二十四節気の雨水。
雨水につきものの春一番が吹いた、
と思ったが、その発表は、なし。
帰国してから1週間が過ぎて、
やっと時差ぼけが治った気がする。
しかしそれを完全に治すには、
あれが必要です。
ゴルフラウンド。
以前、帰国の成田空港まで、
息子に迎えに来てもらって、
そのまま一緒にゴルフ場に行って、
ワンラウンドしたことがある。
午前の到着だった時のこと。
そうしたら、すぐに治った。
ゴルフの方は散々だったけれど。
日経新聞「私の履歴書」
今月は作曲家の村井邦彦さん。
暁星学園の小・中・高校から、
慶應義塾大学法学部へ。
いわばボンボン。
慶応のビッグバンドのころから、
ピアニストとして活躍して、
音楽業界に入った。
作曲家だけでなく、
プロデューサー業もやって、
順風満帆。
どこかで挫折が訪れないのかと、
半分期待しながら(?)、毎日読んでいる。
人間には挫折が必須だ。
今日のタイトルは、
「ひこうき雲」
そう荒井由実のデビューアルバムの話題。
私も大学生のころ、
リアルタイムでこのアルバムを聴いていた。
学年は荒井のほうが一つ下だけれど、
キラキラ輝いていた。
1972年から1年がかりで制作。
73年11月発売。
きっかけは村井と細野晴臣との出会い。
あのはっぴいえんどとYMOの細野。
細野のギター演奏を数小節聴いて、
村井は魂が揺さぶられ、
その才能にほれ込んでしまった。
そこで「ひこうき雲」の制作のとき、
真っ先に細野の起用を決めた。
細野は松任谷正隆と鈴木茂、
そして林立夫を連れてスタジオに現れた。
のちのティン・パン・アレーのメンバーだ。
松任谷はユーミンの旦那。
鈴木ははっぴいえんどのリードギタリスト、
林は凄いドラマー。
ひこうき雲は、
作詞作曲・歌唱の荒井由実もいいけれど、
バックバンドが秀逸だった。
私はそれが大好きだった。
録音は「ヘッドアレンジ」で進められた。
譜面は使わない。
口頭で曲のイメージを伝えながら、
全員でつくりあげていく。
荒井由実のこのアルバムには、
すべてが詰まっている。
ひこうき雲/曇り空/紙ヒコーキ
空と海の輝きに向けて/きっと言える
雨の街を/返事はいらない/そのまま
いいなあ。
1976年に、
松任谷由実と名前を変えたが、
この「ひこうき雲」と、
次の「MISSLIM」が、
圧倒的にいい。
MISSLIMには、
山下達郎が参加している。
生まれた街で/瞳を閉じて
やさしさに包まれたなら
海を見ていた午後/12月の雨
いいなあ。
村井邦彦や細野晴臣たちが、
「ユーミン」を創った。
日経新聞「風見鶏」
「正当な差別」などない
編集委員の大石格さんが書く。
「首相秘書官の発言をきっかけに、
性的少数者(LGBT)への理解を促す
法律づくりの検討を
岸田文雄首相が自民党に指示した」
差別の問題は難しい。
「ある分野の被害者が、
別の分野では加害者ということもある」
米国最高裁のギンズバーグ元判事。
3年前に惜しまれて亡くなった。
弁護士時代にからめ手から攻めた。
「目標は女性の権利擁護なのだが、
男性の権利を守れ、という訴訟を起こした」
「当時、親などの介護にかかる費用を補う
所得控除は独身男性には認められていなかった。
結婚して妻に介護させればよい、
と思われていたからだ」
男性に不利な制度はおかしいとの訴えは
あっさりと認められた。
最高裁は男女で扱いが異なる制度は
憲法違反と判決に書いた。
「ギンズバーグ氏は以降、この判決を盾にして
女性の扱いが不利な事例で次々に勝訴していく。
戦略がまんまと当たった」
日本のLGBT法案の焦点は、
「差別禁止」の扱いにある。
「理解増進は許容するものの、
差別禁止規定の盛り込みには反対」
自民党にある主張だ。
21年の与野党連携の議員立法。
基本理念の表現は、
「性的指向や性自認を理由とする差別は
許されない」
しかし保守層が猛反発し、
法案は国会提出に至らなかった。
今、「差別は許されない」を、
「不当な差別は許されない」に修正する案が
取り沙汰されている。
大石編集委員。
「“正当な差別“ならば許される
とでもいうのだろうか」
井上ひさしの、
「差別語のための私家版憲法十一箇条」
第一条
人は生まれながらにして不平等である。
第二条
本人に責任のないことをからかったり、
笑ったりするのは無意味な上に、
卑劣な行為でもある。
第四条
自分と違うという理由だけで、
人を笑い者にする権利は誰にもない。
第十条
人間でありながら
人間扱いされることのない
制度的差別はまだまだあるはず。
これからはそれらについて
じっくり考えることにしよう――。
「不当な差別は許されない」が、
「正当な差別は許す」では、
差別はなくならない。
松任谷由実が今、
歌にしてくれそうなテーマだ。
〈結城義晴〉