日曜日。
凄く寒い。
大寒を実感する。
今日は自宅にいる。
自室にこもって、
テキストの最終仕上げと、
商人舎2月号原稿の手直し。
明日、入稿する。
仕事が一段落すると、
他のことがやりたくなる。
1055年生まれの現代美術家・大竹伸朗。
「予定が詰まってくると
決まって別のことが
したくなる」
まったく同感だ。
2週間ほど前、
インターネットで、
ちょっと気になるものが見つかった。
即、買った。
「ナチュリバーブ」
natu-reverb。
ギターにとり付けて、
反響効果を高める器具。
電源もいらず、
スピーカーも不要だ。
それで音が大きくなる。
美しく響く。
それが宅急便で届いた。
早速、付けてみた。
ボディの内側に装着し、
磁石で止める。
私の愛器はギブソンJ100。
大学を卒業する前に、
社会人になって給料を貰えるのを当て込んで、
渋谷の黒沢楽器で、
2年の月賦で購入した。
25万円くらいした。
それまでアコースティックギターは、
ヤマハの普及版だった。
グレコのエレキベースも持っていた。
バンドなどで演奏する時には、
たいていベースを弾いていた。
音楽を続けることはないと決めて、
記念にちょっと変わったギターを手に入れた。
生ギターは2つのブランドでとどめを刺す。
「複占」である。
マーチンとギブソン。
エレクトリックギターも「複占」だ。
フェンダーとギブソン。
私は洗練されたマーチンよりも、
荒々しいギブソンが欲しかった。
J100 はオールドモデルで、
すでに生産されていないギターだった。
大きなボディで重くて強い音が出た。
それを2011年に、
専門の工房に預けて、
フルメンテナンスした。
これにも10万くらいかかった。
手に入れてから35年経過していた。
傷んだ部分が補修され、
すごく引きやすくなったし、
さらに音が出るようにもなった。
そのギターで大久保恒夫さんと、
「ふたりのビッグ・ショー」をやった。
大久保さんはマーチンを持ち、
私はギブソンを抱えた。
良い組み合わせだった。
そのJ100にナチュリバーブを付けた。
いい音が出た。
また、やりたくなった。
オジさんバンドならぬ、
お爺さんバンド。
私のレパートリーのひとつが、
童謡の「砂山」だ。
北原白秋作詩、中山晋平作曲。
山田耕作の曲もあるけれど、
圧倒的に中山晋平がいい。
海は荒海 向こうは佐渡よ
すずめ啼け啼け もう日は暮れた
みんな呼べ呼べ お星さま出たぞ
暮れりゃ砂山 汐鳴りばかり
すずめちりぢり また風荒れる
みんなちりぢり もう誰も見えぬ
かえろかえろよ 茱萸原(ぐみわら)わけて
すずめさよなら さよならあした
海よさよなら さよならあした
――この歌に自分なりのコードを付けて、
ギターで弾き語りしていた。
大学生のころのことだ。
今日、その曲をふたたび、
ナチュリバーブ付きのJ100 で演奏した。
ふと思い立って、
以前からずっと気にかかっていた部分の、
コード進行を変えてみた。
最初の2小節は、
うみは(G) あら(Em) う(G) み(Am)
と入っていたが、
この2番目のGがどうも平凡で、
気に入らなかった。
それをBmにしてみた。
うみは(G) あら(Em) う(Bm) み(Am)
新しい印象となって、
すごくよくなった。
後半のサビの部分の2小節も、
みんな(G) よべ(D) よ(Em) べ(Am)
としていたが、それを変えた。
みんな(G) よべ(D) よ(Bm) べ(Am)
50年ぶりにコード進行を変えて、
多分、これが完成形となった。
無性にうれしい。
「予定が詰まってくると
決まって別のことが
したくなる」
別のことをしても、
成果は得られるのだ。
ありがたい。
〈結城義晴〉