ゴールデンウィークの最中だというのに、
1日中原稿書き。
ああ。
だがそれが私の仕事だ。
月刊商人舎5月号。
この雑誌を始めたのが、
2013年5月号から。
10年前の写真。
私は「商売を科学せよ」と、
強く訴えていた。
今、読み返してみると、
ゆったりした誌面だった。
月刊商人舎の良いところは、
こうしていつでもパソコン画面で、
過去の雑誌をすべて閲覧できるところだ。
初めから「紙と網の雑誌」を標榜していた。
PaperのMagazineとNetのMagazine。
その融合。
このころから「両利きトレードオン」だった。
そして10年目の雑誌を今、
つくっている。
通巻121号。
今回も力の入った内容だ。
ご期待いただきたい。
この10年の間に、
私は10歳年を重ねて、
70歳となった。
だから60歳のときに、
新雑誌を創刊したことになる。
そして当時やっていたことを、
収斂させてきた。
立教大学大学院の特任教授は、
任期が来て辞めた。
ほかに大学の教授の口は探さなかった。
コーネル大学RMPジャパンの副学長も辞めた。
そして本来の商人舎社長の仕事に専念した。
そうすると万代知識商人大学などが始まった。
ロピアの躍進も起こった。
それが良かったと思う。
そして直近の3年間は、
コロナが時間を早めた。
朝日新聞「折々のことば」
鷲田清一さんの編著。
第2719回。
道義の根本は
人の悲しみがわかる
ということにある。
(岡潔『春宵(しゅんしょう)十話』から)
「このことが基本にあってこそ
人は日々安心して暮らせるのだ」
「だが悲しみの感情とは難しいもの。
これを”人が悲しんでいるから自分も悲しい”
という程度にまでわかるには、
時間がかかる」
さすがに岡潔さんだ。
顧客が悲しんでいるから、
自分も悲しい。
顧客が喜んでいるから、
自分もうれしい。
この域に達するには時間がかかる。
しかしそれを目指す。
人の在り方の根本は、
人の悲しみがわかることだ。
商人の在り方も同じだ。
岡潔さんは日本を代表する数学者。
湯川秀樹、朝永振一郎、廣中平祐、
皆、岡さんの弟子みたいなものだ。
エッセイもたくさん書き残した。
その『春宵十話』のまえがき。
「人の中心は情緒である」
数学者なのに情緒が中心だと言い切る。
「私は数学の研究を
つとめとしている者であって、
大学を出てから今日まで三十九年間、
それのみにいそしんできた。
今後もそうするだろう」
「私は、人には表現法が
一つあればよいと思っている」
岡さんなら数学だ。
商人ならば商売だろう。
伊藤雅俊さんも岡田卓也さんも、
それに徹したから成功したのだ。
数学なんかをして
人類にどういう利益があるのだ、
と問う人がいる。
岡さんは答えた。
「スミレはただスミレのように
咲けばよいのであって、
そのことが春の野に
どのような影響があろうとなかろうと、
スミレのあずかり知らないことだ」
スミレはスミレのように咲けばよい。
この言葉も、
私のポジショニングの考え方に影響を与えた。
もうひとつ「折々のことば」
第2704回。
「人をコーフンさせる仕事をしてるんだから、
自分がコーフンしないとダメだよな」
〈忌野清志郎(いまわのきよしろう)〉
この本はとてもいい。
マネージャーと衣装係を務めて、
清志郎のそばに40年、
付き添った片岡たまき。
「どこか遠くに連れて行ってくれそうな彼は、
周囲に濃(こま)やかに心を配る人でもあった」
人をコーフンさせる仕事をする。
だから自分もコーフンしなきゃ。
清志郎は本来、静かな男だ。
しかし自分の仕事に忠実だった。
だからメイクをし、派手な扮装をして、
顧客をコーフンさせた。
スミレはスミレとして咲いた。
このゴールデンウィーク。
自分らしく咲きたい。
自分の歌を歌いたい。
〈結城義晴〉