何とか心と秋の空。
秋の日は釣瓶落とし。
すぐに夕方がやってくる。
商人舎流通スーパーニュース。
その海外ニュース。
レイリーズnews|
アリゾナの老舗スーパーマーケット「バシャス」を買収
最近はちょっと珍しいニュースだが、
ローカルチェーンによる、
ローカルチェーンのM&A。
カリフォルニア州のレイリーズ(Raley’s」が、
アリゾナ州のバシャス(Bashas’)を買収した。
レイリーズは1935年創業。
ウエストサクラメント市に本部を置く。
サンフランシスコから北東に向かうと、
レイリーズのドミナントに着く。
有名なナゲットマーケットの商勢圏と重なる。
ナゲットがファンタスティックな店ならば、
レイリーズは普通の店。
現在は、
カリフォルニア州北部とネバダ州で、
124店舗を展開する。
強いローカルチェーンで、
そのローカルチェーンから、
リージョナルチェーンに変貌中の会社だ。
店舗バナーも数多い。
つまりマルチフォーマット戦略。
Raley’s、Bel Air、Nob Hill Foods、
そしてRaley’s O-N-E Marketなど。
地元北カリフォルニアの企業を、
少しずつ統合してそのバナーを残した。
さらに自ら新しいフォーマットに挑戦。
結果としてビジネスモデルが増えた。
一方、バシャスは1932年創業。
昭和7年のことだ。
レイリーズと同じころ、
事業を起こしている。
東海岸のウェグマンズは、
1916年にロチェスターに青果店として開業。
第一次世界大戦の直前。
そして第2次大戦後の1949年に、
スーパーマーケットに業態転換。
全米1位のクローガーは1883年、
オハイオ州シンシナティ市に第1号店を出店。
こちらはグロサリーストアだった。
1904年には精肉店を買収して、
初めてグロサリーストアに精肉部門を導入。
そして1916年、セルフ・サービスを導入。
クラレンスサンダースが、
この新システムを開発した年だ。
1929年には、5575店舗に達していた。
一方、西海岸はまだ遅れていて、
こちらの企業は生鮮食品店が多かった。
バシャスは現在、
アリゾナ州を中心に113店舗を展開。
マルチフォーマット戦略。
Bashas’、Bashas’ Diné、Food City、
AJ’s Fine Foods、
Eddie’s Country Storeなど。
レイリーズ、バシャスともに、
ファミリービジネスの非上場企業だ。
レイリーズは北カリフォルニア、
バシャスはアリゾナ州。
それぞれのスーパーマーケットとして、
エリアの2番手に入る。
それ以下は淘汰されてしまった。
だから2番手に残るのは、
大変な事だ。
レイリーズCEOのマイケル・ティールは、
創業者トーマス・レイリーの孫、
バシャスCEOのエドワード・バシャも、
創業者ナジーブ・バシャの孫にあたる。
どちらも三代目。
ローカルチェーンは、
同族経営が多くて、
それが一番強い。
昨2020年半ばのCOVID-19真っ最中に、
レイリーズ側からM&Aが提案された。
一方のバシャスは2009年に、
チャプター11(連邦破産法11章)を申請。
民事再生の方向で再生中だった。
30店舗を閉鎖、2000人を解雇。
資金繰りから財務までを立て直した。
しかしアリゾナ州は、
フライズというトップ企業が強い。
そしてこのフライズは、
ローカルチェーンだったが、
クローガーの傘下に入っている。
私はフライズがクローガーなら、
バシャスはアルバートソン傘下か、
などと言っていた。
全米のスーパーマーケットは、
どちらかのグループに入るしかない。
ローカルチェーンで生き残るのが、
ひどく難しいから、
リージョナルチェーンを目指す。
ウェグマンズがそれに成功しているし、
パブリックスもHEBも、
ハイヴィーもリージョナルチェーンである。
ナショナルチェーンは、
クローガーとアルバートソン。
アルバートソンはセーフウェイと統合して、
何とか蘇生した。
レイリーズとバシャスは、
地元で人気のスーパーマーケットだ。
そこで今回のM&Aの目標は、
互いのノウハウをシェアし、
仕入れスケールを拡大することで、
競争力を上げて成長すること。
買収額など詳細は公表されていない。
バシャスの店舗バナーや経営陣、
さらに8500人ほどの社員は、
そのまま引き継がれる。
エドワード・バシャCEOは、
売却が終了した時点で退任する。
彼の弟マイケル・バシャと、
従兄弟のジョニー・バシャは、
引き続き経営に携わる。
私は「複占の理論」を提唱している。
上位2社によってほとんどが占有される状態。
3番手はマーケットフォロワーとなって、
衰退していく。
アリゾナ州の複占は、
ウォルマートとフライズ。
だからバシャスはしんどい。
2010年3月17日(水曜日)のブログ。
アリゾナ州フェニックスの死闘
このなかで紹介したのが、
「森の中の二人の男と熊の話」
――森の中を二人の男が歩いていた。
そこへ熊が出てきた。
一人の男が、叫んだ。
「早く逃げよう」
もう一人は、言った。
「君より早く逃げさえすればいい」
熊とは、ウォルマート。
ふたりの男は、ローカルチェーン。
ここアリゾナ州では、
このふたりとはバシャスとフライズ――。
バシャスが逃げ遅れて、
フライズはクローガーに逃げ込んだ。
そして今、バシャスは、
レイリーズによって蘇生を図る。
ただしこのM&Aの2社も、
永劫に存続するとは限らない。
2020年1月14日(火曜日)のブログに書いたが、
その兆候は見えている。
ナゲットの革新とレイリーズの停滞
厳しい現実ではあるけれど。
コロナが経営統合を早めたことは確かだ。
〈結城義晴〉