結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年05月24日(火曜日)

成城石井の「株価売上高倍率」と「四季プロジェクト長崎離島編」

日経新聞電子版。
「成城石井はユニクロになれるか」

田中陽編集委員が書く。

㈱成城石井は、
ローソンの完全子会社である。

ローソンはその成城石井を、
上場させようと検討に入っている。

上々の際に重要になるのが、
時価総額だ。

時価総額は、
「株価×発行済株式数」。

株価は上場してみなければわからないが、
その予測はできる。

報道ベースでは成城石井の時価総額は、
2000億円超と見込まれる。

売上高は1092億円、店舗数は約170店。
純利益は73億円で、
利払い・税引き・償却前利益のEBITDAは、
約137億円。

ローソンは2014年に成城石井を買収した。
550億円だった。

当時の売上高は約544億円、
店舗数は約120店、
純利益は約20億円。
EBITDAは約2.4倍になった。

田中陽さんは、
この時価総額2000億円の根拠を明らかにする。

エクセレントスーパーマーケットのヤオコー。
2022年3月期の連結売上高5360億円、
時価総額は2584億円。

時価総額を年間売上高で割った指標が、
PSR(株価売上高倍率)だが、
ヤオコーも0.5倍程度。

そこで唐沢裕之ローソン上級執行役員の評価。
「食のブランド化に成功している
唯一無二の存在」

詳細は日経電子版を読んでほしいが、
セントラルキッチンから提供される惣菜、
すなわち「食の製造小売り」が挙げられる。

田中さん。
「強力な商品を数多く持つと、
それを目がけて店を訪れる消費者が増える」

「この循環が、
“成城石井らしさ””世界観”を
醸し出している」

さらに成城石井の店舗戦略は、
店舗規模と品ぞろえを立地によって最適化する。
そして各店舗のROI(投資利益率)を上げる。

成城で生まれた成城石井。
創業者の石井良明さんが去り、
経営権は幾度もファンドの手に渡る。
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「そのたびに社内は動揺したが、
“成城石井らしさ”を守ろうと、
逆に組織が一丸となった」

「いつしか独自の進化を遂げ、
経営権が変わろうとも
“らしさ”に磨きをかける風土が養われた。
見渡せば唯一無二の存在に」

今、PSRが1倍を上回る小売業。
ファーストリテイリング、ワークマン、
丸井グループ、エービーシー・マート。
スーパーマーケットには見当たらない。

ファーストリテイリングは、
売上高の3倍超の時価総額を誇る。
上場の初値は公募価格の2倍強。
時価総額は売上高の3倍強だった。

田中さんは最後に言う。
「成城石井はユニクロになれるだろうか」

私は 上場のあとが大事だと思う。

商人舎流通スーパーニュース。
成城石井news|
「四季プロジェクト」で長崎離島の商品55品を5/20から販売

その成城石井が、
「四季プロジェクト〈長崎離島>編」を開始した。
長崎県の離島の食材など約55品を、
成城石井197店舗全店で販売する。

「四季プロジェクト」は、
成城石井創業95周年記念の企画。
“食” を通じて日本の “四季の魅力” を届ける。
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その中で長崎離島編がスタートした。

日本各地の四季折々の旬の食材を取り上げ、
さまざまな商品やレシピとして紹介する。

一昨年の10月29日。
離島振興地方創生協会理事長の千野和利さんと、
成城石井社長の原昭彦さんが会った。
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千野さんは元阪急オアシス社長・会長。

それから話はずんずんと進んで、
昨年、原さんは自ら長崎離島を訪れた。
それが「四季プロジェクト」につながった。

成城石井の社風は、
この「スピード」である。

石井良明、大久保恒夫と受け継がれて、
最後にプロパーの原昭彦が、
「艱難の挙句につくり上げた社風」と、
評していいだろう。

朝日新聞「折々のことば」
第2388回。
くだものが 
やさいになったり、
やさいが 
くだものになったりして、
うられます。
だから、
たいせつなのは 
おいしくなること!
(なかやみわ『やさいのがっこう』から)
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編著者の鷲田清一さん。
「双子のイチゴは野菜の学校で、
おいしい野菜になるために
いろいろ習うが、
自分たちは果物かもと思い直し、
果物の学校に移る」

「そして野菜は畑、
果物は木の上というふうに、
どこで育ったかで区別されると教わる」

「でもお店では味ごとに
一緒に並べられる」

イチゴは考える。
「所属よりも生き方が大事なんだ」

成城石井は、
自分らしい生き方を目指している。

〈結城義晴〉

2022年05月23日(月曜日)

「冷蔵庫vsテレビ」と「民主主義」の勝利

Everybody! Good Monday!
[2022vol㉑]

2022年第21週。
そして5月第4週。

ジョー・バイデン米国大統領来日。
バイデン来日
日米関係、日米中関係、
日米韓関係、そしてウクライナ。

この79歳の第46代大統領が、
そして世界最大の民主主義国家が、
人類の未来に大きな責任を負っている。

われわれの日本国も、
同じように人類の未来に責任をもつ。

それが強く認識されたバイデンの来日だ。

一方、ウクライナに侵攻したロシア。
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5月12日の日経新聞コラム「大機小機」
タイトルは、
「冷蔵庫はテレビに勝てるか」

「テレビと冷蔵庫の戦い」
ロシアの民意をめぐるたとえだとか。

「テレビ」は国営放送が垂れ流す、
官製プロパガンダを象徴する。
「冷蔵庫」は人々の生活実感を表す。

「冷蔵庫がいっぱいのうちは
人々はテレビの言うことを信じるが、
冷蔵庫の中身が乏しくなれば、
官製情報を疑い始める」

現在はまだテレビが勝っているか。

しかし西側による制裁が長引けば、
生活必需品の不足や値上がりが顕著になる。
そうすれば、冷蔵庫が巻き返す。

テレビ対冷蔵庫の構図は、
言論統制が厳しい中国にも当てはまる。

北京冬季五輪開幕式当日の2月4日。
習近平主席とプーチン大統領は、
共同声明で西側を強く非難していた。
「民主主義保護の名目で
他国に内政干渉している」と。

コラムニスト。
「民主主義にも山ほど欠陥はあるが、
民意をないがしろにし、
独裁者の面子(メンツ)のために
多くの人の命が失われたり、
理不尽な都市封鎖で
自由を奪われたりする体制よりは、
はるかにマシだ」

「ここは旗色を鮮明にしておきたい。
がんばれ冷蔵庫」

「頑張れ冷蔵庫」と訴えても、
冷蔵庫の中身が乏しくなって、
冷蔵庫の重要性が高まるように頑張れ!
というのだから淋しいことだ。

その意味では日本はまだまだ、
大抵の家庭で冷蔵庫の中は豊かだ。

それを小売業が支える。

街には「冷蔵庫替わり」の業態も満載だ。

だからだろうか、
テレビの言うことを盲信する傾向がある。

冷蔵庫満載であっても、
自分で調べ、自分で考える、
そんな国民でありたい。

それが真の民主主義だ。

そしてわが小売業、サービス業は、
民主主義の中で花開く。

今日は午後から、
横浜商人舎オフィスに、
林廣美先生、ご来訪。
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惣菜マーチャンダイジングの第一人者。
85歳。

林の前に林なく、
林の後に林なし。

その林先生と3時間近くも、
話し合った。
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月刊商人舎6月号で、
たっぷりと語ってもらう。

ご期待ください。
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今週は明日の火曜日もオフィスに来客。

水曜日は午前中、オンライン会議。
午後は岐阜に出かける。

そして木曜日1日、
レンタカーを借りて店舗巡り。

金曜日の5月27日は、
伊藤園陳列コンテスト最終審査会。

その間にも、
冷蔵庫とテレビの闘いは続く。
ロシアで、中国で、
日本で、アメリカで。

そして私は民主主義が、
勝利することを信じている。

「民主主義は
最悪の政治形態と
いわれてきた。

他に試みられた
あらゆる形態を除けば」
It has been said that democracy is the worst form of government except all the others that have been tried.
〈ウィンストン・チャーチル〉
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かつて荒井伸也さんが言っていた。
サミット㈱社長・会長。
「スーパーマーケットは、
デモクラティック(民主的)な組織です」

だから冷蔵庫の中を豊かにすることができる。
顧客を賢くすることもできる。

では、みなさん、今週も、
デモクラティックに。
Good Monday!

〈結城義晴〉

2022年05月22日(日曜日)

「ポスト・コロナ」が見えた企業と見えない企業

日曜日の日経新聞一面トップ記事。
「外食4年ぶり出店増」

「外食主要各社が2022年度に
店舗数を大幅に増やす」
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この記事は45社の比較。
新規出店数の合計は1220店。
18年度の1396店をピークに、
21年度まで前年割れを続けていた。

一方、閉店数は、
22年度に486店の計画だ。

20年度1762店、21年度875店。
コロナ禍による不採算店の閉店が一巡する。

出店数から閉店数を差し引いた店舗増加数も、
コロナ禍前の19年度の2倍の水準。

計画通りになれば、
年度末の店舗数は45社で2万2134店。
19年度末の2万1616店も上回る。

店舗数が増加傾向を示すだけでなく、
業態も変わってくる。

「持ち帰り業態」が強化される。
中食のテークアウトである。

半面、居酒屋業態は新規出店は増えそうもない。

日本フードサービス協会の調査。
フードサービス協会21年度
売上高と客数、客単価の年度別前年比。
2020年はひどく落ち込んだが、
2021年は持ち直す傾向を見せた。
さらに2022年度には浮上しそうだ。

外食産業の売上高は、
21年12月から22年3月まで、
4カ月連続で前年同月を上回った。

この外食の増加は、
内食に影響を与える。

それでも日経の調査も協会の調査も、
外食産業の総体を表してはいない。

厚生労働省の調査で、
飲食店営業施設数の中の、
一般食堂・レストラン等施設数は、
2015年度が最近のピークで81万9022店。
その後、19年度に79万3261店と、
80万店の大台を切って、
20年度78万2120店、
21年度77万5377店と、
減り続けている。

外食産業の大企業や新興企業には、
ポスト・コロナ時代が見えてきたが、
それ以外の大半の飲食店はもう、
減る一方だと考えていいだろう。

ただし外食産業の特長は、
新陳代謝だ。

毎年、1割の店が閉店し、
1割の店が新規開店する。

内食産業も中小企業をはじめとして、
閉店や企業閉鎖などがあった。

こちらは新陳代謝がわずかしかなくて、
全体に企業数と店舗数が減り続けている。

フードサービス業の復活は、
スーパーマーケットなど内食産業に、
大いに影響を与える。

外食は巣ごもり大不況だった。
内食は巣ごもり特需に見舞われた。

その特需の恩恵を受けた業態も、
故田島義博学習院大学院長が言ったように、
この間の「膨張」か「成長」かによって、
大きく色分けされる。
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「技術が革新され、
マネジメントの質が高まる。
その結果、会社が大きくなる。
それが成長である」

「一方、革新はないけれど、
売上げが増え、会社が大きくなる。
大きくなるほどに経営は難しくなる。
これは膨張である」

イノベーションを起こせず、
マネジメントの質も高まらないのに、
売上げ規模や店数が増えると、
「大きくなるほどに経営は難しくなる」

実に厳しい指摘だが、
本質を突いている。

朝日新聞「折々のことば」

自分は
知っていると考えるのは
自惚(うぬぼれ)にすぎません。
……自信は
自分が
何を知らないか
というかたちで

知っていることです。
(戸井田道三『生きることに○×はない』から)
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「ものごとを知れば知るほど、
このことが分かっていなかったとか、
それがまだ不明だというぐあいに、
疑問はむしろ増えてゆく」

「科学者はその意味で
“自分が何を知らないか”を、
よく知っている」

戸井田は能芸の評論家。

「とすれば、
“生きるためには死を知っていることが
自信となる”のではないか」

死を考えて、考え抜く。
その端緒でも知ることができれば、
それが生きるために自信となる、
ということだろうか。

革新やイノベーションも同じだろう。

何がその本質かは知らないけれど、
イノベーションでないものはわかる。
だから「まだまだ」と、
イノベーションを追求する。

何を知らないかという形で知っている。
それがイノベーションにつながっていく。

ドラッカーは書いている。
「イノベーションとは、
顧客にとっての価値の創造である」

「それは科学的・技術的重要度ではなく、
顧客への貢献によって評価される」
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ドラッカーだけではない。
シュンペーターも、
クリステンセンも、
ヒントを示している。
示唆を与えてくれる。

しかし彼らの言葉だけでは、
本質を知ることはできない。

だから私たちは、実践するばかり。
“Practice comes first!”である。

そこからわずかな自信がわいてくる。

〈結城義晴〉

2022年05月21日(土曜日)

「復職とリスキリング」の「時間に対する愛情ある配慮」

「復職おめでとう。
いや、ありがとう、ですね」

オイシックス・ラ・大地の「復職式」
高島宏平社長の感謝の言葉。
高島宏平

日経新聞の巻頭コラム「春秋」

同社には育児休業から復帰する社員を、
歓迎する式がある。

今年は6回目で、
男女12人が復職した。

女性は産休からの復職、
男性は育休からの復職。

単なる儀式ではない。

目的は「復帰者の不安を取り除く」ことだ。

社長や先輩社員から、
助言や失敗談が披露される。
「仕事も家事も満点ではなく合格点で良し。
部屋なんて散らかっていてもOK――」

いい試みである。

高島さんは中学高校の後輩だ。
「紳士たれ」が校風だったが、
それがこういった形で生きている。

私にとっても、とてもうれしい。

産業医の矢島新子さんの著書、
『ハイスペック女子の憂鬱』
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新書のベストセラー1位になっている。

この本で矢島さんは、
セクハラなどとともに、
「復職恐怖症」を挙げる。

小学校や中学・高校のときには、
長い休みのあとに学校に行くのが、
ちょっと嫌だった。

全員が同じように休んでいたのに。

それが仕事となって、
自分だけ職場を離れていたとなると、
「復職」は本当に憂鬱なことだろう。

会社や職場には、
そういった憂鬱を取り除く、
温かさが必要だ。

オイシックス・ラ・大地の復職式も、
その温かさの表れの一つだ。

同じ日経新聞の「大機小機」
タイトルは、
「リスキリングは企業の責任」

Reskillingは、
職業能力の再開発、再教育のこと。

コラムでは「一般に」と断って、
「デジタル人材への転身に必要なスキルを
再教育で身に付けること」

しかし小売業、流通業では、
デジタル再教育は可及の問題だ。

外部からスカウトするだけでなく、
ITやDXの再教育をして社内で登用する。

これこそリテールのリスキリングだ。

岸田文雄首相が英国で講演して、
「リスキリングに力を入れる」と力説した。

コラム。
「企業が従業員のために取り組めば、
リストラを最小限に抑えて、
レガシー部門から成長部門へ
労働移動ができる」

終身雇用の慣行が根強い日本企業の、
「解雇なき構造改革」と奨励する。

しかし産業レベルだけではなく、
企業内でこそリスキリングは、
必要だし、可能だと思う。

コラムニストは、
望ましいリスキリングのあり方は、
浸透しているのか、と警告する。
「オンラインの学習サービスを契約したり、
資格取得の学費を補助したりする企業は多い」

「しかし、いつどう学ぶかは
従業員任せになっていないか」

「帰宅後に、週末に、
疲れた体にむち打って
机に向かわなければいけないのか」

その通り。

ジャパン・リスキリング・イニシアチブ。
一般社団法人。

その説明では、
海外の成功例の底流には、
「リスキリングは業務の一部」の発想がある。

例えばスウェーデンでは、
「国と企業、労働組合が連携し、
従業員が時短を取得して
リスキリングに取り組む企業に対し、
政府が給与や受講費を支援している」

コラム。
「リスキリングを果たした従業員に
ふさわしい仕事があるかどうかも重要だ。
努力したのに望む職場で働けないなら、
モチベーションが続かない」

「年功序列の人事制度を改革し、
従業員にキャリアアップの道筋を
提示できるかどうかが問われる」

一方、経営者からは警戒感の声。
「スキルを身に付けた従業員が転職してしまう」

コラムは「本末転倒」と切って捨てる。

「デジタル人材が
流動化する動きは止められない。
デジタルトランスフォーメーションを進め、
やりがいと成長機会がみえる企業になれば、
入れ替わりに中途採用で
よい人材が入ってくるはずだ」

これは正しい。

しかし、
DXに取り組んでいない企業が、
DXに取り組むために、
デジタル人材を採用しようとしても、
人は集まらない。

「卵が先か鶏が先か」である。

そのなかでリスキリングは、
重要な役割を担う。

例えば産休や育休の間に、
リスキリングの一環として、
デジタルの知見を高めてもらう。

そんな考え方はどうだろう。

私が教授をしていた立教大学でも、
社会人が自分の時間を工面して、
大学院で学んだ。

イオンからもマルエツからも、
日本マクドナルドからも、
結城ゼミ生が生まれて、
彼らはリスキリングを試みた。

ピーター・ドラッカーは、
『経営者の条件』の中で語っている。
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「私の観察によれば、
成果を上げる者は仕事からスタートしない。
時間からスタートする」

リスキリングは突き詰めると、
企業としての職場としての、
そして知識商人としての、
「幸せの時間管理」の問題である。

月刊商人舎2019年2月号。
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ドラッカーは言う。
「おそらく、
時間に対する愛情ある配慮ほど、
成果を上げている人を
際立たせるものはない」

高島宏平の「復職式」にも、
岸田文雄の「リスキリング」にも、
立教の結城ゼミにも、
「時間に対する愛情ある配慮」が、
なければならない。

〈結城義晴〉

2022年05月20日(金曜日)

「マシン」によるサービスと「人間」によるサービス

今日は東京・御茶ノ水。

井上眼科。

1881年、駿河台。
井上達也が済安堂医院をつくった。
それが始まり。

井上は東京大学眼科学教室の創設者だ。

現在、井上眼科は、
視覚を眼球だけでなく、
脳の仕事として捉える。
だから脳内病変による視機能異常や、
視神経、眼球運動障害、
さらに眼位異常に関する疾患までを診る。

原因不明の視力低下や目の不調など、
理由がわからない問題に対しても、
診療を行う。

第七代院長の井上達二は、
神経眼科の領域で大きな功績をした。

「眼」の総合病院を確立するために、
「患者さま第一主義」を理念に掲げる。

東邦大学医学部の富田剛司教授が、
定年退職でこの井上眼科に移籍した。

そこで私もこちらに来ている。

新お茶の水ビルの18階から20階までが、
井上眼科クリニック。

北東側に東京の街が広がる。IMG_29032

ビルの合間に東京スカイツリー。
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真下に湯島聖堂。
江戸時代の儒学の殿堂。
五代将軍徳川綱吉が建立した孔子廟堂。
のちに昌平坂学問所となった。
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東側を見下ろすと、
神田ニコライ堂。
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左右の目の視野検査と眼底検査、
そして眼圧検査。

「結城さんの右目の命は、
あなた自身の命より短い」
富田教授に言われている。

それでも左目がある。

私の人生は右目の疾患とともにある。

帰りに地下鉄千代田線で、
明治神宮前原宿で乗り換え。

駅の構内にアートの展示。
竹田双雲作「希望」
46歳の書道家。
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双雲のメッセージ。
「人は弱い
弱さがあるから
知るから 認めるから
前に進める
思いやりを持つことができる

人は、希望を抱き続けることで
それぞれの希望が繋がっていくことで
弱さを強さに変換することができる

希望が希望を生み
人を強くしてゆく」

ステンドグラスは、
野見山暁治の「いつかは会える」
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野見山は101歳の洋画家。

明治神宮前駅。
通過するときにでも鑑賞してください。

さて、「ほぼ日」の糸井重里さん。

昨日の「今日のダーリン」
いつか出てくると思っていたが、
やっと書いてくれた。
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「この頃、
スーパーマーケットだとかコンビニで、
“セルフレジ”というものが増えてきた」

老人は述懐する。
「ぼくもやってみたことは
何度かあるのだけれど、
どうも慣れないし
なんとなく妙な心持ちがあって、
よほど混んでるのでないなら、
人のいるレジに並んでいる」

「だが、やがてすべては、
この”無人化”という方向に
なっていくのだろうなぁ
という諦めもある」

私は思う。
すべてが無人化にはならない。

「そんなことを思っていたら、最近、
近所の2つのハンバーガー屋の
注文カウンターに、
“自動オーダー機”みたいなものが設置された」

「いままで、
“えーっと、あれとこれと…”みたいに
人に向かって注文をしていた同じ場所に、
“注文を受け付ける機械”があるのは
変な感じだ」

「幸い、目の前におねえさんがいるので、
“人に注文してもいいですか?”とお願いした」

「もし”機械のほうにお願いします”と
返事されたら、
やや不満な顔を見せつつも、
従ったにちがいない」

糸井は否定的だ。

「まぁ、なぁ。
マシンをお客が操作して注文してくれたら、
人のやりそうなミスもなくなるし、
人件費も減らせるし、
さらには”アルバイト募集”の手間も
コストも減らせる」

「だから、
ハンバーガー屋の注文受付などは、
当然のように
ロボット化していくんだろうと思う」

「すでにラーメン屋は
自販機で食券を買ってるもんなー」

しかしセルフサービスのメリットは、
コスト削減だけではない。

そっちがいい、という人がいるし、
意外にもそんな人は多いのだ。

糸井はまだこだわる。
「ただ。なぁ。
こういう未来って、
望んでいたことだったっけ、と」

「人間がいなくてもいい仕事を増やすことには、
いいこともたくさんあるのは理解するとしても、
“だれが望んでいたんだっけ?”
という思いは残る」

それもわかるけどね。

「患者さま第一主義」の井上眼科も、
徹底的なセルフサービス方式を採用して、
受診証の発行から会計まで、
すべてセルフだ。

ただし医者や看護師、検査技師は、
他の病院よりも圧倒的に多い。

老人の患者も多いけれど、
文句を言う者はいない。

マシンによるセルフと、
人間によるフォローと、
両方の組み合わせだ。

その組み合わせの塩梅に、
その店やその病院の哲学が現れる。

糸井の最後の言葉。
「”合理的”の他に
“合喜的””合好的”とかがあるよなぁ」

そう、それらが両方あって、
その組み合わせも、
選択の自由である。

その自由は、
人類の進化と希望につながると、
私は思うけれど。

糸井さんはセミセルフなんて知らないだろうな。

〈結城義晴〉

2022年05月19日(木曜日)

「とくし丸」稼働1000台超えと万代渋川店の「普段の力」

朝日新聞DIGITAL。
16時44分のニュース。
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ロシア国防省の発表。
「ウクライナ兵771人が新たに投降」

マリウポリの製鉄所アゾフスターリ。
これで「アゾフの鉄(スターリ)」から、
「退避した人数」は合計で、
1730人になったとの発表。

ああ。

これもロシア国営メディアの記者の指摘。
「製鉄所に約2500人がいた」

全体の半数以上が「退避」したことになる。

国際武力紛争は本来、
「国際人道法」と「慣習国際人道法」によって、
規則が規定されている。

それは主に、
1949年のジュネーブ条約と、
1977年のジュネーブ諸条約第一追加議定書、
そして1907年のハーグ条約。

傷者、病者、難船者および捕虜、
これらの救済にあたる衛生要員と宗教要員、
並びに文民は、保護される。

文民とは、
紛争当事国、占領国の国民でない人たち。

そしてウクライナとロシアはともに、
1949年のジュネーブ条約の締約国となっている。

本来、捕虜や傷者、病者は、
保護される。

ロシアがこの条約を守るか。
問題はそこにある。

楽観はできない。

商人舎流通スーパーニュース。
とくし丸news|
5月に稼働1000台突破/2021年年間流通総額212億円

住友達也さんが創業した㈱とくし丸。
その移動スーパーが、
5月に稼働台数1000台を突破した。

こちらは目出度い。
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現在は、
オイシックス・ラ・大地㈱の連結子会社。

2021年は年間220台の増車。
年間流通総額は212億円。
これは前年比140%増。

日販平均は10万円を超えて、
年間を通して安定的に推移している。

今後は買い物支援にとどまらず、
新サービスの開発に向けて、
協業企業の募集も行っていく。

1000台のとくし丸は、
買物難民のお年寄りが顧客の中心だ。

逆に言えば、
この客層のマーケティングに関して、
とくし丸は高い精度をもっている。

経済産業省の推定では、
日本の買物難民は、
2021年段階で約700万人。
それは今後も増加の一途をたどる。

しかも今のところ彼ら彼女らは、
ネットスーパーの顧客ではない。

とくし丸のマーケティング活用の、
可能性は広がるばかりだ。

それが1000台を超えた。

さて、大阪の万代渋川店。IMG_27172

入口の一丁目一番地は、
「徳用フェア」
IMG_27152

これが普段の売場だ。
IMG_27162

右手の葉物は瑞々しい。
IMG_27182

農産の島陳列。
平台のエンドは、
キウイ1玉98円。
IMG_27192

中玉スイカ1玉980円。
IMG_27202

そしてキャベツ1玉198円。
IMG_2721w2
良いものを安く。
品質も良いし、鮮度もよい。

それが万代のコンセプト。

水産売場のトップは、
湯ダコ生食用100グラム198円。IMG_27222

そして特大タチウオ。
SKUを増やして大量に販売する。IMG_27232

そのタチウオ「お造り」が補充された。
これで1パック399円。
IMG_27242

丸物は天然真鯛、レンコ鯛、金目鯛、
さらに黒メバル、カマス。
IMG_27262

切り身は天然真鯛が399円、
真アジが200円。
IMG_27272

店舗中央に惣菜売場。
IMG_27282

弁当はよりどりセール。
2パック580円。
IMG_27302

私はこれを買って食べた。
水産部門がカットした握り寿司。
「魚万」のブランドをつけて、
9カンで980円。
IMG_27292

畜産部門の牛肉売場。
IMG_27322

国産牛カタ赤身ステーキ(交雑種)、
100グラム548円で450グラム。
それをレジで3割引き。
IMG_27332

日配部門の最後はパン売場。
工場直送のアルヘイム「クインシー」。
アルヘイム㈱は万代の子会社だ。
IMG_27312
いつ訪れても万代は変わらない。
売りたい商品、買いたい商品が、
明確に打ち出されている。

それが確認できる。

とくし丸の1000台超えと、
万代渋川店の「普段の力」。

不断の努力は報われることを示している。

〈結城義晴〉

2022年05月18日(水曜日)

万代知識商人大学院のマネジメント講義と大討論会

万代ナレッジマーチャントカレッジ。
第7期に入って、これまで180人が修了。

今期の受講生は次期役員候補。
部長クラスがずらりと揃った。
売ることに関するプロたちである。

したがって位置づけも呼称も、
「万代知識商人大学院」とした。

いつものように、
万代本社会議棟の大会議室に、
7期生と役員が一堂に会した。

朝9時から夕方6時まで、
終日、講義が行われる。
IMG_2685-1

第2回目のテーマは、
ヒューマンリソースマネジメント。

私は最後列で講義の準備。IMG_2686-1

進行は海野正敏さん。
人事部マネジャー。
IMG_2689-1

第1講義は、結城義晴。
「戦略的人間力経営」
IMG_2694-1

いつものように、
マネジメントのピラミッドを示し、
ヒューマンリソースマネジメントの
位置づけを確認する。
IMG_2702-1

第1講義では、
人間力経営の持論。
心の力・頭の力・技の力の「掛け算の力」。

さらに人材マネジメント論のフレームワーク、
その三段階の進化。

そしてマネジメント理論の変遷まで、
基本的な考え方をガイダンスした。
IMG_2698-1

第2講義は河野竜一取締役。
人事・総務部を管掌する。
IMG_2706-1

労務管理の重要性を、
労働災害の具体的な事例をもとに、
2時間の講義。IMG_2707-1

労働環境改善は企業の社会的責任である。
経営トップに求められる考え方と手法を、
丁寧に語ってくれた。
IMG_2710-1

昼食後の第3講義は、再び結城義晴。
ドラッカーとミンツバークの最新の考え方、
日本のマネジメント教育の課題、
ドラッカーのマネジメント、
意思決定の手順とポイント、
さらにコミュニケーションの要点を、
一気呵成に講義した。IMG_2734.-1

ピーター・ドラッカーは、
マネジメントの意思決定を重視する。

このとき意見の対立を促す。
そして言う。
「意思決定は全会一致で
なされるようなものではない」
「意見の対立を見ない時には、
決定を行わないこと」

つまり「集団思考」を避けるということだ。
IMG_2736-1

そして今日の講義では、
新たな講座を試みた。

役員が会場の前にロの字型に並んで、
万代が抱える課題について、
それぞれの見解や考え方を、
ディスカッションするというもの。IMG_2742-1
意思決定のプロセスを、
シミュレーションする講座だ。

私がコーディネートして、
私の問題意識を、
次々に投げかける。
それに対して担当役員が答える。
その回答に対して、ディスカッションする。
IMG_2746-1

受講生からも、
現場を踏まえた質問や意見が、
投げかけられる。IMG_2749-1

役員たちは、
それに対しても丁寧に答える。
ときには、受講生に逆質問もする。IMG_2750-1

双方向で意見を交わし合う。

役員候補を養成するには、
取締役レベルの考察が必須だ。

それをシミュレーションによって学ぶ。

阿部秀行社長と不破栄副社長は、
黙って聞いている。
IMG_2765-1

3時間にわたって、
万代の求める人材から、
チラシ販促、EC、DXなど、
7つのテーマで率直に議論し合った。IMG_2762-1
最後に私は担当役員に簡単に2つの質問をした。

万代知識商人大学として、
初めての試みだった。
㈱万代としてもこれまで、
こういった局面はなかった。
だから成果はあった。
課題も浮き上がってきた。IMG_2768-1

ディスカッション講義を終えて、
不破副社長からの総括と指摘。IMG_2791-1

経営者としての不破理論を披露し、
タスクフォースやプロジェクトの、
必要性を述べてくれた。IMG_2788-1

最後は、阿部社長の総括。

今日のテーマについて、
一つひとつ、
根拠となる数値を示して
議論の方向性を整理した。

そして万代の現時点の戦略を総括した。

さらに経営者としての視点と考え方を、
わかりやすく講義してくれた。

失礼ながら、私は感服した。

経営トップは誰よりも真剣に、
課題の本質を考え抜いている。
IMG_2795-1
阿部社長にとっても、
自分の考え方を伝える、
いい機会になったと思う。

7期生たちは真剣に聞き、記録する。
自分が質問したり、
意見を言ったりした内容を、
評価し、正してくれる。
IMG_2798-1
これがコミュニケーションである。

まだまだ受講生はぎこちなかった。
遠慮があったし、
臆するところがあった。

しかし議論はどんなときにも、
正々堂々となされなければならない。

ドラッカーは意見の相違を重視する。
ある案だけが正しくて、
その他の案はすべて
間違っていると考えてはならない。

自分は正しく、
他の人は間違っていると、
考えてもならない。

なぜ他の者は、
意見が違うのかを明らかにすることから、
スタートしなければならない。

最後に会場に残った役員のみなさんと写真。IMG_28592

そして阿部さんと不破さん。
IMG_E28542
ありがとうございました。

実験的な講義だったが、
成果が見えたと思った。

誰よりも、
ドラッカー先生と上田惇生先生に、
感謝したい。

〈結城義晴〉

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