いつのまにか、
桜の葉が茶色くなっている。
雲はあるけれど、
さわやかな11月初旬の土曜日。
月刊商人舎11月号を責了して、
今日は心身ともにゆっくりと静養。
夕方、自由が丘に出かけた。
いつもの花屋。
モンソーフルールの付近は、
パリの街角のようだ。
いつもながら、
カラフルなプレゼンテーション。
花屋の隣はアパレルショップ。
RAWLIFE(ロウライフ)は、
大人の男のためのセレクトショップ。
2階は美容室。
その隣はS357PLUS。
こちらは小さいサイズ専門のセレクトショップ。
身長150cm前後の小柄な女性向け。
ここも2階は美容室。
無印良品は2棟に分かれている。
ギャップは円形の店構え。
見上げると、月に叢雲。
今日の土曜日は、
スポーツ日和。
私は体を休ませながら、
テレビ観戦日和。
居間のソファに寝転んで、
なかばうたた寝しながら、
あちこちとチャンネルを変えて、
スポーツ番組を観る。
東京六大学野球の早慶戦では、
わが早稲田が劇的なサヨナラ勝ち。
監督は小宮山悟。
早稲田のエースピッチャーから、
プロ野球のロッテに入団して活躍し、
大リーグにも行った。
もう57歳になった。
試合は3対4と逆転されて迎えた9回裏。
2死満塁の場面。
松木大芽外野手は、
2ストライクと追い込まれた。
そこからライト前へ、
ポトリと落ちる適時打。
いわゆるポテンヒット。
2点が入ってサヨナラ勝ち。
この最終節で勝ち点を取れば、
慶応の優勝を阻むことができる。
一方、
サッカーJ1リーグは最終節。
全9ゲームが行われて最後の最後に、
横浜F・マリノスの優勝が決まった。
2年連続優勝の川崎フロンターレと、
デッドヒートを演じて、
3年ぶり5度目の優勝。
このところ神奈川のチームは強い。
川崎と横浜が覇権を制し続けている。
それに代わってサッカー王国静岡からは、
とうとうJ1チームが消えた。
そのJ2に落ちる清水エスパルスから、
日本代表にが選ばれていて、
今月下旬にワールドカップが開催される。
ゴールキーパーの権田修一選手だ。
日経新聞のスポーツ欄。
意外かもしれないが、
いい記事が多い。
連載「サッカー人として」は、
カズこと三浦知良が書いている。
11月4日のタイトルは、
「ゴールに惑わされずに」
元日本代表のフォワード。
今、JFLの鈴鹿ポイントゲッターズに所属。
JFLは日本フットボールリーグの略で、
このリーグはJリーグの、
いわば4番目のクラスだ。
カズは今、55歳の現役選手だが、
10月30日にティアモ枚方との一戦で、
ゴールを挙げた。
カズは述懐する。
「サッカーにおいて、ゴールは
良くも悪くもすごいエネルギーを持っている」
「チームがどんなに悪くても、
ゴール一つでびっくりするくらい生き返る」
商売では「売上げはすべてを癒す」。
中内功さんの言葉だ。
「残り1分でゴールが入って1-0なら、
それまでの89分間も帳消し、
みんな幸せになってしまう。
それほどの劇薬」
野球にはホームランがある。
しかし野球はポテンヒットでも、
点が入る。
「サッカーって、
数字に出にくいよなと常々思う」
「野球ならヒットを打てばヒット1本。
ではサッカーで
“ヒット”にあたるものは何かとなると、
答えが出ない」
「ゴールに入らないと形に残らないとなり、
数字として目に見えるものは
ゴールと勝利だけ、となっていく」
商売で数字になるのは、
売上げだけだ。
顧客の満足も喜びも、
数字として残るのは、
売上げだけだ。
「でも、それにとらわれて
”点を取りさえすればいい”ととらえるのは
僕は好きじゃない」
商売でも、
売上げさえ上げればいいと考えるのは、
私も好きではない。
「55歳でのあの1得点に、
惑わされることなく僕はやりたい」
「変わらず次のゴールへ、
今まで通り良い準備を。
特別でないことの積み重ねが、
特別なことにつながるというかね」
昨日このブログで書いた、
「基本の徹底」をカズも言う。
特別でないことの積み重ねが、
特別なことにつながる。
商売も同じだ。
そして仕事はみんな同じだ。
55歳得点を挙げた枚方戦も、
コーナーキックの直前に途中出場した。
そしてチームがペナルティキックを得て、
カズがゴールを決めた。
「「ほんの1プレー後だったら
PKの場面に僕はピッチにおらず、
得点もなかった」
「ちょっとしたボタンの掛け違えのように
いい具合でもたらされたゴール。
入るはずだったのに入らなかったゴール」
ピーター・ドラッカーが言う「予期せぬこと」。
「サッカーを生きていれば
どちらにも、何回も出くわすよ」
そしてワールドカップに一言。
「ワールドカップメンバーについても、
招集されておかしくないのに、
選ばれるはずだったのに、
選ばれなかった選手たちがいる」
「その悔しさを察すると、つらい。
でも、だからといってサッカーまでもが
終わるわけじゃないんだ」
「今、32歳の選手は4年後に36歳。
うらやましいよ、
僕より20歳も若いのだから」
カズは体が動く限りの現役、
いわば生涯現役を目指す。
「現役をやめるのは死ぬときかも」と言う。
私の仕事はカズのハードさに比べると、
ひどく楽なものだが、
それでも生涯現役のつもりだ。
「それぞれの次に向かってほしい。
返り咲くチャンスはいくらでもある。
W杯だけが日本代表でもないのだから」
カズは優しい。
一筋にサッカーを続けているから、
優しくなれたのだ。
「続けていってほしい。
形として現れた現実だけに、
惑わされずにね」
「いちばん大切なことは、
目に見えない」
星の王子様のひとこと。
私も拙著『コロナが時間を早める』の、
最後に使った。
そう、形として現れた現実や数字だけに、
惑わされてはいけない。
〈結城義晴〉