結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2023年07月22日(土曜日)

日経新聞流通記事に「三言」、指摘と感謝を。

今日は日経新聞に三言。
指摘と感謝と。

第一に土曜日の「社説」
「流通業が好業績を続けるには」

小売業や流通業への社説でのメッセージ。
感謝したい。

しかし全体に文章がヘタクソ。
社説なのに、なっていない。

ああいったかと思えば、
今度はこういう。

「イオンやローソンなど大手小売業の、
2023年3~5月期の連結決算で
好業績が相次いでいる」

いきなり、
「イオンやローソンなど」と書くけれど、
これは意味がない。

この社説の事例はイオン、セブン&アイ、
セブン-イレブン、ローソン、
ライフコーポレーション、
そしてファーストリテイリング。

「大手小売業の2023年3~5月期の連結決算は、
好業績が相次いでいる」
これでいい。

「物価高に対して所得の伸びは鈍い」

そのあとすぐに、
「消費者の外出が増え、
スーパーと映画館など
娯楽サービス事業がけん引した」

「最大手のセブン—イレブン・ジャパンを傘下に置く
セブン&アイ・ホールディングスは
海外コンビニの苦戦で
全体の営業利益は20%減となったが、
国内は好調だった」

酷い文章だ。

「好業績の理由を見ると物価高の中、
価格戦略が顧客から一定の支持を得ている」
と言ったかと思うと、
「もっとも3~5月期は反動増の側面も強い」

結論は、
「物価高は続く見通しで、
所得改善には時間がかかる。
好業績を続けるには
消費者離れを招かない企業努力が必要だ」

なんだ、結論は。
当たり前のこと。

消費者離れを招かない企業努力。
誰でもそれをやっている。

正確に言えば、
「顧客が離れない企業努力」である。

消費者は不特定多数。
顧客は特定多数。

最後に、
「機動的な顧客対応力が
好業績を続ける条件になる」

「消費者離れ」と言ったり、
「顧客対応力」と言ったり。

うちの山本恭広編集長が、
万一こんな文章を書いたら、
初めからやり直してもらう。

第二は[Deep Insight]
「”イオン型再編”阻む消費の波」

こちらは編集委員の中村直文さん。

「イオンが4月にいなげやの子会社化を発表し、
再びスーパー再編の機運は
高まったかにみえる」

「事はそう単純ではない」

原和彦アクシアルリテイリング社長。
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2021年秋、新潟県南魚沼市内に新店オープン。
「原信 川窪店」
商圏人口は2km圏で7000人。

商人舎流通スーパーニュース。
原信news|
「365×朝昼晩」テーマの「原信 川窪店」(580坪)10/16開設

開業当時の年商目標は16億円だったが、
23年2月期には18億円にまで達した。

「今や田舎でも大都市でも
情報量は変わらない。
減塩などの健康対応や環境配慮など
価格以外の訴求力も必要だ」

素晴らしい。

ヤオコーの小澤三夫取締役。
メーカー並みの製造力を追求する。
「メーカーのタレでは
我々の目指す品質と価格の商品が
実現できなかった」

これは惣菜部門の最重要命題だ。
さすが小澤さん。
〈古い写真で恐縮。でもいい写真だ〉
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ベイシア。
「物価高で、
メーカーのNB商品の依存度が高いと
個性を出せないと判断。
3月から”ベイシアプレミアム”を打ち出した」

「安いだけでは売れない。
素材などを厳選し、NBと同等品なら
割安感もはっきり出るレベルにする」
「例えばNBで800円なら、
PBは500円台で開発するという具合だ」

エコノミーブランドと、
クォリティブランドが、
混同された表現だ。
わかっていない。

「とりわけイオンは
PB供給とM&Aをセットで
業界再編をもくろんできた」

イオンを悪者に仕立てる。
こんな言説は他社からは受ける。

PB供給とM&Aはセットにはならない。
イオンの持分法適用会社のベルクは、
イオンのPBはほとんど扱わない。

「ヤオコーやベイシア、
ライフコーポレーションのような
有力チェーンは
製造・物流コストの効率化を実現しつつ、
NBではつかみきれない
細かいニーズに入り込んでいる」

それはイオンも同じこと。

そしてここで取り上げた企業群は、
すべてリージョナルチェーンだ。

それはイオンのリージョナルシフトと、
実は同期する戦略である。

ナショナルチェーンは、
いいリージョナルチェーンが集まったもの、
そしてリージョナルチェーンは、
強いローカルチェーンの集積である。

「スーパーのような日常に根ざす業態は、
イオン一色に染まらない」

当たり前だ。
アメリカですら、
ウォルマート一色ではない。

セイコーマートの丸谷智保会長。
「地域密着の対応をしてきたつもりだが、
顧客ニーズはまだまだあった
コロナ下で気づかされた」

「マーケットは2次元ではなく、3次元。
顧客のニーズに潜むミクロやナノの世界は無限だ」

実にいい観察だし、鋭い指摘だ。

大阪屋ショップの尾﨑弘明社長。
変わらぬ地域性、複雑化する消費の波を前に
局地戦に強い会社が勝ち残りの条件」
尾﨑さんも正しい。

書き手の総括は、
「今後もスーパー業界で
全国標準的な”イオン化”と
ミクロ・ナノ化のせめぎ合いは
続くだろう」

しかしこういった二極化視点は、
もう古すぎる。

結論は、
「ただ、細かな対応を重ねる小売りモデルは
収益面で見劣りしやすい。
顧客に豊富な選択肢を示しつつ、
収益力も兼ね備えた”二刀流”経営が
これからの消費を制する」

私の「両利きトレード・オン」と、
最後は同じ指摘だ。

第三に金曜日の夕刊[追想録]
「伊藤雅俊さん 夫婦で歩んだ商いの道」
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編集委員の田中陽さんが書いてくれた。

伊藤さんとの自身の交流も盛り込まれていて、
とても読みやすい。
上から目線のような言い方で恐縮だが、
いい文章だ。

日経本誌を読んでもらいたい。

最後の一文。
「昨年1月に先立った伸子さんと、
再び一緒になった」

ありがとう。

みんな年下の後輩だから、
偉そうに書いてしまった。

許してください。
お互いに文章修行、
続けましょう。

〈結城義晴〉

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