日本スーパーマーケット協会総会。
歴史的な会長交代だった。
2年ごとに会長が代わる協会もある。
そういう時期もある。
しかし初代会長の清水信次さんが、
1999年7月に協会を設立して、
10年間、会長を務めた。
2009年7月に川野幸夫会長にバトンタッチした。
それから14年間、川野体制が続いた。
そして2023年6月末日、
岩崎高治新会長が誕生した。
川野さんは清水さんと同じく、
10年くらいで交代したいと考えていた。
その次の会長は、
岩崎高治さんしかいなかった。
清水さんも川野さんも、
岩崎さんだと確信していた。
あとは岩崎さんが引き受けるか否か。
それだけだった。
いや、いつ引き受けるのか。
それだけだった。
川野会長になって10年が過ぎたら、
新型コロナパンデミックが起こった。
そして3年が経過してしまった。
ここで交代となった。
清水信次さんは、
昨2022年10月25日に逝去された。
清水さんは岩崎会長誕生の瞬間を、
見たかったに違いない。
だから岩崎さんは心の中では今年、
会長に就任することを決めていたのだと思う。
記念パーティが始まると、
川野会長があいさつした。
「皆さんご存知のように、
この協会の設立者であり、
初代会長を務めていただいた
ライフコーポレーションの清水さんが
昨年秋に96歳でなくなりました」
「私が申し上げるまでもありませんが、
スーパーマーケット業界、
小売業界のリーダーとして
国民生活の豊かさを実現すべく、
私たちを導いてくれました」
「この業界、流通業界全体での
その存在感は抜群でした。
改めて、清水さんの業績をたたえるとともに
皆さんと一緒に
ご冥福をお祈りしたいと思います」
「さて、皆さんご承知のように
デジタル技術の驚異的な発達により、
私たちの生活が大きく変わってきています」
「スーパーマーケットは変化適応業ですので、
お客さまの変化に合わせて、
提供する商品やサービスを
変えていかなければならないし、
またお客さまの変化をある意味、
主導するように仕事をしています」
「できるだけ若い人に
この協会をリードしていただきたいと
前から思っていました」
「とくにこのコロナ禍で、
変化がさらに加速しました。
私は猶予がなくなったと思っていました。
まずは協会の会長を若い人に
バトンタッチすることが
第一の仕事だと思っていました。
そして、私よりもふた回りも若い
岩崎さんを口説いて、なんとか
跡を継いでいただくことになりました」
「言うまでもありませんが、
この業界で欠くことのできない優れた人材です」
「何度も継いでいただきたいとお願いしていたので、
私は念願がかない、うれしく思います。
清水さんも喜んでいるだろうなと思います」
「これから岩崎さんのリーダーシップのもとに
この業界がますます発展すると思います。
これからも皆さんのご協力をお願いしたい」
「最後に皆さんのお世話になって、
会長職をまっとうできたことを、
皆さんに御礼したいと思います」
「このたび日本スーパーマーケット協会の
会長を務めさせていただくことになりました」
「まだまだ力不足ですが、
川野名誉会長の引き続きのご指導のもと、
また本日選任された6名の副会長の皆さんの
サポートをいただいて
精いっぱい務めていきたいと覆います」
「この日本スーパーマーケット協会が
設立されたのは今から24年前、
1999年7月になります。
私がこの業界に入ったのは1999年5月。
その2カ月後です」
「設立にあたって、
多くの障害や困難がありました。
そのとき川野会長はじめ、
エコスさん、オークワさん、
ラルズさん、カスミさんなどが
協会の設立に賛同されて、
多大なるサポートをいただいて、
何とか設立できました」
「その時、発起人である
ライフコーポレーション清水名誉会長が
本当に心から喜んでいたことを覚えています」
当時の故中川昭一農林水産大臣が、
後ろ盾となってくれて、
協会は設立された。
「会員企業相互の成長、発展を通して、
スーパーマーケットの健全な発展
および我が国の食料品流通機構の
近代化と合理化を促進し、
ライフラインとしての食品の
安定供給を図るとともに
より豊かな国民生活の実現に寄与する」
「この原点に立ち戻って、
まずは通常会員76社、賛助会員415社。
合計491社の皆さんのご意見に
真摯に耳をかたむけ、拾い上げることから
会長の仕事を始めていきたい」
「その上で健全な発展、
食料品流通機構近代化と合理化、
安定供給にまい進したいと思いますが、
その前に喫緊の課題が3つあります」
「1つ。物流の2024年問題。
この分野は競争ではなく協調領域。
力を合わせて取り組んでいきたい」
「大きな2点目が人手不足の問題です。
行動制限が解除され、
個人消費に明るさ戻ってきたように思います。
それに反比例するように現場では人手不足。
これは大きな問題です。
具体的には103万円の収入の壁、
外国人人財活用の問題。
この2つの問題に対し、
日本スーパーマーケット協会として、
意見を集約し、皆さまに発信し、
協力を求めていきたい」
「3点目が環境問題。
いまや環境問題は規模の問題、業種、
上場しているかどうかを問わず、
経済活動を行う団体にとって、
取り組んでいかなければならない課題です。
環境問題への対応については、
協調できる領域です。
幸いなことに
日本スーパーマーケット協会加盟企業の中には
先進的な取り組みをしている企業もあるので、
先行事例を共有しながら、実行していきたい」
「結びに、1点だけ想いを共有したい。
日本スーパーマーケット協会会員企業の声を集め、
協会として実行すべきことを
着実に実行することが優先順位の一番ですが、
当協会でできることは限られます」
「小売業界には
さまざまな団体が存在しています。
これらの団体と力を合わせることで
スーパーマーケット業界、
大きく言えば小売業界の現場の声を
一つにして、発信することができれば、
今まで以上に大きな成果が
得られるのではないかと思います。
「一足飛びにはできないが、
小売業界、食品流通業界全体の繁栄のために
心血を注いでいきたいと思います」
時間が限られていたために、
ちょっと早口にはなったが、
淀みなく、力強く、
見事なスピーチだった。
すぐに懇親。
ありがというございました。
これからも重鎮として、
存在感を示していただきたい。
玉生弘昌㈱プラネット会長。
川野さんとは埼玉県人会でご一緒。
それから今日の主役・岩崎さん。
これからのスーパーマーケット産業を、
よろしくお願いします。
一番良い形で、一番いい時期に、
そのリーダーとなった。
同じく副会長に就任した、
ラルズ社長の猫宮一久さん。
コーネル大学ジャパン伝説の一期生。
副会長を重任したサミット社長の服部哲也さん。
服部さんもコーネル一期生。
一番の若手副会長は、
ヤオコー社長の川野澄人さん。
47歳。
副会長の万代社長・阿部秀行さんと、
西友CEOの大久保恒夫さん。
阿部さんとは3日連続だ。
関西勢が勢ぞろい。
加藤産業社長の加藤和弥さんと、
平松さん、阿部さん。
マルエツ社長の本間正治さん。
コーネル・ジャパン実行の第3期生。
そしてライフコーポレーションの森下留寿さん。
取締役専務執行役員。
そして並木昭利さん(中)と井上淳さん。
並木さんはこの協会の、
もう一人の設立者と言っていいだろう。
清水さんを支えて、
日本スーパーマーケット協会をつくった。
そして初代専務理事に就任した。
ごくろうさまでした。
ありがとうございました。
それから井上さんは、
日本チェーンストア協会副会長。
最後に江口法生さん。
日本スーパーマーケット協会専務理事。
ライフ出身の江口さんはこれからも、
ますます頑張らねばならない。
記憶にも記録にも残る総会だった。
江口さんからももう一つの朗報を教えていただいた。
それはまたの機会に書くことになる。
すばらしい。
1999年のこの協会発足の記念講演。
一番最後に私は言った。
「正しきによりて滅ぶる店あらば、
滅びてもよし。断じて滅びず」
「日本のスーパーマーケットよ、
永遠なれ」
それはいまも、変わらない。
〈結城義晴〉