プロ野球日本シリーズ2021。
ほっともっとフィールド神戸で第6戦。
稀に見る好試合が展開され、
1点差試合が4ゲーム、2点差が1ゲーム。
最後となった第6戦も2対1。
セントラルリーグの覇者スワローズが、
パシフィックリーグのバッファローズを破って、
20年ぶり6度目の日本一となった。
おめでとう。
東京ヤクルトスワローズ。
1950年に国鉄スワローズとして発足。
当時、最速の列車「超特急つばめ」から、
スワローズと名づけられた。
発足の50年8月に享栄商業高校から、
金田正一投手が高校を中退して入団し、
その年に8勝を挙げた。
初の日本一は1978年、
広岡達朗監督のもと。
二度目は1993年、
野村克也監督の頭脳野球のときだ。
この93年に高津臣吾投手が、
ストッパーとして大活躍。
野村スワローズは95年、97年と、
1年おきに日本シリーズを制する。
2001年の5度目は若松勉監督時代。
エースは石井一久、
捕手は古田敦也。
野手は宮本慎也、稲葉篤紀、岩村明憲。
高津の前の監督の真中満。
そして6度目が今年。
高津臣吾監督。
今年10月26日、優勝マジック「2」のとき、
ベイスターズとのナイターを迎える日。
本拠地・神宮球場のロッカールームに、
1枚の紙が貼られた。
腹くくって
いったれい!!
高津監督の檄文。
球団の公式Twitterに紹介され、
1万以上の「いいね」がついた。
この貼り紙の前を通って、
「大声で読む選手、心の中で叫ぶ選手、
いろいろでした」
「正直、試合前に不安がありましたが
背中を押されました。
誰の字なのかは
選手は分かってると思います」
Twitterの文章。
おめでとう。
東京ヤクルトスワローズ。
さて、倉本長治「あきないの心」
繁昌を招く88のことば。
41 お客の心を心とせよ
「ホテルの支配人は、
マスター・キイを持っている。
これはどの部屋でも開けることができる」
支配人の持つマスター・キイ。
「ぬるま湯も、
いつかは沸騰して、
薬缶の蓋を
持ち上げるようになるものだ」
「情熱という言葉があるが、
お湯が火の熱でたぎるように、
人の心も情熱にたぎらせることができる」
高津臣吾はマスター・キイを、
実にうまく使った。
長治は商人を鼓舞する。
「心と心とが、
じかに触れ合うような、
愛と真実が沸き立つところ、
何で大衆が君の店へ
惹きつけられないでいよう」
「どうして、
そこらの生ぬるい、
いい加減な店で
物を買う気になるものか」
「君にも、店に来るすべてのお客の心を
たぎらすマスター・キイが持てるのだ」
高津は選手たちだけでなく、
ファンの心もたぎらせ、
そして惹きつけた。
「だが、真心そのものが、
はたして商売繁昌の
マスター・キイそのものであるだろうか」
長治は問う。
真心だけでうまくいくか。
「もちろん、それだけで見事に開かれる
幾多の”心の扉”があるべきである」
「本当は商売とは
“お客の財布”が相手ではなく、
“お客の心”こそ
本当の狙うべき相手なのだから、
真心で繁昌の扉は
大きく開かれることが多いのだが……」
商品も価格も、売場も店も、
なくてはならぬ。
高津スワローズは、
投手も打者も守備者も指揮者も、
実力をそなえていた。
しかし前年は最下位だった。
プロ野球は紙一重の世界で、
だからマスター・キイの使い方が、
とても重要になる。
商売の世界も紙一重になってきた。
強いもの、良いものが残って、
さらに厳しい競争が生まれてきた。
君にも、
店に来るすべてのお客の心、
すべての店員の魂をたぎらせる、
マスター・キイが持てるのだ。
〈結城義晴〉