今日は1日中、
横浜商人舎オフィス。
午前中に来客。
㈱商業界の元社員。
私は2007年8月末に、
代表取締役社長を辞任した。
彼は会社に残った。
その後、東日本大震災が起こり、
出版不況は深刻さを増し、
最後に新型コロナウイルスの感染拡大。
2月ゼミナールの参加者は激減した。
2020年4月、会社は自己破産した。
そして、仕事がなくなった。
もともと実力があった。
専門領域をもっていた。
いろいろと就職先を探した。
それでも世間は甘くはない。
思案した挙句、
自分の道を探して、
独立した。
今、新しい仕事にも挑戦する。
そして驚くほどの成長を遂げていた。
自分ではそれほど、
認識していないのかもしれない。
だが15年も話をしていなかった私には、
彼の成長ぶりがよくわかった。
生きることにポジティブになった。
率直になったし、快活になった。
それでいて謙虚になった。
話をしていても、
知見の広さが表に出るようになった。
一緒にランチをして、
私の知らないことなども教えてもらった。
本当にうれしいことだ。
若い人たちが、
人間として大きくなっていく。
「艱難が忍耐を生み出し、
忍耐が練達(練られた品性)を生み出し、
練達が希望を生み出す。
この希望は失望に終わることがない」
(新約聖書・ローマ人への手紙より)
つまり、
艱難は人を鍛える。
日経新聞巻頭コラム「春秋」
イワン・パブロフの話。
条件反射の研究で知られるソ連時代の生理学者。
(1849年~1936年)
「犬を使って実験をしているとき、
思わぬ障害につまずいた」
「実験机の台に乗せ、
足にゆるい輪をはめてみたところ、
時間がたつにつれて興奮し、
逃げようとして暴れ出した。
これがずっと続き、
実験をいったん中断した」
「犬のこの反応は何を意味しているのか。
いろいろな仮説を考えてみて、
パブロフはある結論にたどり着いた」
「たいへん単純なことで
自由を求める反射である」
「自分の活動が
縛られ続けることに耐えられない」
「これは、あらゆる生物の持つ、
極めて重要な反応のひとつだと指摘した」
なるほど。
「自由を求める反射」か。
そこで現在の中国。
ゼロコロナ政策を緩めた。
住民の抗議を受けた決定だ。
コラム。
「服従が条件づけられたかに見える国で、
反発の声をあげる勇気に驚かされる」
しかしそれは「自由を求める反射」である。
「暮らしを昨日より豊かにしさえすれば、
国民は文句を言うまいとの発想が
この国にはある」
古代ローマでも、
「パンとサーカス」と言われた。
「パブロフは実験を続けるため、
餌づけをして犬をおとなしくさせた。
だが人間は、食べ物が足りれば
それで満足するような生き物ではないはずだ」
そう、人間には尊厳がある。
「現代の皇帝たちが
力を誇示した年が暮れようとするなか、
自由の尊さをかみしめる」
ウクライナにも、
香港や台湾にも、
そしてローマ市民にも、
「自由を求める反射」がある。
私自身も、
15年前に商業界を去った。
そして株式会社商人舎をつくった。
あれは自由を求める反射だった。
商人舎のスローガンは三つ。
自主独立、
自己革新、
社会貢献。
今日、やって来てくれた彼の生き方も、
自由を求める反射なのだと思う。
それにしても、
かつての部下や後輩や仲間や、
教え子たちが、
成長しているのを見るのは、
本当にうれしいことだ。
〈結城義晴〉