ゴードン・ムーアさんが亡くなった。
インテルの共同創業者。
3月24日。
ハワイの自宅。
94歳だった。
幸せな一生だったに違いない。
1968年に盟友ロバート・ノイズとともに、
インテルコーポレーションを設立。
インテルを世界最大の半導体メーカーに育てた。
現在は世界最大手の、
中央処理装置と半導体素子のメーカーだ。
私のパソコンにも、
INTEL COREi5と印字されている。
1965年、インテルを創業する前に、
業界専門誌に発表した論文で、
「ムーアの法則」を世に問うた。
「半導体の集積度は1年ごとに倍増する」
1年後が2倍ならば、
2年後は4倍、
3年後は8倍、
4年後は16倍。
ここまでは想像できるが、
5年後は32倍、
6年後は64倍、
7年後は128倍。
ここまでも暗算で計算はできる。
8年後は256倍、
9年後は512倍。
そして10年後は1024倍となる。
その後、1975年に、
「2年ごとに」と修正された。
それでも10年後に32倍、
14年後に128倍。
20年後に1024倍。
この法則はあらゆるIT起業家に影響を与えた。
私もRetail DXを説明するときに、
そのスピード感を表現するために、
「ムーアの法則」を使っている。
その場合、
「1年に2倍」もしくは「2年で2倍」は、
法則ではなくて、
スピード感を表すものだ。
IT機器はこの速さで価格が低下し、
デジタルは加速する。
チェーンストアであれば、
1年で4割ずつ伸びれば、
2年で1.96倍になる。
1年で20%ずつ伸びれば、
2年後は1.44倍、
3年後は1.728倍、
4年後に2.0736倍、
4年で2倍になるには、
20%増が必要になる。
それを続けると、
6年で2.985984倍の約3倍。
8年で4.3倍、
10年で6.19倍となる。
初期のチェーンストアは、
このスピード感で伸びた。
IT産業だけではないのだ。
GAFAの4社。
グーグル、アップル、
フェイスブック、アマゾン。
かれらはムーアの法則を信じた。
そして成長した。
アマゾンは小売業だった。
だからリテールとしては、
異例のスピードだった。
インテルの本社は今も、
カリフォルニアのサンタクララにある。
社名はIntegrated Electronicsからとられた。
「集積されたエレクトロニクス」
インテルは3代目のアンディ・グローブCEOが、
メモリー事業から撤退し、
マイクロプロセッサーに傾斜して、
大きな成果を収めた。
この転換のスピード感も、
ムーアの法則の延長上に位置づけられる。
ゴードン・ムーアさんは、
1997年に名誉会長に退くと、
夫人とともに慈善活動に力を注いだ。
「ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団」
これも多くの成功者たちに影響を与えた。
インテルには「Six Values」がある。
6つの基本ルールである。
ムーアの時代の1974年には、
「Eleven Values」だったが、
それが6つになった。
これがいい。
⑴Customer Orientation(顧客本位)
⑵Discipline(規律)
⑶Quality(品質)
⑷Risk Taking(リスクを負う)
⑸Great Place to Work(労働環境)
⑹Results Orientation(結果本位)
⑴のCustomer Orientationと、
⑶のQualityは、
日本の企業から借用された。
これもいい。
ベンチャー企業にも二つある。
ユニコーンとゼブラ。
ユニコーンは一角獣で、
突出した成長を志向する。
ゼブラはシマウマで、
利益と社会貢献の両利きである。
ユニコーンは、
ムーアの法則を志向する。
両方があっていいと思う。
チェーンストアも、
両方があっていいだろう。
20年で1000倍は、
最初が小さな1店の10億円ならば、
20年で1000倍の1兆円。
これも視野に入るものだ。
ムーアの法則は、
そんな夢を見させてくれる。
〈結城義晴〉