[2023vol⑪]
3月第2週。
哀悼の意を表しつつ、合掌。
イトーヨーカ堂創業者にして、
セブン&アイ・ホールディングス名誉会長。
今や日本最大のコングロマーチャントを、
一からつくった起業家。
その本質は「才覚と算盤」。
これは直接、お聞きした哲学だ。
「基本の徹底と変化への対応」も、
伊藤イズムである。
インタビューをお願いして訪れると、
まず伊藤さんから質問攻め。
一言一言を丁寧にメモにする。
すぐさま、目の前で、
メモをホッチキスでとめて、
次々に整理していく。
その上でこちらの質問に答えてくださる。
その意味で伊藤さんは、
事実を大切にする経営者だ。
データを重視しつつ、
物事を判断する商人である。
ピーター・ドラッカー先生とも、
昵懇の間柄だった。
「真摯」という言葉を好む。
ドラッカー教授の父上が、
オーストリア皇帝から授けられた表彰状。
現物をドラッカー教授からプレゼントされた。
「お客さんに支持されることだけを考えて
商売する」
「お客さんに売ることを、
楽しみにしていればいいんじゃないかな」
「大きくなると、
大きな顔をするようになる。
小さい人に対して大きな顔をする。
僕は、小さい人にも大きい人にも、
変わらないでしょ」
そう、小さな店にも、
学べるところがある。
伊藤さんはそういった店を、
こまめに訪問する。
しかし、
「小さい人ほど、
ちょっと大きくなると、
大きな顔をする」
伊藤さんは、
「オーナーシップ経営こそ最強である」と考える。
その伊藤さんが、
「潮目が変わった」と言った。
2008年のこと。
「自分の力では、
どうにもならないことが起こる」
次々に事件が起こった。
チェーンストア協会50周年のとき。
2018年1月19日。
ツーショットの写真を撮った。
これが直接お会いした最後となった。
今、セブン&アイは、
コンビニ一本足打法となる。
イトーヨーカ堂は衣料から撤退し、
首都圏に集中する。
次男の伊藤順朗さんが、
代表取締役となって、
その任を負う。
巡り合わせだろうか。
はたまた意図されたことだろうか。
順朗さんには頑張ってもらいたい。
応援もしよう。
1979年、伊藤雅俊さんが、
チェーンストア協会会長のとき、
私はチェーンストアフェアを取材し、
一冊丸ごと「別冊号」をつくった。
そのときからお世話になってきた。
長いながい時間が経過して、
伊藤さんとイトーヨーカ堂、
セブン-イレブンと、
セブン&アイ・ホールディングスを、
私は見てきた。
それらの基礎はすべて、
伊藤雅俊イズムで出来上がっている。
誇らしいことだ。
それを失ったら、
セブン&アイは駄目になる。
「あげまん」は伊丹十三の映画だ。
愛した男にツキをもたらす芸者上がりナヨコ。
ナヨコから離れるとツキが去っていき、
ナヨコとくっつくとツキがやってくる。
伊藤イズムとセブン&アイは、
この「あげまん」の関係にある。
心からご冥福を祈りたい。
今日は大江健三郎さんの訃報ももたらされた。
こちらは88歳。
伊丹さんの義理の弟。
短編「飼育」は衝撃だった。
この作品で23歳で芥川賞。
その後の精力的な執筆活動は、
語りつくせない。
1994年、ノーベル文学賞受賞。
ご冥福を祈りたい。
さて今日は月刊商人舎3月号発刊。
遅れました。
申し訳ありません。
特集は、
’23US Retail大写真集
ポストコロナの店舗アルバム In San Francisco
[Cover Message]
きっちり3年ぶりのアメリカ。サンフランシスコとシリコンバレー、そしてベイエリア。米国人の消費生活はCOVID-19パンデミックによって大変化を遂げていた。それに寄り添うように小売業も大きく変わった。リテールDXは進捗していた。超巨大チェーンは、さらに巨大さを増し、コロナはM&Aを早めた。ウォルマートは「人々が主導しつつ、テクノロジーを活用するオムニチャネル・リテーラー」へと変貌を遂げていた。[とんがり★こだわり]のコンテスト競争型チェーンはその個性を磨き続けていた。インフレはダラーストアを1.25ドルストアに変えた。変わるものは変わった。変わらぬものは変わらなかった。そのなかで「ポジショニング」なき者は活躍の場を喪失していた。その変化と不変の様さまを大写真集でお届けしよう。「百聞は一見に如かず」。ビジュアルによる追体験には「五十聞」の価値がある。
この雑誌は必ず、
Webサイトでも見てください。
写真の画像が全然違います。
鮮明です。
詳細は明日、解説しましょう。
では、みなさん、今週も、
基本の徹底と変化への対応を。
Good Monday!
〈結城義晴〉