結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年04月30日(土曜日)

セブン&アイの「27億円の男」か「お客様最上位の組織」か。

2022年4月最後の日。

二月の雪、三月の風、四月の雨が、
輝く五月をつくる。
内館牧子さんのエッセイにある。

黄金週間の土曜日だけれど、
商人舎オフィスに出て、
原稿執筆と原稿手直し。
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編集作業をして、
デザインの七海真理さんに入稿した。
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疲れた。
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今日の朝日新聞「折々のことば」
第2365回。

やっぱり仕事は
命に
目立てをかける事なんだなァ
(土田一郎の父)

「鋸(のこぎり)目立て職人の父は、
親からもらった体は
減らないものと思っていたが、
鋸と同じで、
いい仕事をしようとつい酷使するうち
やっぱり細ってくると嘆いていたと、
跡を継いだ息子はいう」

「根を詰めればいやでもタコはできるし、
持病も出てくる」

「それでも人が働くのは、
命を削ってでもそれに
張りをもたせようとするからだ」
(『職人衆昔ばなし』から)
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命を削ってでも、
商品に張りをもたせる。
売場や店に張りをもたせる。

本や雑誌、文章に張りをもたせる。

そのために人は働く。

今日の気分にぴったりだ。

今月の日経新聞に、
セブン&アイ・ホールディングスの、
組織や役員会についての、
署名記事が2本掲載された。

対照的で面白い。

セブン&アイにとっても、
これは有益だった。

ひとつの原稿は今日の記事。
「セブン&アイ、外国人が社長になる日」
論説委員の中村直文さんが書いた。

ふたつめは4月15日に発表された記事。
「セブン&アイ、逆三角形の組織図の思想を保てるか」
編集委員の田中陽さんの筆。

中村記事はこう始まる。
「セブン&アイ・ホールディングスの役員は
かつてこう話していた」

この語り口は、
新聞記者や雑誌記者がよく使うが、
私は嫌いだ。

名前を明かさない裏話。

その匿名の役員は言う。
「投資家やアナリストの話ばかりを聞いていたら、
経営革新なんてできないよ」

これは、その通り。

しかしこれ、
言ったのは鈴木敏文さんだと、
私は推測する。
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「そんな同社が米アクティビスト(物言う株主)の
バリューアクト・キャピタルなどの声を受け、
取締役の過半を社外人材にする。
隔世の感がある」

そのあとに鈴木さんの記述がある。

「セブン&アイは少なくとも
6年以上前までは自信に満ちていた。
創業者の伊藤雅俊氏による
イトーヨーカ堂の業務改革、
鈴木敏文氏が主導したセブンイレブンの導入など、
日本の流通業界をけん引し続けてきた」

この表現は厳密に言えば間違っている。

業革もセブン-イレブンも、
伊藤さんが容認して、
鈴木さんが実行した。

「外部から招いた
サラリーマン経営者の鈴木氏を
絶対的なリーダーとして、
2005年にイトーヨーカ堂から
セブン&アイへ社名変更まで認めたことも
実に革新的だ。
創業一族の”イトー”(伊藤)を
表看板から消したわけだから」

これもニュアンスが違う。

鈴木さんは「外部から招」かれたわけではない。
若いころに東販を辞めて、
イトーヨーカ堂に転職しただけだ。
あとは自力でのし上がった。

「かつて役員が語ったように、
鈴木氏は二番煎じを嫌い、
誰もが反対してきた事業で
成功を収めたとの自負が強かった」

ここで「かつての役員」は鈴木さん自身だから、
これは鈴木さんが自分を語ったものだ。

「恐らく鈴木氏自身が内部にいながら
“アウトサイダー”という
自覚があったからだろう」

中村記事は、
鈴木=アウトサイダー、
=外国人取締役⇒外国人社長と、
ストーリーが続く。

そしてこれが結論。
「カギを握るのは”27億の男”と呼ばれる人物だろう」

「セブン&アイの取締役にして、
米セブン-イレブン社長の
ジョセフ・マイケル・デピント氏だ」

週刊誌的な記事だ。

「デピント氏は02年に入社し、
米国事業の基盤を固めてきた。
直近の報酬は約27億円で
井阪隆一セブン&アイ社長の約20倍を手にしている」

一方の田中陽原稿の冒頭は、
「セブン&アイは取締役会の過半数を
社外メンバーにする方針だ」

同じテーマ。

「先進的なガバナンス体制をつくります」
井阪隆一社長が力を込めて語った。

しかし田中原稿の主役は、
創業者の伊藤雅俊さんだ。
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一般の会社組織は、
「三角形の樹形図」のようになっている。

頂点に株主や株主総会が構える。
その下には会長や社長、
その下に総務部、人事部、営業部、
企画部などが横並びで配置される。
さらに一段下がって、
三角形の底面には各部の課や室や研究所などが
末広がりにぶら下がる。

それに対して、セブン&アイの組織は、
「逆三角形」になっている。

「まず最上部は、
全国にある店舗や地域が横一線に並ぶ。
その下には店舗や地域のオペレーションを支える部署、
その下に本社や本部の管理部門がある。
そして逆三角形の下の部分には
社長(会長)があり、一番下には取締役会、
そして株主」

「”お客さま”は最上位の位置づけだ」

これは伊藤さんの考え方だ。

田中原稿は、
伊藤さんの30年以上も前のコメントを書く。
「会社の利益の源泉は
お客様の買い物金額から生まれます。
そこから、仕入れ先への支払い、
従業員への給料や賃料などに使い、
残ったお金を株主への配当に回します。
だから一番、偉いのは
お客様や地域の皆さんなのです」

この逆三角形の組織図が導入されたのは
1968年だった。

1978年、イトーヨーカ堂は、
日本企業として戦後初の無担保社債を
米国で公募発行した。

この時の伊藤さんの感想。
「企業として下着まで脱がされた気がした」

伊藤さん、いい表現するねぇ。
そして田中さんもよく覚えているねぇ。

伊藤雅俊さんの述懐。
「上場すると内なる規律と
外からの規律に縛られる」

「そんなセブン&アイHDが、
消費者(お客様)から遠い取締役会に
外部人材を多く登用する」

そして田中陽、渾身の一言。
「そこに魂は入るのか」

「決算発表の翌日のセブン&アイHDの株価は
強烈な売りを浴びせられた」

「おそらくヨーカ堂やセブン-イレブンで
買い物もしたことがないような
海外の投資家などから学ぶことが
どれほどあるのか」

同感だ。

日経新聞の二つの記事は、
対照的だ。

一方は鈴木敏文の言葉を、
匿名性を出し入れして書かれる。

一方は伊藤雅俊の述懐を、
掘り起こしつつ綴られる。

27億円の男が社長になるか。
それとも、
お客様を最上位にした組織が蘇生されるか。

私の答えははっきりしているが、
セブン&アイも「解」を求めておくべきだ。

命を削ってでも、
張りをもたせる会社と組織が、
つくられねばならない。

〈結城義晴〉

2022年04月29日(金曜日)

昭和の日に思うこと、そして合掌。

ゴールデンウィークが始まった。

初めは昭和の日の祝日。
昭和天皇の誕生記念日だった。

昭和生まれとしては、
微妙な心境だ。

それでも、
行く春や昭和は遠くなりにけり

絶対に誰かが、
そんな句を作っていると思っていたら、
やっぱりそっくり同じのがあったし、
類似した句は数知れず。

もちろん元の句は、
中村草田男の昭和6年の作。
降る雪や明治は遠くなりにけり

明治も激動の時代だったが、
昭和は太平洋戦争と戦後を経験して、
激動の連続だった。

しかし平成の30年間も、
さらに4年しか経過していない令和も、
激動の日々だ。

これからを担っていく人たちは、
ほんとうに大変だろう。

明日の30日と明後日の5月1日は、
土日曜日。

そして来週火曜日からの三連休が、
憲法記念の日、みどりの日、
子どもの日。

今日は白幡クラブの会計監査をした。
地元の横浜市立白幡小学校の校庭開放活動が、
今、名前を変えてクラブとなった。

私はかつてこの会長を務めていたが、
いまは年に二度のご奉仕。
会計監査と総会での報告。

少しでも地元とつながっていたい。
そんな気持ちで役目を引き受けている。

ツツジが真っ盛り。
しかし横浜は篠突く雨。

つつじ生(いけ)
其陰
(そのかげ)
干鱈
(ひだら)(さ)く女

松尾芭蕉の真骨頂。
凄い。

北海道新聞の巻頭コラム、
「卓上四季」

「死を予見することは
死を恐れることではない」
フランスの思想家モンテーニュの言葉。
「予見とは吉凶いずれに対しても
等しく行われる行為」
「危ないと判断することは
おびえではないのだから、
恥じる必要もない」「恐怖とは
判断の不足から来るものであり、
勇気の不足によるものではない」

モンテーニュは宗教戦争の中で、
危険に遭遇しても動じなかった。
「恐れがなかったのではなく、
驚愕と自失がなかった」からだ。

「冷静な判断があれば
慌てず対応できるということだ」

知床の観光船遭難事故。

冷静な判断をしなかった者の責任は、
極めて重い。

「出航判断の是非と運航体制が
問われることは間違いない」

コラム。
「モンテーニュの言葉を借りるなら、
危険を正面から認めることの方が
むしろ勇気を要するものである」

亡くなられたなかに、
28歳の小池駿介さんがいた。
㈱リオン・ドールコーポレーション取締役。

福島県立会津高校から、
慶応義塾大学商学部に進み、
東京の人材サービス会社に勤めた。
それからリオン・ドールに戻って、
3年前から取締役。

ご本人にはお会いしたことはないが、
優秀で人柄の良い青年だったようだ。

父上の同社社長・小池信介さんのご心痛、
察するに余りある。

このブログに書いていいものかどうか。
ずっと悩んでいたが、
やはり書き記しておきたい。

日本の小売産業は、
未来を担う貴重な人財を失った。

ご愁傷さまです。

心から、心から、
ご冥福を祈りたい。

合掌。

〈結城義晴〉

2022年04月28日(木曜日)

「虹が立つと市が立つ」と商人の「聖なる戦い」

ロシア軍によるウクライナの侵攻は、
まだまだ続いている。

私たちがこうして日々、
安穏と暮らしている間にも。

故瀬戸内寂聴さん。
「戦争にいい戦争はない。
すべて人殺しです」
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「愛する人と別れること、
愛する人が殺されること。
それが戦争です」

プーチンによって引き起こされた、
「プーチン戦争」

そんななかでNHKが伝える。

首都キーウ近郊のボロジャンカは、
ロシア軍によって激しい攻撃を受けた。

4月28日、町の中心部に、
「市」が立った。

食料品などを売る仮設の市場だ。

これは希望の星だ。

ボロジャンカは、
いたるところで集合住宅などの建物が破壊され、
ロシア軍が撤退したあとに、
多くの市民が遺体で見つかった。

電気や水道などインフラも大きな被害を受けた。

だからほとんどの商店が閉まっていた。

28日には、町の中心部に、
テントが並んだ。

それが仮説の市場だ。

そして食料品や生活用品が売られた。

ソーセージなどの肉製品や魚のくん製、
さらに眼鏡などまで販売された。
〈NHK newswebより〉
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「市場」は平和の象徴だ。

商業は「市」から始まった。

4月26日のこのブログで、
商業界会館がなくなる話を書いた。

その会館のファサードの2階部分に、
「虹の市」のレリーフがはめ込まれている。
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丸い緑青のレリーフ。

「虹の市」がデザインされている。

「虹が立つと、
市が立つ」

日本でも平安時代には、
虹が出ると市が開かれた。

虹は神の世とこの世の架け橋である。
天からのメッセージである。
だから市を開き、交易が行われ、
神に祈った。

商業界会館は、
その虹の市が立つ、
礎となる場を目指した。

倉本長治は、
マックス・ウェーバーに、
大きな影響を受けていた。
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
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ピューリタニズムは、
営利の追求を敵視する。
しかしその経済倫理が実は、
近代資本主義の生誕に、
大きく貢献した。

倫理と資本主義、
哲学と商売。

倉本長治の「商業革命と革命的商人」
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「われわれがいう商業革命とは、
商品の取引、消費者に対する販売の
考え方(思想)から、
そのための組織や方法を
すべて急変させることを指し、
革命的商人というのは、
その激動をみずから挺身推進する
勇気ある先駆的商人のことである」

「商業革命とは、
“大衆が損をしても商人が儲かればよい”
とする不当な伝統主義を打破して、
新しい商業モラルを
打ち立てる聖なる戦いなのである」

虹の市が立つと、
この「聖なる戦い」を思い出す。

ウクライナに幸あれ。
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最後に朝日新聞「折々のことば」
第2362回。

節制も勇敢も
「過超」と「不足」によって失われ、
「中庸」によって保たれる
(アリストテレス『ニコマコス倫理学』から)
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「栄養の過多も不足も
ともに体の健康を損なうように、
勇気のありすぎもなさすぎも
人を無謀か臆病にする」

欧米の経営者教育の核心は、
この「中庸」にある。

超過でもいけないし、
不足でもいけない。

「中庸」である。

例えば粗利益率は、
高ければいいのか。

高すぎると顧客が損をする。
低すぎると店が成り立たない。

「中庸」に設定して、
それを一定に保つのがいい。

編著者の鷲田清一さん。
「若い頃は、中庸とは
結局は妥協だと決めつけていたが、
齢を重ね日々の身動きにも
慎重を要するようになり、
適切な中間を選び取ることこそ、
断崖に挟まれた尾根を歩むように
難しいと思い知る」

そう、中庸こそ難しい。

プーチンには、
この「中庸」の教養が欠落している。

〈結城義晴〉

2022年04月27日(水曜日)

ニトリとエディオンの資本業務提携の意味合い

日経新聞「スタートアップ」

@EDGEのコーナーに、
染谷剛史さんが登場。
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社名ナレッジ・マーチャントワークスを、
ハタラックアンドパーソンに変えて、
心機一転再スタートを切った。

「アルバイト従業員の働きがいを上げたい」

小売店舗の業務改善アプリを手掛ける。
アプリ「はたLuck」は、
接客が良いアルバイトに対して、
店長が評価の「星」を送る機能をもつ。
連絡帳機能もある。

コロナ前の2019年にアプリの提供を開始。
21年には三井不動産に採用され、
各地の商業施設のテナントで使われている。
足元の導入実績は全国で約9300店舗に達する。

染谷さんの活躍はうれしい。

さて経営統合の話が連発。
「コロナはM&Aを早める」

まずは地方銀行。

静岡銀行と名古屋銀行。
包括業務提携を結んだ。
今後は資本提携も協議される。

愛知県の地銀ランキングは、
2番手が愛知銀行で3番手が中京銀行。
2024年の合併を予定する。

名古屋銀行は首位。

一方、静岡銀行は2020年に、
山梨中央銀行と包括業務提携を結んだ。
「静岡・山梨アライアンス」

小売業で言えば、
イオンのマックスバリュ東海と、
マックスバリュ中部の統合と似ている。

地銀同士の業務提携は全国で相次ぐ。
19年の千葉銀行と横浜銀行。
「千葉・横浜パートナーシップ」

かつて都市銀行は15行だった。
それが今、メガバンクによる「鼎占」となった。

地方銀行でもそれが進む。

一方、ニトリホールディングス。
会長の似鳥昭雄さんは絶好調。
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35期連続増収増益。

商人舎流通SuperNews。
ニトリnews|
エディオンと資本業務提携/8.6%の普通株式を5/13取得

エディオンと資本業務提携する。
ヤマダ、ビックカメラに次ぐ家電チェーン3位。
久保允誉(まさたか)会長兼社長も、
Jリーグのサンフレッチェ広島会長を兼ねるなど、
多彩な活躍ぶりだ。
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ニトリはエディオンの株主LIXILから、
102億円で8.6%の株式を買い取る。
その後、1.4%を株式市場の内外から買い付ける。
そして10%にもっていく。

これによってニトリは、
日本マスタートラスト信託銀行に次いで、
第2位の株主となる。

そのうえで店舗開発、商品開発、
さらに物流ネットワークの相互活用など、
協業を進める。

【結城義晴の述懐】を書いておいた。
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ニトリホールディングスは、
㈱島忠を2021年1月6日付で連結子会社とした。
ホームファッションのニトリと、
ホームセンターと家具の島忠。

これに家電のエディオンが加わる。

ニトリホールディングスの2022年2月期決算。
売上高8116億円(前年同期比13.2%増)、
経常利益1418億円(2.5%増)。
エディオンは昨年3月期、
売上高7681億円(4.7%増)、
経常利益は108.1%増の278億円。

単純合算すれば約1兆6000億円。
非食品チェーンとしては第2位に躍進する。

対する首位のヤマダホールディングスは、
2021年3月期1兆7525億円(前年同期比8.7%増)、
経常利益989億円(114.6%増)。
売上げで肉薄し、利益で凌駕する。

ヤマダホールディングスも19年12月、
大塚家具を子会社化して、
新フォーマット「ライフセレクト」を開発。

コロナは米国レベルの競争を、
日本市場で現象化させる。
寡占から鼎占、そして複占へ。 

私の予言。

ただし、巨大な2者、
マーケットリーダーと、
マーケットチャレンジャーに対して、
多様なマーケットニッチャーが、
市場のバラエティを形成して、
「小売業の森」は現代化が進む。

マーケットフォロワーが、
市場から消えていく。

小売業の森の価値観は、
規模の大小だけでは決まらない。
多様なマーケットニッチャーこそが、
未来の可能性を秘めていて、
極めて重要な意味を持つ。

これも私の見立て。

コロナがそれらを早めた。

〈結城義晴〉

2022年04月26日(火曜日)

商業界会館の売却・解体と「海には字が書いてある」

商業界会館がなくなる。
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東京都港区麻布台。
国道1号線の桜田通りが走る。
それと東京タワー通りとが交わった、
飯倉交差点の角にある、
6階建ての古いビルだ。

株式会社商業界会館が所有する。

ファサードには倉本長治の碑がある。
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店は客のためにある
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株式会社商業界は、
2020年4月2日に自己破産した。
多くの方々に多大なご迷惑をかけた。

その親会社の㈱商業界会館は、
存続してこのビルを管理していた。

その商業界会館が3月末をもって、
森トラスト㈱にこの土地と建物を売却した。

1階はロビーと受付、
2階はセミナールーム、
3階がクラブ室。
4階から6階までを、
㈱商業界がオフィスとして使っていた。

6階にはかつて、
宿泊ルームがあって、
上京した全国の商人が、
ここに泊まって勉強したり、
首都圏で仕入れ活動をしたりした。

商人の殿堂。

昭和41年(1966年)3月に、
全国の商人たちの浄財によって、
倉本長治のために建立された。
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そのすべての寄付者の名前が、
1階の八角柱に記されていた。

1階ロビーの大理石の壁には、
岡田徹の詩が刻まれていた。

小さな店であることを
恥じることはないよ
その
小さなあなたのお店に
人の心の美しさを
一杯に満たそうよ

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1階から2階への階段には、
欅板に彫られた言葉があった。

正しきに依りて
滅ぶる店あらば

滅びてもよし
断じて滅びず
新保民八
新保民八

3階クラブ室のシャンデリアは、
ヴェネチアングラスで、
長治主幹が当地を訪れて持ち帰った。

その他にも記念の品などは、
丁寧に保管されている。

一級建築士や照明コンサルタントが、
全館を再調査して、
何が残せるかが決定された。

しかし3階のクラブ室や、
4階の主幹室などは、
昭和の香りがする空間で、
そのまま移設したいくらいだ。

私はこのクラブ室と主幹室が特に好きで、
社長の時代には長い時間、佇んで、
モノを考えたり、書いたりした。

もう店子もすべていなくなって、
ビルそのものも耐震構造になっていない。
残念なことだが、
建て替えをする以外にない。
㈱会館にはその資金はない。

そこで売却の運びとなった。

私はここに30年通って仕事した。IMG_13212-448x617
手を合わせたい気持ちだ。

ありがとうございました。

今週は月刊商人舎5月号の怒涛の入稿。

毎日、毎日、パソコンに向かって、
原稿を執筆し、原稿を手直しする。
タイトルをつけて、デザインを指定し、
誌面にしていく。

その合間にブログを書く。
ブログの読者には申し訳ないけれど、
合間の執筆です。

それでも結構、力作の文章が書けたりする。

不思議です。

さて中日新聞の「中日春秋」。
東京新聞の「筆洗」と同じ文章の日がある。

昨日がそれだった。

「海には字が書いてある」
作家の立松和平さんが、
知床半島のベテラン漁師から聞いた言葉。

「天候が変わりやすく、
波の高い知床の海は
船を出すかどうかの判断が難しい」

「海を見つめ、風や潮が
どんな字やメッセージを出しているかを
読み解く。
そこから荒れ具合を予想し、
決断の材料にする」

知床半島の観光船遭難事故は痛ましい。
亡くなられた人々のご冥福を祈りたい。

正確なことはわからないが、
運航会社のマネジメントに、
原因の一つがあったようだ。

残念なことだ。

「海の字」を経験の浅い船長が読めなかった。
経営者は「海の字」のことすら無視した。

小売業やサービス業の店にも、
「客の字」が書かれている。

それを読む。

そしてマネジメントする。

ピーター・ドラッカーは言う。
「マネジメントとは、
人の強みを生かすことである」

作家・安土敏こと荒井伸也さんは、
「マネジメントとは、
簡単に言えば段取り組みのことだ」
これもいい。

故ジョン・F・ケネディの消費者の権利。
「コンシューマードクトリン」と呼ばれる。
①安全である権利
②知らされる権利
③選択できる権利
④意見を聞き遂げられる権利

店も観光船も、
安全である権利が第一にくる。

この4つの権利を死守するために、
「海の字」を読み、「客の字」を読み、
マネジメントする。

守られねば、
人の命が危うくなる。

ウクライナでは、
その命が軽々しく奪われる。
戦争が進行中だから、
そういうことが日常茶飯に起こる。

当人や家族、友人にとっては、
この上なく悲惨なことなのに、
ニュースとして知る者は、
私も含めて、なんというか、
慣れてくる。

それは人間として悲しい。
痛ましいことばかりだ。

私はそんなとき、
仕事に没頭する。

それが一番いいし、
それしかないともいえるだろうか。

人も建物も、
会社も国も、
永遠ではない。

存在している間に、
どれだけ輝けるか。

だから私の場合、
生きていることに感謝しつつ、
仕事に没頭するしかない。

合掌。

〈結城義晴〉

2022年04月25日(月曜日)

カメイドクロック内覧会の顛末と「不器用な人」

Everybody! Good Monday!
[2022vol⑰]

2022年第17週。
4月最終週から5月第1週。
つまりゴールデンウィーク。

今年はまず4月29日(金曜日)の昭和の日から、
土日曜日を含めて3連休。
5月2日の月曜日を挟んで、
3日の憲法記念日、
4日のみどりの日、
5日のこどもの日と3連休。

さらに6日金曜日を挟んで、
土日曜の連休。

2日と6日を休暇にすると、
最大10連休。

テレワークも進んでいるから、
大型連休のイメージはあるだろう。

計画通りに着々と仕事を進捗させて、
計画を超える成果を上げたい。

今日は東京・亀戸(かめいど)。
「KAMEIDO CLOCK」の開業内覧会。
「カメイドクロック」と呼ぶ。
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グランドオープンは28日(木曜日)。

「地域に住まう皆さまと共に
“亀戸”の記憶を紡ぎ、
新しい“時”を刻む生活創造拠点」

つまり「亀戸」で「時を刻む」。
だから「KAMEIDO CLOCK」となった。

喜び勇んで出かけた。
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野村不動産と野村不動産コマースの開発。
テナントは全136店舗。

初年度年商目標は200億円。
来館者数目標は1200万人。

核店舗で地下1階に入るライフは、
年商36億円。

商人舎流通スーパーニュース。
ライフnews|
563坪・36億円「ライフ カメイドクロック店」4/28開業

まず、そのライフコーポレーションの内覧。
流通報道記者会中心にカコミ取材。

皆川剛広報部長が丁寧に説明してくれた。
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ショッピングセンター内出店として、
随所に工夫が凝らされて、
とてもいい出来栄えだ。

2015年のヤオコーららぽーと富士見店が、
商業集積の店舗として話題になったが、
それとはまた違ったレイアウトの組み方で、
ライフらしさを出した。

ワインセラーはこれからのライフの特長となる。
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一通り店内を見て、写真など撮影して、
最後に幹部のみなさんと写真。

私の左から、
カメイドクロック店長の山内徳久さん、
執行役員首都圏ストア本部長の海野紀明さん、
取締役専務執行役員の並木利昭さん、
常務執行役員の荒井信一郎さん、
そして開発統括特命担当の依田宏さん。
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荒井さんは営業統括兼首都圏商品本部長兼近畿圏商品本部長。
依田さんは首都圏RE部兼首都圏施設・購買部部長。

ありがとうございました。

ライフの取材が終わると、
カメイドクロック全体のメディアツアー。IMG_26492

1階の共有スペースに集合。
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そしてゾロゾロと館内を案内してもらう。IMG_25992

まず地下1階は、
ライフのスーパーマーケットと、
食品専門店のゾーン。

次に4階に上がって、
フードコート。
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その4階のカメスポ。
e-sports studio。
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3階にはデコホームが入っている。IMG_26542

さらにファーストリテイリングのジーユー。
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2階はアパレル中心で、
ユニクロはこの2階に入居している。

1階には「ネコサポ」が入った。
ヤマト運輸に業務委託した、
インフォメーションカウンター。

インフォメーション業務はもちろん、
館内物流業務から車椅子の貸出、
落とし物・拾得物の取扱い、
ヤマト運輸の宅急便の発送・受取サービス、
クロークサービスまで行う。
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そして1階には「カメクロ横丁」の飲食店街。IMG_26602

一番最後に「やまと寿司」。
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ここで食事。
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千葉県鴨川市のやまと水産の回転寿司。IMG_26232
このショッピングセンターに来たら、
一度、試してください。

店を巡るのは楽しい。
ショッピングセンターももちろん楽しい。
今日の万歩計は1万1900歩を記した。

カメイドクロックも、
黄金週間にグランドオープンする。

その飛び石三連休連弾も、
今週末から始まる。

4月10日の朝日新聞「折々のことば」
第2346回。

やはり私のメモに残ったことば。

頭が切れたり、
器用な人より、
ちょっと鈍感で
誠実な人の方が
よろしいですな。
(奈良の宮大工・西岡常一『木に学べ』から)
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「器用な人は
苦もなく先に進んでゆけるので、
往々にして
“本当のものをつかまないうちに”
作業を終えてしまう」

「反対に不器用な人は
“とことんやらないと得心ができない”から、
要所を疎(おろそ)かにせずに熟達する」

編著者の鷲田清一さん。
「画家の場合だとたしかに、
手がそつなく動く、
その器用さを不自由と感じ、
あえて利き手とは逆の手で
筆を持つ人がいる」

私の下手な筆字もそれだ。

しかし、商売には実は、
不器用な人が向いている。

では、みなさん、
今週も、仕事を楽しもう。
Good Monday!

〈結城義晴〉

2022年04月24日(日曜日)

「はじまり」は 「終わり」を知る者によって開かれる。

「明日、また明日、また明日と、
小刻みに一日一日が過ぎ去って行き、
定められた時の最後の一行にたどりつく」

「きのうという日々は
いつも馬鹿どもに、
塵泥(ちりひじ)の死への道を
照らして来ただけだ」

「消えろ、消えろ、束の間のともし火!
人生はただ影法師の歩みだ」

「哀れな役者が短い時間を
舞台の上で派手に動いて声張り上げて、
あとは誰ひとり知る者もない」
ウィリアム・シェークスピア。
『マクベス』木下順二訳。
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この台詞。
まるでウラジーミル・プーチンのようだ。

スコットランドの将軍マクベスは、
勇猛果敢だが小心な一面もある男。
魔女の暗示にかかり、妻と謀って、
主君ダンカンを暗殺して王位に就く。
しかし内面と外面の重圧に耐えきれず、
錯乱して暴政を行い、
貴族や王子らの復讐に倒れる。

シェークスピアは不思議なことに、
1564年の4月23日に生まれ、
1616年の4月23日に没した。

「プーチンの戦争」は正念場を迎えた。
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対ドイツ戦勝記念日の5月9日までに、
ウクライナ東部ドンバス地方の制圧を完了し、
一定の「戦果」として誇示したい意向のようだ。
しかしウクライナ軍は、
国際社会の軍事支援を受けて、
態勢が増強されている。

小心のプーチンの内面外面の重圧は、
いかばかりか。

朝日新聞「折々のことば」
第2266回は今年1月18日版。

これも印象に残る言葉だった。
メモ帳に残っていた。

「はじまり」は
「終わり」を知る者によって
開かれる。
これは絶望の底に潜む
希望です。
〈姜(きょう)信子〉

『忘却の野に春を想う』
歴史社会学者・山内明美との往復書簡。
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姜信子は1961年、横浜市生まれの作家。
1986年『ごく普通の在日韓国人』で、
ノンフィクション朝日ジャーナル賞受賞。
2017年『声 千年先に届くほどに』で、
鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。

山内明美は1976年、宮城県南三陸町生まれ。
宮城教育大学教育学部准教授。
歴史社会学・農村社会学を専攻。
東日本大震災以後は、
郷里の南三陸で農村調査を行っている。

ふたりの往復書簡は、
現代のひずみを描き出す。

「“復興”したとされる三陸沿岸の人影も
疎(まば)らな人工的な景色を見て、
ハンセン病療養所のそれをつい思う」
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「すべてが閉ざされ、断たれた後、
宗教や芸能は
発生時のいわばゼロ地点へと
いったん押し戻され、
そこから種を蒔(ま)くように
首をもたげるはずだ」

ヨハネの福音書の「一粒の麦」と同じだ。

「はじまり」は、
「終わり」を知る者によって
開かれる。

プーチン戦争の終わりを知る者は、
プーチンではない。

したがって、はじまりを開く者は、
プーチンではない。

明日、また明日、また明日と、
一日一日を小刻みに闘う、
ゼレンスキーに違いない。

そして、
多くの死を悼みつつ乗り越えた、
絶望の底に潜む希望は、
必ず成就するだろう。

さあ、私たちも、
明日、また明日、また明日と、
小刻みな一日一日の仕事に精を出そう。

〈結城義晴〉

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