FIFA World Cup2022 Qatar。
サウジアラビアがアルゼンチンに勝ち、
ジャパンがドイツを破り、
イランまでウェールズに勝利した。
世界からアジアが見直されている。
東洋が再認識されている。
朝日新聞「折々のことば」
2日連続で二人の哲学者の対談録から、
言葉を拾う。
白川静92歳、梅原猛77歳の時の対談。
甲骨・金文文字は、
人が神と心を交わす手段であった。
それを読み解く白川に、
梅原が古代人の心を尋ねる。
そして、東洋の精神を語り合う。
「折々のことば」第2567回。
どっかで
狂狷(きょうけん)でなかったらね、
まともな人間ではないよ。
(白川静)
「孔子も言うように、
人は中庸であるのが一番だが、
それを通せるものではない」
西洋思想の根幹にあるのが、
「中庸」だと思うし、
孔子の思想も「中庸」に重きを置く。
しかしそれを貫き通せるものではない、
と白川は指摘する。
「そこで次にめざすべきは
その反対、”狂狷”だ」
「狂」は、
「進みて取る人」。
「狷」は、
「死んでも決してそんなことはしません」と
潔癖を守る人。
「極端に走らぬことと、
径(みち)をまっすぐ歩むこと」
「人はそんな”振子運動”をしながら進むのだ」
東洋から生まれた精神のあり方が、
「狂狷の振子運動」である。
「折々のことば」第2568回。
先生は年々偉くなってる。
(梅原猛)
編著者の鷲田清一さん。
「本来なら、
師が弟子に向けることばであろうに、
哲学者は畏敬(いけい)する大先輩・白川静に
面と向かいこう言い放つ」
「たしかにこの大学者は
立ち止まることを知らなかったが、
梅原も自身の視点を固めてゆく中で
ますますその凄(すご)さを
理解できるようになったはずだ」
白川静。
1910年、福井県生まれ。
順化小学校卒業後、大阪へ出て、
成器商業学校夜間部に通う。
立命館大学文学部夜間部に入学。
在籍のまま立命館中学校教師を経て、
1954年に立命館大学教授。
「興の研究」によって、
京都大学で文学博士の学位を受ける。
2004年、文化勲章受章。
2006年、96歳で没。
学ぶ環境にはなかった。
しかし学問と研究を極めた。
古代漢字研究の第一人者。
「漢文世代」の最後の碩学。
梅原猛。
1925年、宮城県生まれ。
京都大学文学部哲学科に入学。
立命館大学の専任講師となる。
学園紛争で立命館大学を辞職。
ものつくり大学初代総長、
京都市立芸術大学学長、
国際日本文化研究センター所長、
日本ペンクラブ会長などを歴任。
1999年、文化勲章受章。
2019年、93歳で没。
白川静と梅原猛は、
立命館大学勤務時代に同僚だった。
白川は梅原の大先輩だった。
そして梅原は白川に学んだ。
「人は誰かの許(もと)で学ばんとするが、
その意味は学んではじめてわかる」
誰かから学ぶときには、
まず学ぶ側が成長すると考えられる。
しかし学ぶ者がいるとき、
学ばれる者こそが、
「年々、偉くなる」
学ばれる者こそ、
学び続けている。
これを「学びの逆説」という。
こんな対談、してみたい。
時間をかけて。
イングランドで発祥したと言われるサッカー。
それを南米諸国が国技のようにして学んで、
ブラジルやアルゼンチンは、
サッカー大国となった。
大国となっても南米の選手たちは、
今も欧州リーグに参加して、
学び続けている。
ジャパンの8人のアスリートも、
ドイツのブンデスリーガに所属して、
学び続けている。
そしてそのドイツに恩返しをした。
狂狷(きょうけん)でなかったら、
まともな人間ではないし、
サッカーでも勝てない。
「狂狷」がジャパンを勝たせてくれた。
それが試合を見ているとわかる。
ありがたい。
〈結城義晴〉