朝から自宅で原稿を書き、
昼すぎに商人舎オフィスに出て仕事。
月刊商人舎5月号を責了する。
「勝って兜の緒を締めよ」
「負けて褌を締めてかかれ」
今月の原稿では、
こんな言葉を対比的に使った。
日本語は面白い。
施行75年目の憲法記念日。
憲法記念日天気あやしくなりにけり
〈大庭雄三〉
天気も怪しくなったが、
憲法論議も怪しくなりにけり。
憲法記念日何はあれけふうららなり
〈林 翔〉
ゴールデンウィークの中の憲法記念日。
何はあれ、今日、うらら。
それでいいか。
憲法記念日罐詰にもある裏表
〈佐藤正賢〉
缶詰にも裏表がある。
憲法にも裏表あり。
裏表の論議あり。
それでいいのか。
憲法記念日鴉は黒かむらさきか
〈星野麥丘人〉
これも同じ。
カラスは黒色か紫色か。
読む気せず憲法記念日の社説
〈井出和幸〉
そこで各紙の社説。
今年はタイトルのオンパレード。
それだけで中身はおおよそ見当がつく。
「人権守り危機に備える憲法論議を深めよ」
〈日本経済新聞〉
「憲法記念日に
浮足立たず、向き合う時だ」
〈京都新聞〉
日経と京都新聞は、
向き合いつつ、論議を深めよ。
「憲法施行75年
激動期に対応する改正論議を」
〈読売新聞〉
読売は改憲派だ。
故渥美俊一先生は、
読売の記者だったが、
改憲派だったのだろうか。
聞きそびれた。
「揺らぐ世界秩序と憲法
今こそ平和主義を礎に」
〈朝日新聞〉
「危機下の憲法記念日
平和主義の議論深めたい」
〈毎日新聞〉
朝日、毎日は「平和主義」を主張する。
「きょう憲法記念日
平和の理念今こそ大切に」
〈北海道新聞〉
「どうしん」はいつも平和理念を謳う。
それがブロック紙として、いい。
「憲法記念日に考える
良心のバトンをつなぐ」
〈中日新聞・東京新聞〉
発行部数は実は、
中日新聞・東京新聞が第3位だ。
そして結構、リベラル。
その社説。
「民主主義は”現在”の多数派が
少数派の意見を踏まえつつ権力を行使します。
それに対し、憲法を力にする立憲主義は
“過去”が未来を拘束します」
「例えば”過去”が保障した基本的人権は、
“現在”の多数派がたとえ奪おうとしても、
奪うことができません」
「人間は愚かで移ろいやすいゆえに、
憲法原理は変えられないようにしているのです」
これ、護憲派の主張。
日本国憲法の基本的な考え方は定着した。
国民主権、平和主義、基本的人権の尊重。
これを変える意味はない。
しかし戦後の憲法制定時の想定を、
はるかに超える状況が生まれた。
新型コロナウイルス感染拡大は、
「個人の自由」と「社会の安全」の、
トレードオンを要求している。
大震災などの災害、テロリズム、
そしてロシアのウクライナ侵攻。
とくに「プーチン戦争」は、
「法と正義」に基づく国際秩序を揺るがしている。
憲法9条が定める戦争の放棄、
そして戦力および交戦権の否認は、
日本の国土と国民を守る防衛力強化と、
どう整合性をとるのか。
ここでもトレードオンが求められる。
カラスは黒か紫かと、
どちらかに決めることではない。
両方だ、と言っていい。
立法府たる国会での真摯な論議は、
不可欠だし、
私たち国民も一人ひとり、
この考察を深め、
議論に参加すべきだと思う。
さて、「読む気せず」と詠んだ俳人は、
どの新聞を読んでいたのだろう。
日本新聞協会の2021年12月下旬の調査。
一般の日刊紙97紙の総発行部数は、
3065万7153部。
前年に比べると179万7643部減で、
これは5.5%の減少。
20年前の2001年は4700万部、
10年前の2011年は4400万部。
3000万部割れ目前。
高度経済成長期の1966年に、
3000万部台に乗った。
そして1990年代末は5000万部超のピークだった。
不思議な同期現象だが、
日本の総合スーパーのピークは、
1997年だった。
その後、新聞も総合スーパーも、
現在まで下降が続く。
部数減、売上げ減が止まる気配はない。
しかしそれでも新聞は、
3000万部も読まれている。
こちらのほうが不思議か。
私も新聞は、
ネットで読むことがほとんどだ。
そのネットで知る世界の動向、
ウクライナの情勢。
「何はあれけふうららなり」とはいかない。
〈結城義晴〉