2022年5月最後の日。
この1カ月も、
時が行くのが早かった。
ゴールデンウィークの日曜日の5月1日。
このブログで丘浅次郎氏の言葉を紹介した。
1868年(明治元年)~1944年(昭和19年)。
高等師範学校教授の動物学者。
「初等教育においては、宜(よろ)しく、
信ずる働きと疑う働きとを、
いずれも適当に養うことが必要である」
信ずる働きと疑う働き。
「疑う理由の有ることは
何所(どこ)までも疑い、
信ずべき理由を見出したことは
確(たしか)にこれを信じ、
決して疑うべきことを
疑わずに平気で居たり、
また信ずべき理由の無いことを
軽々しく信じたりすることの無い様に、
脳力の発達を導くのが、
真の教育であろう」
(「疑いの教育」より)
疑う理由があるときには、
どこまでも疑う。
信じるべき理由が見つかったら、
確かにこれを信じる。
疑うべきことを、
疑わずに平気でいる。
また信じるべき理由がないことを、
軽々しく信じたりする。
これらの行為がなされないように、
自分の脳の力を養い、鍛える。
つまり盲信や盲従をしない。
自分の頭で論理的に考察する。
この1カ月も、
この通りのことが、
次々に起こった。
例えばTwitter上では、
元大阪府知事・大阪市長の橋下徹さんと、
東京外国語大学大学院教授の篠田英朗さんが、
ウクライナ問題に関して激しく論争している。
これも「信ずる働きと疑う働き」で、
自分で判断する。
それが大事だ。
さて6月。
値上げラッシュに、
大きな波が来る。
日経新聞の記事。
「食品高、店頭じわり浸透」
しかし、サブタイトルは、
「小売価格への転嫁、欧米より緩やか」
原材料高を受けた食品の値上げ。
店頭価格ではすでに、
21年1月比の22年4月の平均価格が
食用油で14%、マヨネーズも13%ほど上昇。
一方、冷凍食品メーカーは、
各社が1割前後の値上げを表明したが、
店頭では5%ほどの上昇にとどまっている。
メーカー間の競争が激しいうえに、
スーパーマーケットの特売の目玉商品となる。
それらが理由だ。
6月1日からは、
即席麺、アイスクリーム、調味料などが、
次々に値上げされる。
だから5月末の現場は、
売価変更作業に追われたことだろう。
日清食品のカップヌードルは、
希望小売価格(税別)193円から214円へ。
森永製菓のチョコモナカジャンボは、
140円から150円に。
アイスクリーム11品目を値上げする。
7月以降も値上げは続く。
山崎製パンが菓子パン、食パンで、
今年2度目の値上げに踏み切る。
秋にはビールや清涼飲料。
帝国データバンクの調査では、
6月以降の値上げ品目は、
3615品目に上る。
22年通年では8000品目を超え、
年間の平均値上げ率は12%。
それでも総務省発表の4月の消費者物価指数は、
生鮮食品を除いて前年同月比2.1%増だった。
これは2015年3月以来の2%台。
一方、4月の国内企業物価指数は10%増だったが、
それに比べると上昇率は小さい。
「食品メーカーの値上げも、
そのまま転嫁されたものは少ない」
現時点の日本経済は、
「需要不足」の状態にある。
需要が供給を下回る。
アメリカは需要超過の状態にある。
だから米国ほど価格転嫁が進みにくい。
そのかわりに彼の地では、
プライベートブランドが隆盛している。
世界最大手の食品製造業ネスレは、
2022年1~3月期に、
製品価格を前年同期比5.2%引き上げた。
日本は賃金上昇が乏しく、
物価が上がると、
消費者マインドが低下する。
だから店頭価格に反映されにくい。
内閣府の消費者態度指数は、
3月まで3カ月続けて前月を下回った。
4月も前月比0.2ポイントの上昇にとどまった。
「消費者の節約志向が強まれば、
それを感じ取った小売り側が
店頭価格の引き上げに慎重になる」
日経新聞の結論。
「店頭価格がどこまで上昇するかは
見通しにくい状況だ」
ここでも信ずる働きと疑う働き。
自分で考え、自分で行動する。
お役に立てれば幸いである。
この特集の中で、
㈱ヤオコー会長の川野幸夫さんは強調する。
「カットスロートコンペティションは、
これからです」
疑う理由があるときには、
どこまでも疑う。
信じるべき理由が見つかったら、
確かにこれを信じる。
日経の記事も、
私のブログさえも、
盲信や盲従をしない。
自分の頭で論理的に考察する。
それが知識商人の態度だ。
〈結城義晴〉