林廣美先生、来社。
惣菜の圧倒的な第一人者。
レジェンドコンサルタント。
85歳にして、
今も現役。
ジャストミートで商人舎に電話が入って、
林先生への講演の依頼。
日程もすぐに決まった。
今日は三つのご提案。
実に面白い。
そのなかで、
林廣美の「惣菜MD集大成」の本は、
秋までに発刊することになった。
途中、野田岩でランチ。
鰻重もペロリ。
12時半から3時半まで、
語り通し。
凄いことだ。
話のなかに、
「トレードオン」という言葉が出てきて、
「あれは結城先生の言葉」と言ってくださった。
トレードオフに対して、
トレードオン。
2021年4月発刊の拙著、
『コロナは時間を早める』の中で、
この言葉を初めて使った。
COVID-19パンデミックの最中、
日々、世界中が二つの命題の両立を考え抜いた。
感染拡大の防止と経済や消費の活性化。
感染拡大防止だけではいけない。
経済活性化も必須だ。
かつてはどちらかを切り捨ててもよかった。
むしろそれを奨励した。
中国は現在でもその考え方を優先させる。
ゼロコロナ政策がその典型である。
これは「トレードオフ」の発想である。
しかし21世紀は相反することを、
両立させねばならない。
これが「トレードオン」である。
月刊商人舎2022年1月号で、
あらためて問題提起し、
2023年1月号で、
さらに特集にした。
林廣美先生も島田陽介先生、
そして鈴木哲男先生も、
最近は「トレードオン」の概念を使って、
それぞれご自分の論を展開する。
その共通の基礎概念のようなものとなった。
うれしい限りだ。
林先生は、
これからのスーパーマーケットに関して、
「惣菜の店となる」と主張する。
「フードコート」も欠かせない機能となる。
この主張は「惣菜の教科書」発刊のころから、
まったく変わらない。
1994年5月。
「サミットスタディ」のなかで、
当時のトップ荒井伸也さんは、
「素材の時代から惣菜の時代へ」と、
スーパーマーケットは変わっていくと予言した。
その通りになった。
ヤオコートナリエ宇都宮店は、
まさに惣菜中心の店になった。
惣菜が第一主役で、生鮮は第二主役。
主演女優と主演男優のようなものだ。
サミットが今、挑戦しているのが、
部門横断型「大総菜プロジェクト」である。
スーパーマーケットは、
惣菜屋に変わる。
林先生や荒井さんと議論していたことが、
今、やっと実現しそうになってきた。
だからといって、
生鮮食品も重要であることは論を待たない。
考えてみると惣菜と素材は、
トレードオンの間柄である。
関西スーパーの故北野祐次さんの時代は、
生鮮食品のシステム開発に邁進した。
それは時代が要請したことだった。
北野さんは晩年、
「惣菜は自分でやってはいけません」と、
言い続けていた。
「街の惣菜屋さんをテナントに入れればいい」
当時はそれで間違いではなかった。
しかし今、トレードオンの時代。
惣菜は生鮮とともに必須となった。
そして次は店で食べてもらう時代。
米国のウェグマンズや、
イタリアのイータリーがそれを見せつける。
そしてこれは「惣菜」の延長ではない。
プロの技術が求められる。
林先生は「魚菜」の編集長をやっていた。
だから料理人の世界にも精通している。
スーパーマーケット惣菜時代が見えてくると、
フードサービスはさらに、
修行と訓練を積んだプロの時代となる。
林先生と4時間も話していて、
未来が見えてきた。
ありがとうございました。
〈結城義晴〉