ZOZOチャンピオンシップ。
米国男子プロゴルフの公式戦だが、
唯一、日本で開催されるトーナメントだ。
千葉県の習志野カントリークラブ。
パー70、7041ヤード。
松山英樹が4日目の今日、
見事な優勝。
最終ホールの18番パー5。
第2打を5番ウッドでオン。
そして最後のパット。
真ん中から流し込んでイーグル。
通算15アンダー。
今年4月11日には、
米国ジョージア州のオーガスタで、
世界最高峰のマスターズを制覇。
それ以来のPGAツアー7勝目。
私は今日1日、テレビに釘付けだった。
前半アウトの6番パー5でも、
ロングパットを決めてイーグル。
2位タイとなったキャメロン・トリンゲールと、
最終組でマッチゲームのような真剣勝負。
最後には5打差で勝ち切った。
松山英樹のゴルフに対する真摯さが、
存分に発揮されて、
ゴルフの神様が、
特別の褒美をくれたような試合だった。
さて日曜日の「あきないの心」
倉本長治の言葉。
その80『真剣勝負』
碁や将棋の専門家の棋譜や講評を、
新聞で見ていると、そこには、
素人の囲碁・将棋のような
「待った」がない。
松山英樹のショットにも、
打ち直しやマリガンはない。
必死の真剣勝負に
「待った」があるわけがない。
打ち下ろす太刀に
「待った」があってよいはずのものか。
血が流れるか、
生命を失うかの、
必死の瀬戸際だからである。
ところで商売の畠には、
このような真剣な気魄は
なくともよいのかしら。
だらだらと、その毎日が
「待った」「待った」の連続の、
ヘボ将棋のようなものなのではないのか。
一つの問題を取り上げても、
いつも一種の「待った」である。
それでいても、専門家として、
恥ずかしくないのであろうか。
一品を仕入れ、
一品を売るにも、
これを真剣に、
命をかけての必死の場という覚悟には
なれないのだろうか。
しょせん、この問題は、
あなたが人生をぼんやりと
甘く考えて過ごしているか、
つねに真面目に真摯な精神で
これと取り組んでいるかということに
つながっているのである。
将棋の藤井聡太は、
今週の竜王戦第2局を、
70手で勝利した。
相手は豊島将之。
いま、渡辺明名人とともに、
圧倒的な強さを誇っている天才棋士だ。
しかし「19歳の専門家」には、
真剣勝負の気魄が漲っていた。
その気魄が豊島に勝ったのだ。
長治は商人を、
「専門家」と呼ぶ。
敬意を表しつつ、
厳しい言葉を投げかける。
「専門家として、
恥ずかしくないのか」
どんな仕事でも、
「専門家」として、
恥ずかしくないか。
それを肝に銘じて、
明日も明後日も仕事に邁進しよう。
長治の言葉はそんな勇気をくれる。
〈結城義晴〉