結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年03月24日(木曜日)

「プーチン戦争」の破綻と万代渋川店の「緊急告知」

ロシアのウクライナ侵攻、
1カ月を経過した。
FM5_GAfVkAc3Rxv
「プーチンの戦争」と表現されるが、
ウクライナの粘り強さは、
信じられないほどのものだ。

自由と独立。
国家というものの存在意義を、
教えてくれる。

一方、国際社会の団結は、
当初、歯がゆさが残ったものの、
強さを発揮し始めた。

その結果、
プーチンの作戦は破綻した。

もう破綻している。

さて一昨日の東大阪。
万代知識商人大学第7期の講義があった。

昼食はいつも、
本社下の万代渋川店で調達する。IMG_18302

青果部門の一丁目一番地は、
必ず単品量販訴求。
よくできていて、
ボリューム陳列が崩れない。IMG_1828q

一丁目一番地の裏側は必須の定番商品。
鮮度と品質が良くて、安い。IMG_18332

旬の果物はイチゴ。
1パック398円。
IMG_18322

三列目の野菜の売場も、
陳列線が低くて買いやすいし、
商品が選びやすい。

商品管理が行き届いていて、
いつもきちんと補充している。IMG_18342

コーナーには旬の商材。
故北野祐次関西スーパー創業者が、
「ハイライトアイテム」と名づけた売り方。
それが万代にある。
IMG_18272

水産部門は天井のイラストが、
ショップ形式をイメージさせる。
つまり農産から水産へと、
空間の変化を顧客に教える。IMG_18352

そして今日の売り物「広告の品」。
カラスかれい100グラム100円。IMG_18362

「本日のおすすめ」は、
「旬盛りお造り」。
6点盛りで698円。
生カツオ、マアジ、太刀魚、
活真鯛、活ブリ、トラウトサーモン。IMG_18372
万代の強みは、
今日、今、これがお買い得という商品を、
必ず提案し、品切れしないことだ。

そして対面の籠盛り。
IMG_18262

4月1日の朝8時から、
「スーパー月の市」。
それが告知されている。
IMG_18402

惣菜売場が奥主通路の真ん中にある。IMG_18412

「お弁当の中で一番売れている唐揚げ弁当」
398円。

昼時につくりたてを、
これだけ積み上げる。
IMG_18232

畜産部門では、
国産牛モモ赤身ブロック。
100グラム298円。
「ローストビーフを作ろう」と提案されている。IMG_18432

さつま極味豚。
100グラム288円。
これも万代の開発商品で、
ブランド化されている。IMG_18422

店舗左翼コーナーを曲がると、
日配品売場。
IMG_18442

一番奥、レジ側にパン売場。
よりどり2コ108円。1コ58円。
どんな顧客も2コ、4コと買っていく。
これもボリューム陳列が崩れない。IMG_18452

そして予告。
3月30日(水)、緊急入荷。
昨年爆発的に売れた万代あんぱん。
「あいつが帰ってくる!」と書かれている。IMG_18462
万代渋川店は、
本部にやってくるたびに、
万代大学の講義のたびに、
定点観測している。

派手さはないものの、
いつも吟味された、売りたい商品が、
明確に提示され、顧客に迫ってくる。

これがスーパーマーケットの本来のあり方だ。

〈結城義晴〉

2022年03月23日(水曜日)

ゼレンスキーの国会演説と関西スーパー鴻池店の改装

ウクライナ大統領。
ウォロディミル・ゼレンスキー。
44歳。
zerensuki-
夕方の6時から、
日本国国会でオンライン演説した。

歴史に残る演説だった。

しかし彼が本来もっている、
豊かな表情が影を潜め、
ウクライナの民が傷つけられ、
殺されていることに、
深く悲しんでいる様子がうかがえた。

疲れているようにも見られた。

「両国の間には、
8193kmの距離があります。
経路によっては、
飛行機で15時間もかかります。
ただし、お互いの自由への思いに
差はありません。
また、生きる意欲の気持ちにも
差はありません。
それを実感したのは、2月24日です。
日本がすぐ援助の手を差し伸べてくれました。
心から感謝しております」

「日本は、発展の歴史が著しい国です。
調和を作り、その調和を維持する能力は
素晴らしい。
環境を守り、文化を守ることは
素晴らしい。
ウクライナ人は日本の文化が大好きです。
それはただの言葉ではなくて、
本当にそう思っているのです」

「距離があっても、
私たちの価値観はとても共通しています。
ということは、もう
距離がないということになります。
私たちの心は同じように温かい」

「ウクライナのため、世界のため。
また、明日のため、将来のために、
自信を持てるように」

淡々と、よどみなく、
しかし固い決意が込められていて、
12分間のスピーチは素晴らしかった。

私たちも、
ウクライナのため、
世界のため、
そして私たち自身のために、
戦争への反対の意思を示し、
ウクライナを支援したい。

さて私は大阪3日目。

JR伊丹から、
関西スーパー鴻池店へ。IMG_19502

商人舎流通Super News。
関西スーパーnews|
関西スーパー鴻池店(兵庫県伊丹市・419坪)刷新IMG_18902
1968年12月に開店した第4号店。
売場面積はワンフロア419坪。

2016年8月に、
旗艦店の中央店を増床・改造して、
モデル店をつくった。

「中央店モデル」である。

その後、2017年2月の桜台店、3月の荒牧店と、
次々に改装して、成果を上げてきた。

昨年はオーケー㈱による買収騒動が起こり、
そのリモデルが中断されていたが、
新生関西スーパーマーケットとなって、
初めてのモデル店への改造である。

全社員一丸となって、
このリニューアルに取り組んだ。

あの事件で、
関西スーパーの結束は固まった。

例はよろしくないかもしれないが、
ロシアに侵攻されたウクライナのようだ。

それがこれまでの改装をさらに進化させていた。IMG_1856 (002)2

店舗中央のコンコース沿いに、
「キッチンスマイル」が設けられて、
料理提案や試食をしている。
私もいただいた。
IMG_18992

柄谷康夫常務取締役が、
売場の改善点を説明してくれた。

柄谷さんはコーネル大学ジャパンの2期生。
「奇跡の2期生」の番長。IMG_19212

店頭の売場レイアウトを見ながら、
改善カ所の説明を受けた。IMG_19602

私の隣が柄谷さん。
そして石原栄題さん、畠山武店長、
中西淳さん。
IMG_19412
中西さんが専務取締役経営企画室長、
柄谷さんは営業本部長、
石原さんは広報秘書チームリーダー。

そのあと、改装の考え方や趣旨を、
中西専務と柄谷常務から、
たっぷりと聞いた。

阪神淡路大震災のときの、
鴻池店の写真なども見せてもらった。

その1995年のあとに建て替えられた。
さらに2008年に改装し、
三度目の改造である。

このインタービューの間には、
昨年の株主総会の話や、
将来への抱負なども次々に出てきた。

「一晩喋りつづけてしまいますわ」と、
柄谷さん。

「これからが大変ですが、
全社員一丸となってやり抜きます」と、
中西さん。

話を聞いていて、
私は北野祐次さん、水谷久三さんのことを、
思い出した。

45年前の私自身の、
関西スーパー研修が蘇ってきた。

昨年の株主総会の賛否の投票後、
本社に戻った幹部に対して、
誰ともなく全員が集まって来て、
拍手が沸いた。

この話は感動的だ。
私も泣いた。

ウクライナの人々が、
全国民が、
拍手でゼレンスキーを迎える日を思うと、
やはり泣けてくる。

この店舗改装のケーススタディは、
月刊商人舎4月号で掲載する。

試練を乗り越えた人間は強い。
艱難は商人を鍛える。

しみじみとそれを思った。

〈結城義晴〉

2022年03月22日(火曜日)

戦争と平和/万代知識商人大学院第7期始まる

故瀬戸内寂聴さん。
昨2021年11月9日に亡くなった。

戦争について語っている。

「お国のため、東洋平和のため、
天皇陛下のため、
いろいろと理屈をつけ、
正しい戦争と教えられた。
でも、戦争にいい戦争はない。
すべて人殺しです」
51sESdiOL0L._SX309_BO1,204,203,200_
「愛する人と別れること、
愛する人が殺されること。
それが戦争です」

戦争と平和。

万代知識商人大学第7期が始まった。

7期生は、次期の役員候補たち32名。
万代のフラッグショップ店長や部長たち。

フラッグショップは、
万代の旗艦店で、
この店長は部長待遇でもある。

すでに一度カレッジを修了した18名が含まれる。
したがって7期は、知識商人大学院ともいえる。
IMG_1755-1
MBAはMaster of Business Administration。
大学が学士課程ならば、
大学院は修士課程である。

司会は海野正敏さん。
人事部マネジャー。
IMG_1750-1

はじめに受講生全員が、
一人ひとり自己紹介。IMG_1752-1

そして学長・結城義晴の開講の辞。

コロナ禍からウクライナ戦争まで。
時代は激変している。
商業の世界も変革のときだ。

だから第7期の幹部候補生に対して、
自己変革を求めつつ、
厳しい指摘をして檄を飛ばした。IMG_1759-1
今年度は役員も受講して、
万代は幹部全員がこの大学院で、
ともに学ぶことになる。

第1講義はトップマネジメントの講和。IMG_1762-1

最初は阿部秀行社長。

役員と受講生の年齢構成表を示して、
次代を担う受講生たちへ、
意識改革を求めた。
IMG_1764-1

阿部社長の講和はいつも具体的で、
実にわかりやすい。

それはマーケティングとマネジメントの、
原則に基づいている。

次に不破栄副社長。
「経営は決断の連続」
経営者としての心構えを、
コーポレート部門のトップとして、
これも、丁寧に語ってくれた。
IMG_1771-1

芝純常務取締役。
万代の営業部門を支える。
芝さんは年間50冊以上を読破する。
人間力を磨くために、
自分に投資する時間をいかに捻出するか。
いい話だった。IMG_1775-1

最後はコーポレート部門を管掌する、
加藤健常務取締役。

べストゲーム、
クリーンゲーム、
協心。
ラグビーで学んだ言葉を披露しながら、
万代のあるべき姿を語った。IMG_1784-1

受講生はメモを取り、
真剣に耳を傾ける。
IMG_1798-1

トップマネジメント講和は、
いつもの営業会議や店長会議では聞けない、
新鮮な内容である。

これが企業内大学のいい面だ。

今年度は外部講師を招かない。
万代の取締役と学長だけの講義となる。

第2講義は結城義晴。
ミッションマネジメント。IMG_1808-1

経営幹部向けに、
講義内容をバージョンアップして、
かつ端的に説明していく。IMG_1812-1

ミッションに関しては、
初めて聴講する7期生に向けて、
丁寧に講義した。
もちろん、カレッジ修了者たちにとっては、
一度学んだことの理解を深める講義になる。
IMG_1813-1

昼食休憩をはさんで、第3講義は2時間。
ストラテジックマネジメントのエッセンス。IMG_1817-1

コトラー、ポーター、バーニーなどなど、
競争戦略論の要諦を説明しつつ、
現時点のチェーンストアの状況分析をし、
万代の経営戦略への提案を交えて、
一気に講義した。IMG_1852-1

雨模様だった東大阪市渋川町も、
午後3時ごろになると、青空になった。IMG_1859-1

万代の会議棟。
その1階の大ホールで、
カレッジの授業は行われる。IMG_1860-1

第4講義は、取締役全員の講話。IMG_1862-1

8名の取締役それぞれが、
意思決定についての考え方や、
経営者としての心構えを語った。IMG_1863-1

7期生にとっては、
今日の講義は刺激的だっただろう。IMG_1864-1

最後に結城義晴の総括講義。IMG_1866-1
大きな変革のとき。

この変革を意図的に活用しようとする企業と、
それに受動的に対応しようとする企業では、
大きな違いが出てくる。

もちろん変化に対して、
能動的な企業であるべきだ。

それが今年度の万代大学院の考え方である。

そして最後の最後は、
阿部社長。IMG_1872-1

朝9時から夕方6時まで、
7期生の万代カレッジの第1回講義は終了。IMG_1875-1

講師陣も満足して、記念撮影。IMG_1879-1
何度も講義してもらう。
よろしくお願いします。

その後、割烹料理の「久恵」で会食。
今日から大阪府も、
まん延防止等重点措置が解除された。

講義を終えた充実感もあって、
会話は弾んだ。

私の隣は芝、加藤両常務。
右は山口成樹さん、左は松岡俊行さん。
山口さんはシステム・物流管掌取締役、
松岡さんは生鮮商品部担当取締役で、
子会社
アルヘイムフードサービス㈱社長を兼務。
IMG_1886-1
加藤さんと松岡さんは、
万代カレッジの2期修了生だ。

すでに180名ほどの修了生がいる。
今期を合わせて200名を超える。

万代知識商人大学は、
幹部候補生を育成する機関として、
会社の戦略を推進する機関として、
着実に歩んでいる。

ウクライナ戦争が進む中、
学べることの有難さを噛みしめた。

〈結城義晴〉

2022年03月21日(月曜日)

ウクライナの「ひまわり」・キエフの「マロニエ」と「身体の元気」

Everybody! Good Monday!
[2022vol⑫]

2022年第12週。
3月第4週。

今日は春分の日の祝日。
春の彼岸の中日。

東京では昨日の3月20日、
靖国神社の桜が開花した。

これからです。

朝日新聞「折々のことば」
3月10日の第2316回。

花の名を知ることは、
花に気をかけ、
愛するということだ。
〈寺尾紗穂(さほ)随想集『天使日記』より〉
41jLrikuj5L._SX336_BO1,204,203,200_
「名前を憶(おぼ)えれば関係が一段上がる」

花も虫も、国も人も。

「地元にどんな花が咲くかを
知り、名を憶え、
その変化に気づく人がいるということは、
その土地を狙う妙な計画が立ち上がった時、
“土地を守る術”になる」

ウクライナの国花は、
ご存知、ひまわり。

キエフ市のシンボルは、
セイヨウトチノキ、
別名はマロニエ。

今、ウクライナの人々は、
花を見る余裕などないだろうし、
木や花は戦車に踏みにじられ、
爆撃によって無残な姿になっている。

だがロシア兵の中にも、
花の名を知る者はいるはずだ。

彼らがかすかな希望かもしれない。

今日は新横浜から、
正午の新幹線のぞみ。

横浜の花はバラ。

小田原を過ぎ、三島を越えても、
富士の姿は見えなかった。

そして富士川。
IMG_17532

あっという間に走り過ぎる。IMG_17552
新大阪に着いて、
シェラトン都ホテル大阪へ。
私の定宿。

大阪府の花は梅とさくらそう。
大阪市はサクラとパンジー。

ここで打ち合わせ。
2時間。

いい提案で、
いい決意をした。

その後、銀座アスターで懇親会。
㈱万代の取締役のみなさん。IMG_17422
私の左が阿部秀行社長。
その隣が、
店舗運営・サポート部管掌の圓石一治取締役。
右隣は河野竜一人事・総務部管掌取締役、
そして田縁(たぶち)仁平取締役。
財務経理経理管掌。

明日から万代知識商人大学第七期。
明日は取締役全員が講師となってくれる。

学長として第七期の趣旨を語り、
その講義の力点を説明し、要望した。

最後は阿部社長とツーショット。IMG_E1747w2
頑張ります。

さてほぼ日の糸井重里さん。
巻頭エッセイは「今日のダーリン」
img_message-448x484

今だから「元気」について考える。

心の「元気」と身体の「元気」。

「もともと、心のありようは
内臓のはたらきに左右される、
と聞いていますが、
“元気”の源は身体の”元気”です」

「それにしては、と思うのです。
心の”元気”を保つため、
心をフレッシュでいさせるため、
ぼくらは、ほんとうに
いろんなことをしています」

「でも、身体の”元気”については、
どうも、あんまりコストをかけずに
過ごしてきたのではないか」

「みんながそうだとは言わないけれど、
ぼくは、そうでした」

「同じ姿勢で無理をさせたり、
運動をしてなかったり、
寝不足を続けていたり、
食べすぎで胃腸に負担をかけたり、
いくら親しいじぶんの身体とはいえ、
粗末に扱いすぎです」

私もそっくり同じだ。

「心のほうは、強がり言って
“元気”なふりもできますが、
身体はあんがい正直で、
弱くもなります、活力も減ります」

「これは、いいことじゃなかったです」

「だから、心が落ち込むこの時期に、
変えようと思いました」

うんうん。

「身体の”元気”のほうを
ちゃんとコストをかけて建て直す。
ほんとの”元気”で丈夫であるために、
時間もつくります」

同感だ。

新型コロナウイルス禍の2年。
それからプーチンの戦争。

心の元気がそがれるときだからこそ、
身体の元気を取り戻したい。

元気を出そうよ、
それがあなたの仕事です。
元気を出そうよ、
それがあなたの役目です。

そのために、
「”身体の元気”のためのスケジュールを、
ちゃんと組みます」

同感だ。

花の名を知ることも、
花に気をかけることも、
花を愛することも、
元気をつくることにつながる。

ひまわりとマロニエは、
今、とくに大切にしたいと思う。

では、みなさん、今週も、
元気を出そうよ、
それがあなたの仕事です。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2022年03月20日(日曜日)

年金生活者5000円支給と「平和ボケ産業」

年金生活者への給付金。

年金受給者を対象に、
「臨時特別給付金」の支給が検討されている。
一律5000円程度、1回限り。
対象者は約2600万人。
総額1300億円。

7月の参院選前の支給を目指すが、
名目は新型コロナウイルス対策の生活支援。

朝日、毎日、日経各紙が社説で批判した。

毎日新聞は3月17日朝刊。
「年金受給者に5000円案
選挙対策にしか見えない」

「今夏の参院選を前にした
露骨な”バラマキ”と言われても
仕方あるまい」

朝日新聞は3月18日。
「年金給付金
理のない施策、撤回を」

そして日経新聞は3月20日。
「与党は選挙のたびに給付金を配るのか」

「選挙の票を目当てに
有権者に給付金をばらまくような政策は
言語道断だ」

世界はウクライナ戦争の真っただ中にある。
その陰で姑息な選挙対策の金のバラマキ。

日本の政府と与党は平和ボケしている。
野党も五十歩百歩だ。

5000円は小学生のお年玉にも満たない。
高齢者たちも馬鹿にされたものだ。

だからといって5万円ならば、
喜んで支給を受けるか。

私も年金受給者の一人となっているが、
私たちの給付金の総額を、
ウクライナ支援に寄付しても足りない。

判断の自由はある。

COVID-19パンデミックの次に、
ウクライナのプーチン戦争が起こった。
FM5_GAfVkAc3Rxv
そこでは「自由の尊厳」が問われている。

政治思想史学者丸山真男。
1914年に生まれ、1996年に没した。
41AqeszlD0L
「自由は置き物のように
そこにあるのでなく、
現実の行使によってだけ守られる、
いいかえれば
日々自由になろうとすることによって、
はじめて自由でありうる
ということなのです」

ウクライナの民は今、
自由になろうとしている。
それがすなわち自由でありうる、
ということだ。

丸山真男。
「その意味では、
近代社会の自由とか権利とかいうものは、
どうやら生活の惰性を好む者、
毎日の生活さえ何とか安全に過ごせたら、
物事の判断などは
人に預けてもいいと思っている人、
あるいはアームチェアから立ち上がるよりも
それに深々とよりかかっていたい
気性の持主などにとっては、
はなはだもって
荷厄介(にやっかい)なしろ物だといえましょう」
(『日本の思想』1961刊より)
41PT4KVBTWL._SY291_BO1,204,203,200_QL40_ML2_
丸山真男は日本の政治学を、
学問として確立し、
戦後日本の民主主義思想を主導した。

私もアームチェアに深々と沈み込んで、
立ち上がりたくはないというときもある。

しかし毎日の生活さえ何とか安全に過ごせたら、
物事の判断など人に預けてもいいとは思わない。

だから年金受給者への5000円給付には、
腹立たしい気持ちでいっぱいだ。

ユヴァル・ノア・ハラリ。
その著『21Lessons』
51QH404WcML._SX353_BO1,204,203,200_
第3章は「自由」

「自由主義の物語は、
人間の自由をもっとも価値あるものとして
大切にする」

「あらゆる権限は最終的には、
個々の人間の自由意志から生じ、
自由意志は各自の感情や欲望や選択の中に表れると、
この物語は主張する」

ウクライナでは、
この自由が奪われようとしている。
いやロシアでも中国でも、
これらの自由が担保されているかどうかは、
極めて疑わしい。

ハラリ。
「政治では、
有権者がいちばんよく知っていると、
自由主義は信じている。
だから民主的な選挙を支持する」

「経済では、
顧客はつねに正しいと、
自由主義は断言する。
だから自由市場の原理を歓迎する」

「私事では、
他者の自由を侵害しないかぎり、
自分に耳を傾けたり、自分に忠実であったり、
自分の心に従ったりすることを、
自由主義は人々に勧める。
この個人の自由は、
人権の中に大切に謳われている」

この自由が、
毎日の生活の惰性の中で、
当然のように与えられるものだと、
勘違いしてしまう。

それが平和ボケである。

商業は人間産業である。
地域産業であるし、
平和産業である。

だが平和ボケ産業となってはいけない。

〈結城義晴〉

2022年03月19日(土曜日)

プーチンの「神がなければすべては許される」の「最後の夢」

春の彼岸の三連休。

昨日3月18日が彼岸の入り、
土日を挟んで月曜日が彼岸の中日、
春分の日の祝日。
木曜日の3月24日が彼岸明け。

春だぞって、いうとき。

雪とけて村いっぱいの子どもかな
〈小林一茶〉

「雪」という言葉が使われているけれど、
季語は「雪とけて」で、季節は春。

一茶の句で一番好きだ。
そんな春がやってきて、
そして春真っ只中に入っていく。

大川へ吹なぐられし桜哉

これも一茶でニ番目に好きな句だ。
好きなのは春の句が多い。

しかしウクライナの春は遠い。

国連人道問題調整事務所(OCHA)の発表。
3月16日時点で、
ウクライナの国内避難民は648万人となった。
国内で家を出て避難している人々。

一方、すでに国外に逃れた難民は320万人。

さらに地域に取り残されて、
避難できずにいる人々は1200万人以上。

毎日新聞「深掘り」
ロシア文学者を「絶望」させた
プーチンの「最後の夢」

名古屋外国語大学の亀山郁夫学長。
ドストエフスキー研究者として名高い。

文豪ドストエフスキーもロシア人。
大統領プーチンもロシア人。

亀山先生はどう見ているか。

2006年に「カラマーゾフの兄弟」を新訳。
異例のベストセラーになり、
毎日出版文化賞特別賞受賞。
51Vy1hA3PkL

2014年には、
ゴルバチョフ元ソ連大統領と会談。
ロシアの生き字引のような人。

この独白、長いけれど、
本質に迫っている。

ロシア文学者として、
「今回の戦争から受けている衝撃」――。

「強いていえば、
『カラマーゾフの兄弟』に出てくる、
“神がなければ、すべては許される”
という言葉でしょうか」
51FHLEQXOUL

「この小説は、3人の兄弟がいる
カラマーゾフ家で起きた
父親殺しを軸とする物語なのですが、
“神がなければ……”のひと言は、
父親殺しを正当化するセリフとして
暗示的に示されています」

「神がいないのだから、すべては許される、
というロジックに反転するわけです」

“神は存在するのか”
“存在しなかったとしたら全ては許されるのか”
――「ドストエフスキー自身が
生涯問い続けた命題でもありました」

「”すべては許される”という
アナーキーな精神性は、
ロシア人の精神の闇に深く通じる言葉です」

「アナーキーで自由な精神性は、
いったん落ちはじめたら、
とどまるところを知りません」

「だからこそ、彼らは、
強い神、強い支配者を半ば
マゾヒスティックに待ち望んでいます。
それは必然的に、個人の自立を
著しく遅らせていきます。
自立の観念のないところでは、
他者の自立に対する想像力は生まれません」
41jGUqU5USL

「かつて、プーチンの人気が高かった時、
ロシアの兵士たちは、彼の肖像画に
まるで正教信者が聖像画にするように
キスしました」

「支持率が”天に届いた”と
表現されたこともあります」

「しかし、今回の事態は、
少なくとも私たちの常識で考えた場合、
常軌を逸しています」

「不在となった神のステータスを
簒奪(さんだつ)したとしか思えません」

ラテン語のことわざ。
「神は、罰したいと思う人間から
最初に理性を奪う」

「私はそれを思い起こします。
しかし、その神が姿を隠してしまった」

「彼(プーチン)は、
すでに歴史の外に出て、
歴史に対して復讐しようと
もくろんでいるようにさえ思えます」
51cxA-O9MZL._SX357_BO1,204,203,200_

「プーチン大統領の”狂気”にも、
緻密な論理が隠されています。
侵略を正当化する論理です。
一見、暴力的そのものですが、
常に口実を用意している」

「彼はロシア正教徒として
強烈な使命感をもっています。
その使命感が、自分の理性では
もはやあらがえないほど深く
取りついてしまったのか、
それとも単なる演技なのか、
はたまた口実なのか、
その境界線が見えません」

「いずれにせよ、プーチンの、
観念的なものへの過度の思い入れが、
一番厄介です」

ドストエフスキーはこの気質を
“ベッソフシチナ(悪魔つき)”と呼んだ。

「観念的なものへの、
過度の熱中という主題が
最初に現れるのが『罪と罰』です」
411x7+mRpSL

「主人公ラスコーリニコフを見てください。
彼は、2人の女性を殺しておきながら、
ほとんど罪の意識にかられることがない。
正当な理由があれば、天才は、
凡人の権利を踏みにじることができる
とまで豪語している」

「この”正当な理由”というのがくせもので、
そこには論理のすり替えと、
倫理的観念の完全な喪失がうかがえます」
41xi9odq7WL

「プーチンは、言葉に対して
猛烈な不信感をもっているのではないでしょうか」

「不信感を持つということは、
逆にそれだけ、
言葉の絶対性への期待が
大きいことを意味しています」

「彼の不信感は、当然、
旧ソ連の情報機関KGBの情報員だったときの
経験が影響しているのでしょう」

「翻って、彼が信じることのできるものは、
人間であって、人間の外にあるものです」

「端的には、人間の身体であり、
そして芸術、すなわち調和的な世界です」

「彼が体を鍛え、芸術家のパトロンとして
振る舞おうとするのもそのためだと思います」

「ただ、ロシアの芸術家は
つねに権力の保護のもとに生き、
二枚舌を駆使しつつ
権力との共生を模索してきた
という現実を忘れてはなりません」

「スターリンとショスタコービチの関係を
思い出してほしいと思います。
状況は、変わっていないのです」

「しかし何よりも問題なのは、
プーチンが、一種の観念的な美学に
酔っていることです」

「彼は、昨年、
ドストエフスキー生誕200年の祝典に出席し、
“天才的な思想家”というメッセージを残しました」

「保守派のイデオローグだった
ドストエフスキーまでも利用して
自分の美学を追求しようとしたのです」

「ウクライナ侵攻も、その根底には、
そうした彼の美学が影を落としています」

「世界が、一人の人間の美学の
犠牲になろうとしている。
恐ろしいことです」

「その”観念的な美学”とは、
“新ユーラシア主義”です」

「プーチン大統領は、
猛烈なロマンチストです」

「緻密な頭脳をもち、
機銃掃射のように言葉を発する
ドライな知性の持ち主である半面、
おそらくはソ連崩壊時に経験した
強烈なトラウマから
抜け出すことができなかった」

「ちなみに、新ユーラシア主義とは、
社会主義の理念に結ばれた旧ソ連の版図を、
ロシア正教の原理で一元化し、
西欧でもアジアでもない、
独自の精神共同体とみなす考えです」

「彼のロマンチストとしての願望に
ぴったり一致しています」

「彼自身が、まさに
新しい”王国”のメサイア(救世主)たることを
願っていたのかもしれません」

「歴史的にも精神的にもウクライナは
俺たちと同じ胎から生まれた」

この意識が根本にある。

「兄弟が、母子が一体となり、
新ユーラシア主義を実現すること」

「それがプーチンが追い求める
最後の”夢”であり、
最後の欲望なのでしょう」

「ここまで情報がオープンと化した時代に、
NATOの脅威など恐れることは
なかったはずです。
むしろ、協力関係という選択肢も
ありえたはずですから」

「にもかかわらず彼が、
NATOの東方拡大を口実に侵攻したのは、
精神的共同体の夢が壊されるのが、
よほど怖かったからではないでしょうか」
51oWISvAHKL._SY346_

「グローバリズムに完全に乗り遅れ、
資源大国から一歩も先に歩みだせない焦りが、
精神的共同体の夢の強化に拍車をかけた
と言ってもよいかもしれません」

“神がなければ、すべては許される”
その最後の夢。

成就することがないばかりか、
ヒトラーの如く歴史に刻まれるだろう。

〈結城義晴〉

2022年03月18日(金曜日)

クラウゼヴィッツ「戦争論」の「重たい液体の中」

横浜にもどって来て、
牡鹿半島沖を震源とする地震の話を聞くと、
凄く揺れたらしい。

福井にいるとそれは全然わからなかった。
あらためてお見舞い申し上げたい。

日本列島もウクライナと同じように広い。

毎日新聞3月16日の巻頭コラム「余録」
「戦争における行動は
重たい液体の中で
運動するようなものだ。
ただ前進することも
水中では敏捷、正確には行えない」

クラウゼビッツの名著「戦争論」。
クラウゼヴィッツ

「思うにまかせぬ戦場での行動」を、
クラウゼヴィッツは「水中」に喩えた。

ドイツ帝国の基礎となった、
プロイセン王国の軍人。

この「戦争論」が抽象化されて、
経営における競争戦略としても使われる。

クラウゼヴィッツは、
ロシアに侵攻したナポレオン軍が消耗し、
敗退するさまを目の当たりにした。

この「戦争論」では、
戦場で軍の動きを拘束し、
その計画を台無しにする
予想外の偶然や事故の連鎖を、
「摩擦」と呼んだ。

コラムはロシア軍のウクライナ侵攻を、
この「摩擦」だという。

「自ら飛び込んだ水中でもがく
プーチン氏に同情の余地はないが、
より非道な武力行使を
救いのワラと思い込む錯乱が怖い」

同感だ。

会社の経営や店の運営も、
「重たい液体の中での運動」のようになると、
「摩擦」である。

朝日新聞DIGITALに、
ロシアの知識人女性の手記が載っている。

「おかあさんは侵略者の国にいる。
ほんとうだね」

翻訳は太田丈太郎熊本学園大学教授。

「2022年3月9日(水)
私たちは衝撃を受けています。
あぜんとしている。
がくぜんとしている」

「国外にいる息子が電話してきて、
私に言うのです。
おかあさんは侵略者の国、
占領者の国で暮らしているのだね。
そうね、ほんとうだね」

「どんな攻撃も罪悪です。
でもウクライナの人たちは、
実際私たちの親戚で兄弟なのです。
何世代にもわたって
同じ国で一緒に生きてきた」
240_F_130813105

「プーチンが言っていることとは
ぜんぜんちがう。
とてもたくさんの親戚や友人たちが
ウクライナにいるのです」

「ヒトラーがキエフを爆撃したことを
私の父は覚えています。
ところが、こんどはプーチンです」

「私たちは今、
解放者の側でなく、
占領者の側にいる」

「ウクライナには、
ロシア人なら誰にでも友人や親戚がいます」

「連絡を取り合い、お互いに
電話をかけあったりしています。
力の及ぶ限り、
彼らのサポートをしています」

「これは私たちの戦争ではない、
私たちは彼らウクライナの味方だ、
ロシアの味方ではないと
証明しようとしているけれど」

「多くの人たちが国外へ去りました、
言論の自由のためにです」

「プーチンに従わず、
反プーチンのデモに
何年も参加してきた私たち自身、
いまとても悪い立場に置かれています」

「私たちは
プーチンにも、

西側にも、
自分自身の良心にも、

いちどきに
たたかれ続けているのです」

「戦争への態度を
表明することすらむずかしい。
戦争を戦争と言うことすらできない。
私たちのプロパガンダ用語では、
今起こっていることは戦争ではなく、
特殊作戦だという……。」

「戦争反対の署名のために
仕事を辞めさせられる。
デモに出れば、こん棒で殴られたうえに
監獄へ入れられる。
フェイスブックに
あからさまなポストをすれば、
これも監獄へ入れられるおそれがある」

「プーチンは
ウクライナばかりでなく、
ロシアをも殺したのです。
精神的にも、
経済のうえでも」

「今日、ロシアからマクドナルドが
撤退すると告知されました」

「マクドナルドには普段、
むしろ軽蔑的に接してきましたが、
ロシアにとってこれは
象徴的な撤退です」

「ロシアに
マクドナルドがやってきたことから、
あたらしい、ポスト共産主義時代が
始まりました」

「最初にマクドナルドが現れたとき、
行列が何キロもできたものです」

1990年1月31日のことだ。
モスクワマクドナルド1号店
「それまで一度もこういうものを
見たことのなかったロシア人は、
ビッグマックや袋に入ったフライドポテトを、
まるで高級フランス料理のように
見なしたものでした」

「マクドナルドの撤退は
象徴的なできごとです。
これはかつての民主的なロシア、
ゴルバチョフとエリツィンの築いた
ロシアの終わりを意味するのです」

マクドナルドも、
イケアもZARAも、
そして最後にユニクロも撤退した。

フードサービスとリテールが、
ポスト共産主義時代を象徴しいていた。
新しい時代をイメージさせた。

ロシアの知識人たちは、
軽蔑的に接していたというが、
その撤退が象徴するものは、
自分自身の良心からもたたかれる時代だ。

昨日、PLANTの成長の話を書いた。
IMG_16462
「成長のスピード」

トップスピードのときに比べて、
今は遅いと感じるとしたら、
「重たい液体の中」にいることになる。

「摩擦」である。

PLANTにかぎらない。
トライアルもベイシアも。

イオンもセブン&アイも。
西友も、ユニー、ドン・キホーテも。

ヤオコーやヨークベニマルも、
万代やサミットも。
オーケーやロピアも。

前に進もうとしても、
正確さも、敏捷さもなくなったら、
それは「摩擦」があるからだ。

柳井正が一番恐れているのは、
この「摩擦」だと思う。

私が企業に接するときに、
一番気にしているのも、
「重たい液体の中の運動」である。

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.