2008年2月1日に、
株式会社商人舎を設立した。
社名をつけるとき、
迷いに迷った。
しかし「舎」をつけたいと考えていた。
商業の世界には、
戦前から「商店界」という雑誌があった。
倉本長治は28歳で、
その「商店界」編集長に就任した。
その商店界を去って、戦後、
倉本は周辺の支持者たちに押されて、
「商業界」をつくった。
商業の世界を革新し、
その世界に貢献する会社。
だから雑誌や単行本とともに、
セミナーなどを開催して、
人々を啓蒙し、
商業を産業にしようと試みた。
私はその商業界に入社した。
そして代表取締役社長となった。
しかし商店界も商業界も、
「界」だった。
私は商業界を辞して、
商人舎をつくった。
人々が「集うところ」にしたかった。
商店界は「店」を対象とした。
商業界は「業(なりわい)」に注目した。
商人舎は「人」に焦点を当てる。
資本主義時代の次に来るのは知識時代だ。
ピーター・ドラッカーの時代観。
私たちは、
商人を知識商人に変えて、
その知識商人が集う「舎」をつくる。
それが商人舎だ。
第18回商人舎ミドルマネジメント研修会。
その最終日。
2日目の講義から設問が出る。
白部和孝講師の計数問題、
井坂康志講師のドラッカー・マネジメント、
そして結城義晴の産業論・商人論。
ここから6問の設問が出る。
全員が前のめりになって、
電卓をたたき、ペンを走らせ、
真剣にテストに向き合う。
30分の緊張のときがが終わると、
肩の荷が下りて、一気に場は和む。
椅子にもたれて、机に伏して、
束の間、寝てしまう受講生もいる。
派遣してくださった企業の皆さん、
頑張りましたよ。
そして3日目の講義は、
高野保男講師の作業システムとLSP。
タクト企画代表取締役。
作業基準、作業区分、
作業量と作業時間を明らかにして、
作業改善や生産性向上に取り組む。
そのためにどうアプローチしたらよいかを、
わかりやすく講義してくれる。
高野講師は国内を駆けめぐって、
コンサルティング活動をしている。
現場主義の指導者だ。
昨日大分からやってきたと思ったら、
今日再び大分に向かう。
現場の問題や自分の課題を解決するために、
受講生たちは真剣だ。
講義後にはQ&Aの時間も設けてくれた。
一人ひとりの質問に、
自分の経験を披露しながら、
核心を衝いた回答をしてくれた。
まずはじめに、
理解度判定テストの解答を示しながら、
それに付随する問題を解説する。
私はこれをとても重視している。
理解しているか、納得しているか。
それが何よりも大切だ。
理解し、納得していなければ、
実行に移せないからである。
テストの解答を解説したら、
リーダーシップに関する講義。
それからチームマネジメントの手法。
チームマネジメントは、
ホールフーズやウェグマンズが、
早くから採用して成果を上げている。
コロナ禍中の2020年9月には、
いよいよウォルマートが導入した。
150万人の米国アソシエーツの組織を、
180度転換する試みだった。
昼食をはさんで、
最後の1時間の講義。
ミドルマネジメントへのメッセージ。
「流通経営戦略論」のエッセンスを概説し、
そのあとはサービス・イノベーション。
「ホッケースティックの関係」と、
「間接部門の顧客志向」は、
絶対に忘れないでほしい。
最後の最後は、
「マザーテレサ」の言葉と、
「自ら変われ」。
そして「祈り」。
受講生のさらなる健闘を祈念して、
すべての講義を終了した。
終了後はすぐに、
受講生たちは、
熱海駅と湯河原駅に向かう。
私も手を振って、
それを見送る。
知識商人の集うところ。
商人の舎。
集まり散じて人は変われど
仰ぐは同じき理想の光
母校の校歌が頭をよぎった。
知識商人が集うところ、
まだまだやめられません。
〈結城義晴〉