横浜商人舎オフィス裏の遊歩道。
こんな街の中の歩道でも、
落葉樹は紅葉する。
空気は澄んで空は青い。
遊歩道は近くの川まで続く。
新田間川。
そして岡野町の交差点に、
新しいレストランがオープンする。
(この場所は私の小学校の同級生の実家だった)
店名は、
「マロリーポークステーキ」
グランドオープンは12月1日。
巨大な豚肉の塊を食べさせる、
ポークステーキ専門店。
㈱57(ゴジュウナナ)の経営。
今野健二代表取締役社長。
㈱ブロケード社長を兼ねていて、
こちらはフリーペーパーを発行する。
今野氏はなにか、
面白いことをやりたがっている。
マロリーポークステーキは、
昨2020年11月、自由が丘に第1号店開業。
2021年4月1日、FC1号東戸塚店オープン。
この横浜の店は第3号店。
2キロの豚肉を真空低温調理で仕上げ、
提供時にオーブンで表面を、
カリカリのクリスピー状に焼き上げる。
コンセプトが面白い。
「高くて旨いは当たり前、
安くて旨いに価値がある」
昔々のイズミヤの歌に似ている。
ポークステーキ1本に絞って、
オペレーションを効率化し、
大量発注によって仕入れコストを下げる。
ディスカウントの定石。
ポークステーキ270グラム990円。
それが一番小さいポークステーキ「高尾山」。
「富士山」は450グラム、1590円。
「マッターホルン」700グラム、2390円。
「キリマンジャロ」1000グラム、3290円。
「エベレスト」1500グラム、4790円。
そして最大級の2000グラムは、
「オリンポス」で火星の巨山の名前。
5990円。
人を食ったネーミングも面白い。
店名に付いている「マロリー」は、
英国の登山家の名前からとられた。
ジョージ・マロリー。
37歳の時、エベレスト北壁で亡くなった。
「なぜ、あなたはエベレストに登りたかったのか?」
こう問われて、マロリーは答えた。
「そこにエベレストがあるから」
“Because it’s there.”
有名な逸話だ。
素材の豚肉は「大麦仕上三元豚」。
iTi(国際味覚審査機構)で三つ星を受賞。
生肉から完成品まで72時間をかけて製造。
店は8席のカウンターと狭い。
しかし、この店は開業前に、
クラウドファウンディングに挑戦。
クラウドファンディング(crowdfunding)は、
群衆(crowd)と資金調達(funding)の造語。
不特定多数の出資者が、
経営者や会社に財源を提供したり、
協力したりすること。
「ソーシャルファンディング」とも呼ぶ。
2000年代に米国で始まった。
アメリカやイギリスでは、
資金集めの方法として、
一般化しつつある。
その日本の代表的なサービスサイトが、
「CAMPFIRE」
㈱CAMPFIREが2011年に創業。
家入一真代表取締役CEO。
元SMAPの草彅剛を、
コマーシャルに使って、
「資金集めをはじめよう」と訴える。
マロリーポークステーキ横浜店は、
このCAMPFIREのサービスを受ける。
この店の目標金額は100万円とささやかだが、
その支援金で内装工事や厨房機器を整える。
支援金を出した顧客へのリターンは、
この店のポークステーキを、
通常価格より安く食べられる権利。
これも面白い仕組みだ。
さて、交差点の斜め向かいにある、
いきなりステーキ横浜西口店に対して、
ポジショニングを獲得できるか。
面白い闘いだ。
しばらく、ウォッチしよう。
ただし私は、高尾山しか登れない。
さて今日は1日、
オフィスで原稿書きというか、
長編原稿の手直し執筆。
こんな本を資料にしている。
ご期待ください。
しかしマロリーポークステーキといい、
CAMPFIREといい、
日本の若い経営者たちには、
エネルギーが充満している。
面白いことをやりたがっている。
それはとてもいいことだ。
ピーター・ドラッカー著、
『イノベーションと企業家精神』
もちろん故上田惇生訳で1985年発刊。
この中でドラッカーは述懐する。
「成功したイノベーションは、
驚くほど単純である」
「まったくのところ、
イノベーションに対する最高の賛辞は、
“なぜ、自分には思いつかなかったか”である」
コロンブスの卵か、
マロリーの答えか。
納得。
〈結城義晴〉