梅雨は明けても花は咲く。
アガパンサス、紫君子蘭。
台風がやってこようとも、
花は咲く。
ヒャクニチソウ。
ラベンダーは香りもいい。
7月最初の日曜日。
自宅の部屋に籠って、
原稿と取り組む。
来週の日曜日は、
第26回参議院議員通常選挙の投票日だ。
即日開票される。
しかしどうも緊張感がない。
6月最後の日経新聞コラム「大機小機」
硬骨漢の一直さんが書く。
「新型コロナウイルス禍、
ロシアのウクライナ侵攻、
急速に台頭したインフレ懸念――」
「世界はいま、歴史上まれにみる
厳しい”複合危機”に遭遇している」
「その渦中で参議院選挙がスタートした」
ところが、
「緊張感が驚くほど感じられない」
私もそう思っていたから、
思わず膝を打った。
「緊張感がない」と語るのは、
自党候補の応援に多忙な衆院議員。
「実際、街に出ても熱気が伝わってこない」
なぜなのか。
コラムニストは、
岡崎久彦著『戦略的思考とは何か』を引く。
「日本人は肌で感じないと理解しない。
抽象的、論理的思考が苦手だ」
現在の世界を見ると、
「グローバル経済の分断で
世界中の人々が
急激なインフレに苦しんでいる」
今回の選挙でもそれぞれの党の公約の、
トップに来るのは物価対策だ。
有権者の最大の関心もそこにある。
「物価高はモロに肌を刺激する」
「消費税を全廃すれば、
毎日が10%オフだ」
そんなことを言う党首も出てきた。
それでも盛り上がらない。
「自民党がエネルギーや食糧などの
価格抑制に焦点を当てているのに対し、
立憲民主党など野党の多くは
消費税減税を主張する」
一直さんはストレートだ。
「緊急時の対策に基幹税を充てるのは
いかにも無責任だ」
私も同じ考えだ。
「野党の対案が空論では
論争になるはずもない」
これが「緊張感のない参議院選」の理由である。
「もっと気になるのは、
核を保有する専制国家によって世界が
分断される時代に入ろうとしているのに、
この国をどんな理念で
どの方向に引っ張っていくのか、
根本の政策論争に熱が入っていない点だ」
岸田文雄首相の「新しい資本主義」も、
掛け声だけだ。
「将来を展望し長期戦略を描くには、
肌で感じられる目の前の事象から一歩離れ、
歴史の大きなトレンドを抽象化し、
論理を構築する、
哲学的思考が要求される」
小売業、流通業、サービス業にも、
この点は必要だし、
欠けている。
コラムニスト。
「岡崎氏が喝破したように、
詰め込み主義の教育の影響もあってか、
日本人はどうもここが弱い」
「ロシアの暴挙で
日本の安全保障政策のあり方が、
にわかに切実な国民的課題に
浮かび上がってきている」
自民党は、
「自衛力強化を目指して
9条の修正を含む憲法改正に取り組む」
これは自民党の結党以来の路線である。
一方の野党側からは、
「観念論を排した、
具体的防衛政策論が聞こえてこない」
コラムニスト。
「論戦の底が浅いのだ」
これにも同感。
与野党ともに底が浅い。
テレビ討論などを見ると、
その底の浅さが露呈している。
結局はこうなる。
「政治家は国民を超えない」
コラムニストの結論。
「論理的な骨太の論点を提示できない
政治家はもとより、
目先にとらわれがちな
わたしたち国民の責任も大きい」
情けないことだが、
いずれも同感せざるをえない。
国民がそれぞれの専門分野で、
政治家を超える論理性をもつ必要がある。
その自分の専門性をもとに、
逆に政治と政治家を監視し、
歴史観のしっかりした候補者に投票し、
骨太の論点を深める政治家を、
つくっていかねばならない。
だから私は、
小売流通業に関して、
目先にとらわれない、
骨太の論点を提示したい。
いつも言っている。
「すぐ役立つことは、
すぐに役立たなくなる」
私と商人舎は、
その役目を担っていると、
思っている。
〈結城義晴〉