人。
陽性確認者数と感染者数は、
実際にはイコールではない。
だから感染者数の実数で把握するのがいい。
軽症・中等症Ⅰ・中等症Ⅱ・重症の4段階で、
社会全体に知らせるのがもっといいだろう。
もちろん一般的に、
陽性判明者数が報道されるから、
それが目安となっているが、
これも傾向を知るには悪くはない。
その陽性判明者が2万1570人。
火曜日としては過去最多だ。
それもあって、
33都道府県への拡大となった。
8月27日から勘定すると、
9月12日までぴったり3週間。
さてコロナの火は鎮まるのか。
パラリンピックの聖火は、
9月5日に消灯されるけれど。
「失われたものを
数えるな、
残されたものを
最大限生かせ」
現在の日本に、そして世界に、
グッドマン博士の理念が、
しみじみと教えてくれる。
私はいつも商業に当てはめてしまうが、
これは商売や仕事の極意でもある。
ありがたい。
〈結城義晴〉