日本の政治は停滞している。
参議院選挙が公示され、
選挙運動が始まったが、
選択肢が少ない。
いや、ない。
小売業やサービス業でも、
店の選択肢、品揃えやメニューの選択肢が、
少ない状況が生まれると、
顧客は買い物が面白くなくなり、
消費は停滞してしまう。
飲食店に関しては最近、
どの店も味がまずくなった。
あくまでも個人の見解であるけれど、
原材料の高騰や物流費などの上昇が、
値上げを招き、
その値上げを抑えるために、
また原材料のグレードを落とし、
それが味の停滞を生んでいる。
こんなときにも、
変わらぬ味を提供できる店は、
人気が上がる。
さて日経新聞電子版の記事。
「経済制裁のパラドックス」
客員編集委員の脇祐三さんが書く。
「なぜロシアへの打撃は限定的か」
「国際的な制裁は、
本質的には政治的な手段、
ポリティクスである。
狙い通りの経済的な効果が
あるわけでは必ずしもない」
「対ロシア制裁では、
制裁を科す側も経済的な打撃を受ける。
その点で、過去の経済制裁とは異なる
“制裁のパラドックス(逆説)”が続く」
記事はタイトルのままで、
それほど新鮮味はない。
「国際的な経済制裁によって
制裁対象国が行動を変えた例は、
ほとんどない」
「兵糧攻めのように相手国の政権を
じわじわ締め上げようとしても、
物資が不足してくると、
独裁政権に近い人々は物資を得られる半面、
一般の人々は苦しむ
という展開にもなりやすい」
「結果的に相手国の政権による統制の強化、
独裁政権の延命につながる要素もある」
これが一般的な「制裁のパラドックス」だという。
サダム・フセイン政権のイラクにも、
制裁が科されたが、
この制裁のパラドックスが起こった。
ロシアのウクライナ侵攻に対しても、
国際的な制裁が続いているが、
それはどう違うのか。
「過去の制裁では、
制裁を発動する側への経済的な打撃は
ほとんどなかった」
「だが、今回は制裁を発動し、
強化する欧米で、
経済の逆風が強まっている」
結論は
「ロシアへの強い制裁は、
ロシアの力による一方的な現状変更を許さず、
ウクライナへの連帯を示すうえで、
必要なポリティクスだが、
欧米にとっての政治的なコストも
決して小さくない」
つまらない結論だが、
「制裁」にはもともと、
パラドックスが伴うものだ。
それを承知で制裁を加える。
武力による攻撃に、
経済による制裁で対峙する。
制裁を加える側にも、
痛手が生じる。
それも民主主義の理屈で制裁行動をとっても、
“非民主主義”の上のほうは何とも感じない。
これこそ「民主主義のパラドックス」だ。
今日は横浜商人舎オフィス。
ランチは岡野町の中華「萬興楼」。
この店の味もちょっとだけ落ちたか。
みなとみらいのランドマークタワーが見える。
午後3時に、
井上淳さん来社。
5月に日本チェーンストア協会副会長就任。
これまでは14年間、同協会専務理事だった。
1967年(昭和42年)にこの協会が設立されて、
ずっと専務理事は経済産業省から迎えてきた。
しかしその専務理事が副会長になった例はない。
井上さんご自身の貢献が大きかったし、
これからもその力が必要だと認められたからだ。
今日はその井上さんと対談。
月刊商人舎7月号で、
この閉塞感への対応を語り合う。
ご期待いただきたい。
最後に日経新聞「私の履歴書」。
今月は矢野龍さん。
住友林業の社長・会長を歴任し、
いま、最高顧問。
今日は「住友精神 無私の姿勢」
この住友精神がいい。
矢野さんが社長に就任して、
会社の屋台骨を支えるものが欲しいと考えた。
そして住友精神に辿りついた。
「住友の家祖、住友政友や、
その後、明治時代に総理事を務めた
広瀬宰平、伊庭貞剛らの先達が作り上げ、
長く受け継がれてきた事業精神は、
平たく言うと、
事業は自分の利益のためだけではなく
天下国家、国民のために
なるものでなければいけない、
そして、一見、相反するように思える
“公”と”私”は、実は
一つのものなのだという教えだ」
「自利利他公私一如(いちにょ)の精神」
「僕は、この住友の事業精神を、
住友林業の社員が理解し易いように工夫し、
経営理念と行動指針を自分で書いた。
社員手帳に明記して、
社内で主管者会議と呼んでいる、
年に2回の幹部会の場などで浸透させた」
「こんな経営理念といったものは、
往々にして美辞麗句の
仏作って魂入れずで終わってしまいがちだが、
僕は自分から率先して
経営判断のよりどころにした」
「社長になった1999年から、
会長を退いた2020年まで、
21年間続けた」
ロシアも中国も、
ウクライナもその制裁側も、
「自利利他公私一如」ならばいいのだが。
それは無理か。
しかし現在の閉塞感に向き合うには、
住友精神は拠り所となる。
〈結城義晴〉