横浜商人舎オフィスにいた。
午後3時10分。
イオン㈱の飯田あき子さんからメールが入った。
コーポレート・コミュニケーション部。
本日、「関東SM事業の構想について」会見を、
開催いたします。
1.日時 本日4月25日(火)17:30~18:30
2.場所 御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター
ご出席賜りますようお願い申し上げます――。
私はピンときた。
そして商人舎の社内に向けて言った。
「いなげやを子会社にするんだよ」
イオンの幹部から、
聞いていたわけではない。
近いうちにいなげやを連結子会社にして、
それからユナイテッドと経営統合する。
これはコロナ禍中に成し遂げた、
「全国リージョナルシフト」の総仕上げである。
これが私の確信に近い見方だった。
イオンは現在、
いなげやの株式を17.01%保有する。
持ち分法適用会社の扱いである。
連結決算には含まれない。
突然の記者会見の開催は、
何か大きなことが決まったからに違いない。
それともどこかのメディアが、
スクープしたのだろうか。
そう思っていると、
すぐにわかった。
案の定、日経電子版が午後3時02分付けで、
「イオン、いなげやを子会社に」との記事を掲載した。
午後5時半から記者会見が始まった。
商人舎編集陣は高崎に向かっていた。
だから緊急の記者会見には出席できなかった。
吉田昭夫イオン社長、本杉吉員いなげや社長、
そして藤田元宏U.S.M.H社長が壇上に座った。
商人舎流通スーパーニュース。
イオンnews|
いなげやを子会社化し「関東1兆円SM構想」加速
イオンは2023年11月をめどに、
いなげやの議決権51%相当の株式を取得する。
そして連結子会社とする。
さらに、2024年11月をめどに、
ユナイテッド(U.S.M.H)と経営統合する。
正式にはユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱。
㈱マルエツ、㈱カスミ、マックスバリュ関東㈱、
それにいなげやが加わって、
関東圏における売上高1兆円・1000店舗。
最大のスーパーマーケットチェーンを構想する。
いなげやの決算発表は、
5月7日の予定だ。
そのときには、
胸を張ってイオンと経営統合すると、
発表するのだろう。
それでいい。
小売業の六重苦。
⑴市場縮小
⑵競争激化
⑶人手不足
⑷原材料費アップ
⑸建設費高騰
⑹光熱費等上昇
商業の人手不足には日本の産業界挙げての、
給与の引き上げがさらに影響を与える。
原材料費アップは、
昨年からの異常な食品値上げを引き起こした。
さらに決定的な電気代の高騰もある。
本杉いなげや社長は述懐した。
「1社の企業努力では電気代高騰、デジタル化、
マーケティングなど時代の変化への対応が
厳しくなってきています」
ユナイテッドのDXとの融合は、
乗り遅れないためにも有効だ。
ネットスーパーは、
イオンネクスト㈱がこの夏に、
「Green Beans(グリーンビーンズ)」を立ち上げる。
いなげやはこれにも乗ることができる。
物流2024年問題に対しても、
物流基盤の共通化は、
イオンとともに進む方がいい。
さらにプライベートブランドは、
イオンが今、最も力を入れる領域だ。
それも活用できる。
ユナイテッドは、
営業収益7087億円、
営業利益は47.5%減ながら63億8400万円、
経常利益も47.6%減で65億3600万円。
グループ総店舗数529店舗。
いなげやは営業収益が約2500億円。
店舗数133店舗。
合計すれば約9587億円、総店舗数662店。
日本のスーパーマーケット産業で、
ライフコーポレーションを抜いて、
トップに躍り出ることになる。
しかしまあ、急ぎなさんな。
2025年2月期の決算で、
ということになるのだから。
「経営統合した暁には」という、
「たられば」の話ばかり出ているが、
それまで本杉さんはいかに、
社内をまとめるか。
それが一番の問題だろう。
イオンもユナイテッドも、
それほど揺らぐことはない。
いなげやこそ、
焦点となる。
私はいつもこういったときに、
言うことにしている。
商人には本籍地と現住所がある。
本籍地いなげや、
現住所ユナイテッドあるいはイオン。
それを幹部や社員が自覚し、納得することだ。
そこからスタートすることだ。
もう一つの問題は、
イオンの持ち分法適用会社の㈱ベルクの行方だ。
こちらは業績絶好調で、
今、イオン首都圏スーパーマーケット構想に、
入ってくる必要はまったくない。
ベルクnews|
営業収益3108億円・営業利益140億円/経常利益率4.6%
2023年2月期決算は、
営業収益3108億円、
営業利益140億1800万円、
経常利益142億9700万円(3.0%増)。
営業利益率4.5%、経常利益率4.6%。
しかし将来にわたって、
どう考えるか。
イオンにとっては、
ベルクこそ首都圏構想の中核に据えたい企業だ。
原島一誠社長と幹部の、
考え方にかかっている。
さらにこの首都圏統合によって、
日本中のスーパーマーケットは、
経営統合を急ぐことになるだろう。
その際に忘れてはならないことがある。
成長と膨張である。
単なる膨張であるならば、
経営統合は危うい道に踏み出すことを意味する。
くれぐれも忘れずに。
私は夕方の新幹線で、
高崎へ。
夜の時間帯としては、
まあまあの状態だ。
スケールが1兆円に近づこうが、
膨張であってはならない。
膨張は終わりの始まりなのだから。
〈結城義晴〉