横浜商人舎オフィスに出社して、
ZOOMによるミーティングを二つ。
ひとつはTrue Dataの面々。
この3年間の購買データをもとに、
商品動向を子細に分析した。
いい内容だった。
月刊商人舎8月号に掲載する。
もうひとつは、
食品メーカーの担当者へのインタビュー。
山本恭広商人舎編集長が話を聞くのを、
オンラインで傍聴していて、
最後にカメラをオンにして、
ミュートを解除して、
顔を出して、あいさつした。
ありがとうございました。
それ以外は、
1日中、リテール・マーケティングを考えた。
小売業のマーケティングの本質。
倉本長治の「商売十訓」。
これを精神論と批判する人がいる。
しかし第一訓。
「損得より先に善悪を考えよう」
これはドラッカーの言うインテグリティである。
精神論ではなくて、哲学である。
第二訓。
「創意を尊びつつ良いことは真似ろ」
これがイノベーションである。
イノベーションは精神論では生み出せない。
第三訓。
「お客に有利な商いを毎日続けよ」
「有利な」というところは、
かつては経済性を意味した。
つまり生活マネジメントを支えるもの。
現在は生活エンターテインメントを含む、
「お客に有利」でなければならない。
それが小売業マーケティングの本質だ。
この点においては、
断じて揺るぎはない。
小売業や流通業における、
著名なコンサルタント諸氏の論を引いて、
もちろん具体的な名前を出して、
このあたりを説明すると、
実にわかりやすいものになる。
それも必要なのだと考えた。
この夏、単行本の第一稿に取り掛かる。
大筋はできているが、
その私だけの登頂ルートが、
ちょっとだけ見えてきた。
ありがたい。
どんな本も原点にもどって始める。
それが正しい道だ。
さて流通SuperNews。
オーケーnews|
JCSIの2022年度第1回調査スーパーマーケットで1位獲得
恒例のリサーチだ。
公益財団法人日本生産性本部の、
サービス産業生産性協議会の調査。
JCSIと称する。
「日本版顧客満足度指数」
その2022年度第1回調査。
スーパーマーケット業種において、
オーケーが顧客満足度第1位を獲得した。
「スーパーマーケット”業種”」というのが、
まず変だがそれはさておいて、
この調査の6指標すべてで、
オーケーは1位。
⑴顧客期待
⑵知覚品質
⑶知覚価値
⑷顧客満足
⑸推奨意向
⑹ロイヤルティ
素晴らしい。
しかし今回の2位は業務スーパー、
3位はドン・キホーテ、
4位はイオン。
失礼ながら、
2位に業務スーパーが入ってくると、
「?」の気持ちが湧いてくる。
調査は必ず調査対象と調査母数を、
確認しなければならない。
その調査対象が今回は、
たった7企業・ブランド。
これではほとんど意味がない。
来年もこの程度ならば、
流通SuperNewsでは取り上げない。
ちなみに2019年は対象が22企業だった。
そして結果は1位オーケーだったものの、
2位コストコ、3位万代、
4位は同スコアでヤオコーとトライアルだった。
対象企業がどんどん参加を止めていって、
7企業・ブランドとなった。
調査期間は2022年5月18日~5月27日、
回答者数は2万5167人、
(順位に含む64企業・ブランドの回答者は2万0986人)
調査方法は、
インターネットモニターを活用した2段階調査。
設問数は約110問。
オーケーの指標は変わらないようだが、
それ以外に伸びた企業があるかもしれない。
オーケーの総合スコアが77.1で、
業務スーパーが71.5。
回答者の設定や設問そのものにも、
どこか問題があるかもしれない。
ちなみにコンビニエンスストアは、
1位セイコーマート77.3、
2位セブン-イレブン71.2、
3位ミニストップ67.6。
調査対象は6企業・ブランドで、
日本フランチャイズチェーン協会の、
毎月の販売調査の7チェーンから、
ポプラが欠けただけ。
これならばスーパーマーケットよりも、
断然、信頼性が高いし、
妥当だと思える。
だからセイコーマートの評価は素晴らしい。
赤尾洋昭さん、おめでとう。
日本生産性本部は知る人もいたし、
一緒に仕事をしたこともあるけれど、
このスーパーマーケット調査は、
再考したほうがいいだろう。
朝日新聞「折々のことば」
第2450回。
人としては善にほこらず
物と争はざるを徳とす。
他にまさることのあるは
大きなる失なり。
〈兼好法師『徒然草』(小川剛生訳注)から〉
法師は説く。
「自分の長所を誇ったり
人と徒(いたずら)に競ったりしないこと。
人より優れてあるのはむしろ大きな欠点だ」
「格式の高さや才能の豊かさなどを
意識する姿はなんとも見苦しい」
「真に優れた人は
おのれが欠くところを知っているので、
慢心することがない」
「比較ということが
嫉妬や羨望(せんぼう)を促し、
自意識を煽(あお)って、
人としての品位を落とす」
現代の小売業の競争では、
ここまでは意識できない。
「物と争はざるを徳とす」
しかし「他にまさること」を、
誇示ばかりしているのは、
日本的ではないのだろう。
少なくとも吉田兼好的ではない。
自分からは誇示しないけれど、
自分の顧客からは、
断然、支持されている。
その奥ゆかしさも、
小売業やサービス業では、
いいもんだと思う。
そんな店を好む顧客は、
多いはずだ。
「私の店」と思えるからである。
〈結城義晴〉