結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年04月26日(火曜日)

商業界会館の売却・解体と「海には字が書いてある」

商業界会館がなくなる。
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東京都港区麻布台。
国道1号線の桜田通りが走る。
それと東京タワー通りとが交わった、
飯倉交差点の角にある、
6階建ての古いビルだ。

株式会社商業界会館が所有する。

ファサードには倉本長治の碑がある。
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店は客のためにある
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株式会社商業界は、
2020年4月2日に自己破産した。
多くの方々に多大なご迷惑をかけた。

その親会社の㈱商業界会館は、
存続してこのビルを管理していた。

その商業界会館が3月末をもって、
森トラスト㈱にこの土地と建物を売却した。

1階はロビーと受付、
2階はセミナールーム、
3階がクラブ室。
4階から6階までを、
㈱商業界がオフィスとして使っていた。

6階にはかつて、
宿泊ルームがあって、
上京した全国の商人が、
ここに泊まって勉強したり、
首都圏で仕入れ活動をしたりした。

商人の殿堂。

昭和41年(1966年)3月に、
全国の商人たちの浄財によって、
倉本長治のために建立された。
倉本長治モノクロ2

そのすべての寄付者の名前が、
1階の八角柱に記されていた。

1階ロビーの大理石の壁には、
岡田徹の詩が刻まれていた。

小さな店であることを
恥じることはないよ
その
小さなあなたのお店に
人の心の美しさを
一杯に満たそうよ

070901_3

1階から2階への階段には、
欅板に彫られた言葉があった。

正しきに依りて
滅ぶる店あらば

滅びてもよし
断じて滅びず
新保民八
新保民八

3階クラブ室のシャンデリアは、
ヴェネチアングラスで、
長治主幹が当地を訪れて持ち帰った。

その他にも記念の品などは、
丁寧に保管されている。

一級建築士や照明コンサルタントが、
全館を再調査して、
何が残せるかが決定された。

しかし3階のクラブ室や、
4階の主幹室などは、
昭和の香りがする空間で、
そのまま移設したいくらいだ。

私はこのクラブ室と主幹室が特に好きで、
社長の時代には長い時間、佇んで、
モノを考えたり、書いたりした。

もう店子もすべていなくなって、
ビルそのものも耐震構造になっていない。
残念なことだが、
建て替えをする以外にない。
㈱会館にはその資金はない。

そこで売却の運びとなった。

私はここに30年通って仕事した。IMG_13212-448x617
手を合わせたい気持ちだ。

ありがとうございました。

今週は月刊商人舎5月号の怒涛の入稿。

毎日、毎日、パソコンに向かって、
原稿を執筆し、原稿を手直しする。
タイトルをつけて、デザインを指定し、
誌面にしていく。

その合間にブログを書く。
ブログの読者には申し訳ないけれど、
合間の執筆です。

それでも結構、力作の文章が書けたりする。

不思議です。

さて中日新聞の「中日春秋」。
東京新聞の「筆洗」と同じ文章の日がある。

昨日がそれだった。

「海には字が書いてある」
作家の立松和平さんが、
知床半島のベテラン漁師から聞いた言葉。

「天候が変わりやすく、
波の高い知床の海は
船を出すかどうかの判断が難しい」

「海を見つめ、風や潮が
どんな字やメッセージを出しているかを
読み解く。
そこから荒れ具合を予想し、
決断の材料にする」

知床半島の観光船遭難事故は痛ましい。
亡くなられた人々のご冥福を祈りたい。

正確なことはわからないが、
運航会社のマネジメントに、
原因の一つがあったようだ。

残念なことだ。

「海の字」を経験の浅い船長が読めなかった。
経営者は「海の字」のことすら無視した。

小売業やサービス業の店にも、
「客の字」が書かれている。

それを読む。

そしてマネジメントする。

ピーター・ドラッカーは言う。
「マネジメントとは、
人の強みを生かすことである」

作家・安土敏こと荒井伸也さんは、
「マネジメントとは、
簡単に言えば段取り組みのことだ」
これもいい。

故ジョン・F・ケネディの消費者の権利。
「コンシューマードクトリン」と呼ばれる。
①安全である権利
②知らされる権利
③選択できる権利
④意見を聞き遂げられる権利

店も観光船も、
安全である権利が第一にくる。

この4つの権利を死守するために、
「海の字」を読み、「客の字」を読み、
マネジメントする。

守られねば、
人の命が危うくなる。

ウクライナでは、
その命が軽々しく奪われる。
戦争が進行中だから、
そういうことが日常茶飯に起こる。

当人や家族、友人にとっては、
この上なく悲惨なことなのに、
ニュースとして知る者は、
私も含めて、なんというか、
慣れてくる。

それは人間として悲しい。
痛ましいことばかりだ。

私はそんなとき、
仕事に没頭する。

それが一番いいし、
それしかないともいえるだろうか。

人も建物も、
会社も国も、
永遠ではない。

存在している間に、
どれだけ輝けるか。

だから私の場合、
生きていることに感謝しつつ、
仕事に没頭するしかない。

合掌。

〈結城義晴〉

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