結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年09月23日(木曜日)

自衛社会の小売サービス産業・健康産業・環境産業

秋分の日。

快晴であることも多い。
しかしこの秋を分ける日から、
一気に冬に向かっていく。

通称、猫じゃらし。
エノコグサ。
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学名はSetaria viridis。
イネ科エノコログサ属の一年生草本。
ブラシのように長い穂。

夏から秋にかけて花穂をつける。
このブラシは花穂だ。

犬の尾に似ている。
そこで犬っころ草と呼ばれ、
それが転じてエノコログサとなった、らしい。

この花穂を猫に見せるとじゃれつく。
そこから俗称が生まれた。

犬と猫に関連する草花。
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猫じやらし吾が手に持てば人じやらし
〈山口誓子、高濱虚子のホトトギス派の俳人〉

秋の日は釣瓶落とし。IMG_69311

わが髭を金に染むるや秋入日
〈林翔(はやししょう)、「馬酔木」の同人だった俳人〉
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アンリ・ルソーの絵のようにもなる。
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朝日新聞のコラム、
「経済気象台」
このコラムも日経の「大機小機」同様に、
第一線で活躍中の経済人、学者らが執筆。

今日のタイトルは、
「自衛社会と消費」
コラムニストは海星さん。

「ワクチン接種でコロナ禍が一息つき、
リベンジ消費で景気は持ち直す
というシナリオへの信頼度は、
次第に低下してきている」

同感だ。

デルタ株の感染急拡大によって、
病床満杯⇒ホテル隔離⇒自宅療養で、
十分な医療を受けられない例が続出した。

「結局は誰も守ってくれないのか」
この無力感は「社会に暗い影を落とした」

コラムニストの見解。
「新自由主義と少子高齢化に
さらされてきた日本は、
長い目で見れば
自衛社会化傾向を強めてきた」。

つまり政府の個人生活や市場への介入は、
最小限にしようという考えに基づいて、
「自助」が優先される社会である。

「安定した終身雇用よりも
競争原理や成果主義がもてはやされ、
年金財政への不安から、
老後の資金調達や暮らしにも
自助努力の比率の引き上げが
求められてきた」

だから、
「生き残るためには、
公的援助を決してあてにせず、
自力で何とかしなくてはならない」

この風土はコロナ禍によって、
さらに強められた。

したがって、
「仮にリベンジ消費が起こるにしても、
自衛社会基調が変わらなければ、
一時的流行に終わりかねない」

一時的流行に終わるだろう。

「うっぷん晴らしが一段落すれば、
自衛志向がむしろ
強まることもありうる」

そして価格コンシャスが強くなる。

「最終的には
自衛しなくてはならない運命が
透けて見える中で
お金を使いなさいと言われても、
首を縦には振りにくい」

日常生活にだけはお金が回る。
生きなければならないからだ。
そしてその日常の充実は必須だ。

だから、
ちいさな喜び
ささやかな幸せ
あすへの希望

かつてのバブルのような消費は、
絶対に生まれない。

破綻寸前の中国の恒大集団の状況は、
不動産バブルの当然の帰結だ。

「自衛社会のギアを
上げることになったコロナ禍は、
暮らしやすさより
効率的経営を優先してきた
企業や政府の体質への警鐘でもある」

小売サービス業は、
その、暮らしやすさを担う産業だ。

「消費拡大頼みでは、かえって
負のスパイラルにはまりかねない」

「メスを入れなければならないのは、
人々を自衛へと追い込む
構造的欠陥の方である」

構造的改革の一つは、
古い言葉だけれども、
重厚長大から、
軽薄短小へ。

情報は何よりも軽い。

月刊商人舎9月号にも書いた。
月刊商人舎9月号表紙
世界とアメリカの産業の趨勢を見ると、
実によくわかる。

「本誌は、21世紀をIT産業と小売業、
そして健康産業、環境産業の
100年間だと考えているが、
それらの成長が
COVID-19によって促進された。
コロナは時間を早めたのだ」

小売サービス産業、
健康産業、環境産業、
それらを支えるIT産業。

それが消費を支える。
人々を支える。
社会を支える。

構造改革の中核に位置するのは、
これら産業の従事者である。

〈結城義晴〉

2021年09月22日(水曜日)

イオンスタイル横浜瀬谷開業取材と「万引き防止」の言葉

シルバーウィーク。
なんだか高齢者週間のイメージ。
だからだろうか、この言葉は、
最近、あまり使われない。

それに祝日は、
月曜日の敬老の日と、
木曜日の秋分の日だけ。

ゴールデンウィークと比べると、
明らかに見劣りする。

同時に今週は彼岸週間。
月曜日が彼岸の入り、
木曜日が彼岸の中日、
日曜日が彼岸の明け。

テレビなどで報道されるのは、
「人流」は増えていることだ。

それでも全国の新規陽性判明者は、
一昨日の月曜日で2224人、
昨日の火曜日が1776人、
今日の水曜日が3245人。

この沈静化、
いったいどうしたことだろう。

今日は午前中、オンライン会議。
㈱True Dataの取締役会。

お陰様で好調な営業状況。
それでも次々に様々な問題が起こる。

まるで映画のようだ。

しかし会社はどこでも、
そんなドラマのようなものだ。

事実は小説よりも奇なり。

役員会が終わったら、
東横線で横浜駅へ。
それから相鉄線で瀬谷駅へ。

その駅前に、
今日、グランドオープンしたのが、
イオンスタイル横浜瀬谷。
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商人舎流通スーパーニュース。
イオンリテールnews|
駅直結「イオンスタイル横浜瀬谷」9/22オープン

今日はイオンリテールの広報が、
記者たちに大いにサービスしてくれて、
朝と午後の2回、取材の機会を設けてくれた。

ありがたい。

私は当然、午後の部。

2層のフード&ドラッグ。
1階は生鮮食品、日配品、
そして惣菜の売場。  IMG_68051

2階は駅直結の駅側の入り口は、
イオン薬局のドラッグストア。
それからグロサリーと酒売場、
さらに冷凍食品売場。
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その1・2階をエスカレーターが結ぶ。

意欲的な試みで、
問題を解決しようとしている。

イオンリテールの商品力は、
俄然、向上している。
ちょっと感心した。

店長は津留﨑敬樹さん。
初めての新店店長。
現在、45歳。
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この店の前は横浜のイオン駒岡店店長、
その前は奈良のイオンいかるが店店長。

その奈良時代に優秀店長となって、
アメリカ研修に参加した。
講師は結城義晴だ。

この店でも必ず成果を上げる。
私はそう思った。

それから林博明さんは、
南関東カンパニー東神奈川事業部長。  IMG_68741
林さんも最近、
ヒット店舗を次々に出している。

そしてそれらはいずれも、
スーパーマーケット業態である。

それから吉田和弘さん。
経営企画本部広報部長。IMG_31871
吉田さんの配慮で、
午後の部ができて、
私も参加することができた。

感謝したい。

イオンスタイル横浜瀬谷。

競合相手は、
駅を挟んだ反対側の、
イトーヨーカドー食品館瀬谷店。
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2018年3月31日オープンの2層。
こちらもスーパーマーケットだ。

そしてイトーヨーカドーから、
ビル2つ隣がマルエツ瀬谷店。
こちらは1フロアのスーパーマーケットで、
2階にテナントの非食品ショップが入る。

スーパーマーケットの激戦。

日本中の傾向だ。

月刊商人舎10月号で分析しよう。

さて、朝日新聞に面白い記事。
「”謎の言葉”で万引き3割減」

読んだ人もいるだろう。

ベイシアフードセンター常滑店。
愛知県常滑市の店だ。

万引きの被害が半年で3割減った。

2種類の不思議な言葉を、
店のあちこちで
利用客の目に触れるようにした。

それは、
「万引き防止 実験Ⅱ」

昨年10月、黒地に白字のカードに、
この文句を書いて棚に置いた。
カードは縦7cm、横5cm。
プライスカードとほぼ同じ大きさ。

菓子や卵、ビールなどの売場に、
合計1000枚以上。

さらにレジ前の床には、
「防カメピント調整」の文字。

発案したのは、
愛知県警常滑署生活安全課長、
中川元宏警部、46歳。

「防犯カメラなどの対策に気付かせて、
思いとどまらせるのが狙いです」

多くの店にあるのは、
「防犯カメラ作動中」の文言。
見慣れてしまって万引き犯には、
効果が薄い。

ヒントにしたのは「仕掛学」。
著者は松村真宏大阪大学教授。

人の行動を促すアイデアを、
研究対象とする学問。

この効果は大きかった。
昨年9月から半年間の万引き被害額は、
前年同期比で30.7%減少。

松村教授によると、
誰かに見られていると感じると、
実際には見られていなくても
恥ずかしくない行動を取るようになる。
「被視感」というが、
それを利用した仕掛けだ。

警部ではなくて、
店長や店員さんから、
こういったアイデアが出たらよかった。

読書して、考察する。

商売は行動科学だし、
店舗運営は心理学だ。

〈結城義晴〉

2021年09月21日(火曜日)

中秋の満月と「危急存亡の秋」と2大業態の8月商戦

今宵は「中秋の名月」。
そして9月の満月。
ハーベストムーン。
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2021年のコロナ年に、
最も美しい月が満月。

なんと幸せなことか。

「中秋の名月」は旧暦8月15日の夜の月。
だから「十五夜」。

その十五夜と満月が重なった。

アメリカ原住民の付けた満月の名前。
9月は「Harvest Moon」。
「harvest」は「収穫」、
つまり収穫月。

収穫の月の中秋の満月。
何と素晴らしいのだろう。
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北海道新聞の巻頭コラム「卓上四季」
タイトルは「危急存亡の秋」

秋水にひたしたる手をひとふるひ
〈北海道出身の俳人・石田勝彦〉

「3連休が明け、
延長を重ねた緊急事態宣言の
期限となる月末が近づいてきた」

「こんどこそ解除できるのか、
再延長を余儀なくされるのか」

同感だ。

私は昨年のゴールデンウィーク明けから、
似合わない髭を生やし始めた。

願掛けである。

ワクチンが開発されてからは、
自分が二度のワクチンを接種したら、
髭を剃ろうと思っていた。

しかし今年7月8日に二度目の接種が終わっても、
東京や神奈川では緊急事態宣言が続いた。

願掛けはかなわなかった。

だから緊急事態が解除されたら、
髭を剃ろうと考えた。

しかしその緊急事態も延長を重ねて、
とうとう9月末まで延びてしまった。

その最後のときが迫っている。
今度こそ第五波は終わるに違いない。

コラムニスト。
「病床逼迫に直面する医療関係者や、
業績低下に悩む経営者にとっては
まさに”危急存亡の秋(とき)”ではなかろうか」

「秋」を「とき」と読む。
「万物が実りを迎える季節になぞらえて、
大切な時であることを示す意味がある」

中国の「三国志」にこの成句の原典がある。
軍師諸葛亮が魏討伐の遠征出陣に際し、
書状「出師表(すいしのひょう)」をまとめた。
51IcyQCD6BL
劉備の帝位を継いだ息子の劉禅に向けて、
その軍師の諸葛孔明が具申した。

「天下の危機を認識し、
国民の疲弊に目を向け、
臣下の意見に耳を傾けよ」

自民党総裁選は混とんとなってきた。

コラム。
「次期首相の座をめぐる
権力闘争に没頭する前に、
世の中の窮状をよく見てほしい。
存亡のきわに置かれているのは、
党ではなく国民生活だ」

さてその国民生活を支える2つの小売業態。
商人舎流通スーパーニュース。

8月スーパーマーケット統計|
総売上高1兆円1.5%減・既存店2.4%減

スーパーマーケット3団体の合同調査。
日本スーパーマーケット協会(JSA)、
オール日本スーパーマーケット協会(AJS)、
全国スーパーマーケット協会(NSAJ)。
270社の集計。

8月の既存店売上高は、
前年同月比2.4%減、
7カ月連続の減少。

家飲み、家庭内消費需要は堅調に推移。
一方で、長雨による季節商材の不振、
生鮮食品相場の乱高下、
買物頻度の減少などの影響を受けた。

昨年の特需の反動もあった。

総売上高は前年同月比は1.5%減。
食品が1.0%減、非食品が7.8%減。
その他が5.6%減。

食品のうち、
生鮮3部門は3.3%減。
青果は7.7%減、
水産が0.9%減、
畜産が0.6%増。
畜産だけが好調。

日配品0.3%減、
一般食品0.2%減。

惣菜は3.7%増。

帰省客の減少や催事の中止によって、
地方ではお盆時期のオードブルなどが不振。

一方、
8月コンビニ統計|
既存店1.9%減/客数6.5%減も客単価は5.0%増

こちらの調査対象企業は7社。

セブン-イレブン・ジャパン、
ファミリーマート、ローソン、
ミニストップ、セイコーマート、
ポプラとデイリーヤマザキ。

日本フランチャイズチェーン協会の統計。

既存店売上高は前年同月比1.9%減。
客数は6.5%減、客単価は5.0%増。
その平均客単価は705.3円。

日配食品1.9%減。
ここに生鮮や惣菜も含まれる。
加工食品6.4%減。
非食品1.2%増、サービス7.0%増。

全店ベースでは売上高1.4%減、
客数6.1%減、客単価4.9%増。

スーパーマーケットでは、
畜産と惣菜が伸び、
コンビニエンスストアでは、
非食品とサービスが増えた。

二つの業態はどんどん離れていって、
もともとの異なる社会的機能を、
さらに顕著に示し始めた。

スーパーマーケットは、
全国に270社。

コンビニは7社。

コロナによって早められるのは、
スーパーマーケットの淘汰と、
経営統合である。

名月を楽しみつつも、
危急存亡の秋である。

〈結城義晴〉

2021年09月20日(月曜日)

山本耀司「Y’s」の盛衰と「あってあたりまえの店」

Everybody! Good Monday!
[2021vol㊳]

2021年第38週。
9月第4週。

今日は敬老の日の祝日。
三連休の最後の日。

そして秋の彼岸の入り。

今週木曜日が秋分の日の祝日で、
彼岸の中日。

そして次の日曜日の26日が彼岸明け。

今週は彼岸週間。
そして月曜日が敬老の日、
木曜日が秋分の日。

ゴールデンウィークとは比べようもないが、
シルバーウィークと呼ばれる。

今週の私は結構、忙しい。

今日は商人舎オフィスで、
ビデオの撮影。
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2つのテーマで、2本撮影した。
45分と30分。
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私は基本的にテイク1で終わる。
つまり1回撮り。

実際に聴衆がいるつもりで、
真剣勝負で、熱意を込めて話す。

だからテイク1。

テイク2にする場合がないわけではない。

最初の数秒、あるいは10秒くらいで、
噛んだり、言い間違いをしたりする場合は、
テイク2にする。

今日の最初の45分は、
完璧なテイク1だった。

2本目の30分ものでは、
二言目で噛んで、
テイク2にした。

それでも真剣勝負で集中する。
だから、ひどく疲れる。

1日分の仕事は十分にやった、
あるいは90分や120分の講演を終えた、
といった満足感がある。

お疲れ様。
ありがとう。

日経新聞最終面「私の履歴書」
今月は山本耀司さん。
㈱ワイズの創業者で、
ファッションデザイナー。
もう77歳。
山本耀司

慶応義塾大学を出て、
母の衣料店で働きながら、
文化服装学院へ通う。

新人登竜門の装苑賞など受賞して、
ぐんぐんと頭角を現す。
山本の頭文字をとって「Y’s」を創業。
パリにも進出して、時代の寵児となる。

山本耀司のワイズ。
川久保玲のコム・デ・ギャルソン。
同じ「前衛」としてくくられ、
「コインの表と裏」の関係となった。

しかし山本は男であり、
川久保は女である。
そこが違ったし、
互いに切磋琢磨しつつ、
ある意味で補完関係を保った。

山本は女を「格好良く」するために
男の目線から服を作るが、
川久保は女の目線から服を作る。

ワイズとコム・デ・ギャルソンは、
世界のモード界を一変させたといわれた。

そのうねりが日本にも逆輸入された。
「DCブランドブーム」である。

デザイナーズ&キャラクターズ・ブランド。
「1980年代、全国あちこちの街角に
黒ずくめの服装で髪を短く刈り上げた
“カラス族”が出現した現象」

「え、うそだろ。
きっとこれ、何かの冗談だよね?」
山本の驚き。

81年11月13日夜。
東京の田園コロシアムで開いた、
Y’sの野外ショー。

パリのショーをそのまま、
東京に持ってきたイベント。

観客は約8000人、
田園調布駅から会場まで、
長蛇の列ができた。

「おい、すごいなぁ。
ファッションで人がこんなに呼べるなんて
信じられないよ」
演出家の蜷川幸雄さんが、
真顔で感心した。

そのころ私は㈱商業界で、
食品商業の編集記者だった。
それまでの商業界では、
販売革新がトップ雑誌だった。

その販売革新を、
食品商業は急追していた。

しかしファッション販売が、
猛烈に追い上げてきた。

このDCブランドブームに乗っていた。

山本耀司さんや蜷川さんの驚きは、
専門雑誌にも同じような衝撃を与えた。

その後、商業界では、
食品とファッションが中核雑誌となった。
専門の時代である。

DCブームが去ると、
ファッション販売は、
ハウスマヌカンのための雑誌から、
ファッションアドバイザーの雑誌、
さらにショップスタッフの雑誌へと変貌した。

同時にどんどん衰退していった。

その後は、食品商業が、
圧倒的なトップ雑誌となった。

食品商業は「使う雑誌」と称して、
徹底して現場に役立つ雑誌をつくった。

もちろん、
経営理念や経営戦略を解析した上での、
「使う雑誌」である。

自慢話になって恐縮だが、
編集長は結城義晴だった。

山本耀司さんや川久保玲さんは、
あの1980年代のことを、
私に思い出させてくれる。

時代が変わるのは、
バブル崩壊の1991年からである。

その後は、ユニクロの独壇場となる。

さて朝日新聞「折々のことば」
第2150回。
遠くにある好きな店が、
変わらず続いてると、
本当に嬉しい。
そんなこの頃だ。
(井之頭五郎)

ドラマ「孤独のグルメ」
シーズン9・第1話から。
原作は久住昌之、脚本は田口佳宏。

「輸入雑貨商の井之頭は
久しぶりに訪れた学生街で
洋食店が昔のまま営業していて、
なんか嬉しくなった」

「感染症の流行が長引く中、
私たちはこれまで
あって当然だったものが、
愛(いと)おしいほどに
有り難いものだと知った」

「それらが
人びとの寡黙な営みに支えられて
あたりまえであったことを」

スーパーマーケットも、
ドラッグストアも、
ホームセンターも、
コンビニエンスストアも、
そしてファッションストアも、
あってあたりまえの存在だ。

ファッションに流され過ぎて、
去っていく店もあるが。

山本耀司の㈱ヨウジヤマモトは、
2009年10月8日、民事再生法適用申請。

もちろん山本さんは、
個人的にはデザイナーとして、
大活躍しているし、
Y’sもマルチブランド化して、
残ってはいる。

が、「DCブランド」は今や、
死語となってしまった。

では、みなさん、今週も、
流行に流され過ぎずに、
あってあたりまえの店を、
堅持しよう。

ありがたいことだと感謝しつつ。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2021年09月19日(日曜日)

アリストテレス「正しいことをする中で正しい人になる」

台風一過の三連休。

明日が敬老の日の祝日。
9月の第3月曜日。

2002年までは、
毎年9月15日だった。

2001年の祝日法改正で、
ハッピーマンデー制度が導入され、
敬老の日は9月第3月曜日となった。

私も高齢者に属するが、
別に敬老されたいとは思わない。

あまりかわいい老人ではない。

まだまだ現役である。

毎日新聞巻頭コラム、
今日の「余録」

「米」の字を分解すると「八十八」。
「やそはち」と読む。

上方落語の名人・故桂米朝の俳号だった。
永六輔らとともに東京やなぎ句会同人。

「春の雪誰かに電話したくなり」
米朝2
その米朝21番目の弟子・宗助が、
二代目桂八十八を名乗り、
襲名披露の真っ最中。

「5年間、住み込みの内弟子修業をし、
酒の相手をしながら聞く芸談が
血肉となった」

ここで世襲の話。

「落語は伝統芸能ではあるが、
世襲制ではない。
2世、3世の落語家も増えているが、
実力で評価されるのは、
個人芸であるがゆえだろう」

笑点の林家三平のような落語家もいる。
いまのところただ跡を継いだだけ。

「師匠や先達の名跡を継ぐことで、
一門の芸を継承していくのが、
“襲名”というシステムだ」

世襲ではなく、襲名だ。

ただし名人・古今亭志ん朝は、
父の大名人・古今亭志ん生の名跡を、
とうとう最後まで継がなかった。
古今亭志ん朝

そして政界。

「世襲制ではないはずだが、
2世、3世が幅を利かせているのが
政治の世界だ」

「来る衆院選を前に、
次々と名乗りを上げている」

河野太郎自民党総裁候補も、
岸田文雄候補も、
三世議員だ。

河野の祖父は河野一郎元副総理。
父は河野洋平元自民党総裁。

岸田の祖父は岸田正記元衆議院議員、
父は岸田文武元衆議院議員。
岸田文雄

コラム。
「地盤や支援団体は引き継げても、
政治の能力とはまた別の話だ」

だからこの総裁選の河野太郎は、
とくにその「能力」の違いを、
見せつけようとしている。

その一点に絞っている風がある。

祖父や父と闘っているのだ。
河野太郎政策パンフレット

ここで能の世阿弥。
「家、家にあらず。
次ぐをもて家とす」
世阿弥

「家督が続くから家なのではなく、
芸が継承されているのが家だ」

能や落語ならば芸の継承。

商売や会社ならば、
企業理念や経営力の継承。

「すぐれた人によってその道が栄える。
芸事もまつりごとも変わらない」

商売も会社も変わらない。

同じようなことを、
朝日新聞一面コラム「折々のことば」
今日の第2149回。

ひとは
建築することによって
大工となり、
琴を弾ずることによって
琴弾きとなる。
(アリストテレス『ニコマコス倫理学』から)

「これと同じで、
人は正しいことをする中で
正しい人になり、
節度あることをする中で
節度ある人に、
勇敢な行為をする中で
勇敢な人になる」

「正しい人・節度ある人・勇敢な人」は、
世襲ではない。

編著者の鷲田清一さん。
「”人となり”という時の”なり”も、
生まれ持ったものではなく、
ある行為の形(なり)を
くり返しなぞる中で
人がなりゆくもの」

「その習(なら)いを怠れば、
すぐに崩れてしまう」
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商いをすることで商人となり、
学びつつ商いをすれば知識商人となる。

読み、書き続ける中で作家となり、
聞き、知る中でジャーナリストとなる。
教え、学ぶ中で教授となる。

牽引する中でリーダーとなり、
悩む中で真のリーダーとなる。

役職がリーダーを生むわけではない。
地位が経営者をつくるわけでもない。

生まれ持ったものではなく、
与えられたものでもない。

自らある行為の「なり」を、
くり返しなぞる中で
人がなりゆくものが、
「人となり」である。

だから高齢となろうとも、
現役を続ける。

それも人となりとなる。

〈結城義晴〉

2021年09月18日(土曜日)

「コロナ経済政策・3つの誤り」と「恐れず、賢く、事を為せ!」 

台風14号は午後3時ごろ、
東海道沖太平洋上で、
温帯低気圧に変わった。

それでも横浜には、
激しい雨をもたらした。

自民党総裁選挙真っ只中。

立憲民主党の枝野幸男代表。
「議員の仕事は国会にある。
午前9時から午後5時まで本来の仕事をして、
自民党総裁選挙活動は、
午後5時以降にやってもらいたい」

どう考えてもそれは無理だろう。

日本記者クラブ主催の公開討論会も、
午後2時から始められたほどだ。
kisyakurabutouronn

枝野幸男代表は、
臨時国会を開催しない与党を批判する。
「相変わらず危機感が足りないんですよ」

臨時国会は今、
開催しなければならないと思うが、
その議論の中身には期待できない。

野党の議論もよくない。

新総裁が新首相になることは、
まず間違いない。

与野党ともに、
「きちんと議論する国会」を、
実現させてもらいたいものだが、
新首相はそれを牽引する責任がある。

国会の改革は必須だ。

しかし不思議なもので、
菅義偉首相が総裁選出馬を断念した途端、
新規陽性判明者数が減り始めた。

今日の土曜日は全国で4702人、
東京が862人、大阪が666人。
神奈川が453人、愛知が373人。

私は小売業やサービス業の、
店頭での感染者が減っていくことに、
心から安堵感を覚える。

まだまだだけれど。

マスクや手洗い、
ソーシャルディスタンシング。

堅守したい。

古いドラマなど見ると、
俳優が顔を近づけて、
大声で話し合ったりする。

思わず、「うつるヨ」と、
声をかけたくなる。

さて日経新聞経済コラム「大機小機」
タイトルは、
「コロナ政策、3つの誤り」
コラムニストは墨田川さん。

同じ誤りを繰り返さないために、
3つの大きな誤りを論理的に指摘する。

第一は景気対策。
「需給ギャップの拡大に引きずられて、
まず規模ありきの景気対策を取ったこと」

政権は1年前に大型経済対策を決定した。
財政支出40兆円、事業規模73.6兆円。

34兆円の国内総生産ギャップを、
政策的に埋めるべきだという考え方から、
この大型対策となった。

コラムニストはずっと主張している。
「実質・年率表示のGDPギャップと
名目の財政支出は対応していないし、
そもそもGDPギャップの全てを
財政で埋めるという考えには
相当の無理があった」

そのとおりだ。

需給ギャップは、
経済全体の総需要と供給力の差のこと。

[総需要]は、
実際の国内総生産(GDP)の数値。
[供給力]は、
完全雇用や製造設備などから、
可能となる生産量が推計される。

その差によって、
経済がきちんと回っているかがわかる。

需給ギャップがマイナスというのは、
需要よりも供給力が多い状態を意味する。

つまり企業の設備や人員が過剰で、
物余りの状態になっているということだ。

需要が34兆円不足しているからといって、
そのすべてを国の財政で埋めよう、
という発想には無理があるし、
間違いだ。

第二は「一律10万円給付」
「生活困窮者以外にも広く給付された結果、
その多くは貯蓄に回った」
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内閣府の家計貯蓄率四半期別速報。
家計貯蓄率はコロナ前の19年には2.3%だった。
10万円給付が行われた20年4~6月期に、
21.8%に跳ね上がり、
21年1~3月期も8.7%と高水準が続いた。

「平均的に見た家計は、
むしろお金が余っている」

つまり全国民一律給付は間違いだった。
これは明らかだ。

第三はGo Toキャンペーン。
「感染拡大という
外部不経済を生む対面サービスを
補助金によって奨励することになり、
全く経済原理に反する政策だった」
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最後に墨田川さん。
「こうした明確な政策の誤りは、
二度と繰り返してほしくないが、
恐れはある」

自民党総裁選と衆院選が控えている。
すると国民や党員の受けを狙って、
無責任な公約をしてしまう政治家が、
与野党双方に増えてくる。

「もちろん経済の活性化策、
生活困窮者の支援は必要だ」

「しかし、それを
人気取りの手段とするのではなく、
効果とコストを見定めた賢明な支出を
心がけてほしいものだ」

「賢明な支出」は、
英語で”Wise Spending”。
「ワイズスペンディング」

商売や経営においては、
顧客の人気取り競争が、
日々、激しく展開されている。

しかし、
「Wise Spending」でなければ、
会社も店も売場も、
永続的な繁栄は保障されない。

選挙の季節に政治家が、
それを忘れてしまっては、
国家や政治や経済はうまくいかない。

1年前の3つの誤りは、
明らかにWiseではなかった。

2009年3月の商人舎標語。
Act boldly and wisely! 
「大胆に賢明に行動せよ!」

結城義晴流に言い換えると、
「恐れず、賢く、事を為せ!」 

実はこれ、
バラク・オバマ大統領の、
就任のときの言葉だ。

大統領としては、
成功したとは言い難いが、
その意図したところは、
現在の日本にも当てはまる。

こんなことも、
わかりやすく説明するトップが、
求められている。

政治にも経営にも、
店にも売場にも。

〈結城義晴〉

2021年09月17日(金曜日)

台風14号の[極端気象]と棋士と商人の「勇気ある決断」

台風14号。
日本列島を横断しそうだ。
〈ウェザーニュースより〉
202109170275_top_img_A
東シナ海で温帯低気圧に変わると、
予想されていた。

しかし台風の勢力を維持しつつ、
異様な動きを示す。

木本昌秀東京大学大気海洋研究所教授。
日本の気象の権威。
??????????

その木本先生が指摘する、
[極端気象]
極端気象
これですべてが説明できてしまう。
しかしだからこそ、恐ろしい。

月刊商人舎2020年1月号で対談した。
木本昌秀2
木本教授。
「私は近年の異常気象を
“極端気象”と呼んでいます」

「極端気象とは、
頻度が低く発生する気象です」

英語では「Extreme(極端)Weather」
定義は「平均からすごく離れた気象」

「極端気象は珍しいけれど、
起こらないわけではなく、
必ずいつかは起こるのです」

その「極端気象」が、
次から次へと起こっている。

「背景にあるのが、
“地球の温暖化”です」

産業革命以降、
世界の平均気温は0.73℃上がった。

「100年前から地球温暖化に気づき、
その時から緩和策をとって成功していれば、
現在のようにはならなかったはずです。
しかし現在はこの体たらくです。
すでに1℃近く気温が上がり、
極端気象も増えているのです」

今後は産業革命時より2℃まで、
気温が上昇すると予測されている。

だから「パリ協定」では緩和策を実行して、
できれば1.5℃の昇温に留める決議がなされた。

「小売流通業においても、
今が気候の変化の時期である
ということは十二分に認識して
対応してもらいたいと思います」

「正しい知見をもって、
大所高所で判断する」

「過去の経験やデータだけで
判断するようなことは
厳に戒めなければなりません」

台風14号に対しても、
「極端気象」の認識をもって、
慎重に対応する必要がある。

今日の商人舎流通スーパーニュース。
ファーストリテイリングnews|
温室効果ガス排出削減目標でSBT認定を取得

(株)ファーストリテイリングが、
「SBT(Science-Based Targets)」認定を取得。

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同社は2030年度までの、
温室効果ガス排出量削減目標を策定している。
この目標がパリ協定に準ずる、
科学的な根拠に基づくものであるとして、
国際機関SBTイニシアティブが認証。

意義のある取り組みだ。

さて私は月に一度の血液検査。
大手町プレイス内科。

通院のために東京駅を使う。
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1914年(大正3年)に開業。
第一次世界大戦が勃発した年だった。
鉄骨レンガ造りの3階建ての駅。

2012年10月改装が終了。
日本の顔として誇れる駅舎だ。
IMG_676511
今日の検査と診断は良好。

しかし先日の大腸内視鏡検査で、
ちょっとした発見があって、
今日は主治医の田嶼尚子先生に、
そのことも相談した。

すると、その場で、
慈恵医大の炭山和毅教授に連絡して、
9月29日の予約まで取ってくれた。

有難いことだ。

私はゆっくりと考えていたのだが、
田嶼先生は違う。
「結城さん、善は急げ、よ」

できる人は、これだ。

さて、朝日新聞「折々のことば」
第2147回。

「どうして
この一手を指せないのか、

考えないのか
という理由は、

恐怖心や生存本能に
基づいた
判断であるケースが
とても多い」

(羽生善治)
羽生善治

「人は恐怖心や生存本能があるから
危機に敏感で、
将棋でも、
追い込まれるから、
形が悪いから、
この手は選ばないということがある」

人間の行動原理には、
恐怖心や生存本能がある。
歳を取ると、
それが強くなるのかもしれない。

「人工知能は逆に怖れや不安がないから、
人が指せない手を指せる」

藤井聡太三冠は、
怖れや不安が少ないのか。

「が、心の綾(あや)に欠けるので、
接待将棋のような裏技は無理だ」
〈鳥海不二夫『強いAI・弱いAI』収録の対談から〉
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怖れや不安とどう闘って、
正しい手を打つか。

だから棋士にも商人にも、
医者にも患者にも、
勇気が求められる。

「勇気とは、
未知なる世界に一歩、
目隠しで踏み込む
心のあり方だ」
〈結城義晴〉

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