「セルコレポート」が届いた。
セルコグループの機関誌。
私の連載は、
「艱難は商人を鍛える」
今回は「第七回・日下静夫の正札販売」
戦後の商業界運動の指導者。
岡山県津山市の故日下静夫さん。
「日本一の下駄屋」と称された。
その艱難の物語。
この連載は結構、時間をかけて書く。
手に入る方は読んでみてください。
今日は月刊商人舎11月号の責了日。
毎月毎月、深夜までかかるが、
今回は比較的順調な進行だった。
最後に山本恭広編集長と写真。
満足げな顔つきです。
ご期待ください。
「ほぼ日刊イトイ新聞」の巻頭エッセイ。
糸井重里の「今日のダーリン」
「うまくいってない店」を論じる。
「うまくいってない店というのを、
たくさん見た。
やっぱり地方都市をうろうろしていると、
よく見る」
「いかにもうまくいってないことが、
目に見えてしまう。
壊れた建物、むやみに多い張り紙、
整理されない什器、
曇ったガラス、汚れたままの床…。」
「それをだれかが
注意することもないのだろう」
糸井さんにこう言われると、
自分のことのように恥ずかしくなる。
でも、糸井さんは優しい。
「その店にはきっと
いくつかの事情があるのだ」
「人手がないとか、
お金がないとか、
やる気を失ったとか、
要するに儲かってないだとか」
「でも、同じくらいのきびしい条件のなかでも、
わるくない感じの店だってある」
「どこがちがうのか、どうすればいいのか」
そこで門外漢ではあるけれど、
糸井さんが考えてくれた。
「無料、あるいは
安上がりにやれることを、
するかしないか」
ん~、安上がりでやれること、か。
「客の来ないひまな時間が
たっぷりあるのだから、
それを修理や掃除にあてても、
おそらく無料なのだ」
そこで伊藤雅俊さんを思い浮かべる。
イトーヨーカ堂創業者。
「お客さまは来てくださらないもの」
そう思って、ひたすら誠実に商売をする。
糸井さんの思いついたことは、
伊藤さんに通じる。
「政治がわるいも経済が無策だも
言っててもいいが、
店の掃除をするのはじぶんの仕事なのだし、
お客がくるように考えたり
動いたりするのもそうだ」
「昔から、よく先生やら親やらが、
“挨拶をちゃんとしなさい、
清潔を守りなさい、
謙虚でありなさい”と
説教をしてくれてたけれど、
その理由が、ものすごく
よくわかるようになった」
「それは、
ものすごく安いコスト(ほぼ無料)で、
いろんなことを
うまくいかせる方法だったのだ」
これは「基本の徹底」である。
「”あとは自由でいいから”と付けたら
もっと理解できる」
こちらは「変化への対応」である。
応用編である。
そう、イトーヨーカ堂の社是。
「基本の徹底と変化への対応」
糸井さん。
「商いをしている人だったら、
痛いほどわかると思うのだ」
「ほとんど無料でできるいくつかのことを、
素直にやる」
どんな仕事もどんな業務も、
実際は人時(マンアワー)がかかっている。
だから無料ではない。
しかし基本の徹底は、
毎日毎日繰り返すから、
商人ならば必ず熟練してくる。
そして短時間でできるようになる。
野球選手ならば、
キャッチボールが当たり前にできるように、
サッカー選手なら、
ドリブルやパスは楽にできるように、
商売や仕事の基本は、
どんな商人もできるようになる。
しかし、
プロ野球選手のキャッチボールはすごい。
プロサッカー選手のドリブルやパスも神業だ。
3Sの「整理・整頓・清掃」、
あるいは5Sの「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」。
これが自然にできる。
神業のようにできる。
それが基本のプロだ。
糸井さん。
「これが、人ならモテちゃうし
店なら儲かっちゃう秘法だと、
ぼくもいままで
わかってなかったんだよなー」
「あ、じぶんが老人になってからわかる
“秘法”なのか⁉」
謙虚だなぁ。
糸井さんは。
最後に自分の言説が説教臭いと気づいて、
「老人の説教だから許してくれ」と、
付け加えた。
しかしこれは老人の説教ではない。
商売の鉄則だ。
それがイトーヨーカ堂の社是であり、
セブン&アイ・ホールディングスの大原則だ。
あらためて糸井さんから指摘されて、
そんな店があることに、
ちょっと恥じ入りもしたが、
「基本の徹底」のプロになることは、
むしろ他の世界の人たちに誇れるものだ。
「複合危機」だとか「六重苦」だとか、
そんな時代だからこそ、
「基本のプロ」であるための日々の精進は、
大切である、貴重である。
月刊商人舎もそれをベースにしていたい。
糸井さんの指摘、
ありがたい。
〈結城義晴〉