最終稿の校正カ所をチェックして、
さらに気になる章だけ素読みする。
これは単行本を書いた時の醍醐味だ。
最終頁には「知識商人に寄す」
㈱商人舎からの単行本読者に対するメッセージ。
岩波文庫にも最終頁に、
「読書子に寄す」という文章が載っている。
岩波書店創業者・岩波茂雄の筆である。
「真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む」
岩波茂雄は1881年(明治14年)、
長野県諏訪の農家に生れた。
苦学して東京帝国大学哲学科を卒業し、
一旦教師となるも、
自信を喪失して退職。
神田区南神保町に古本業岩波書店を開く。
破格の正札販売を実施した。
その後、夏目漱石の「こころ」を出版。
これが岩波書店の処女出版だった。
私はこの岩波の格調高い文章が好きで、
商人舎の単行本最終頁にも、
メッセージを書いて載せることにした。
「知識商人に寄す」
――発刊の辞 結城義晴
商人に学問は必要ない、と言われた。商人に難しい理論や論理は無用である、とも喧伝された。しかし「商人の技術」は客観化されて、高等学校に商業科が誕生した。最高学府においては、その「商人の学問」が確立されて、大学や大学院に商学部が生まれた。商売のためのマーケティングが誕生し、マネジメントが構築され、イノベーションが追究された。
商人とは小売り商いをする者に限らない。製造業、卸売業、サービス業、その他の関連産業やIT産業において、営業と販売とマーケティングに従事する者たちすべてを、商人と呼ぼう。
商売の知恵や知識は、それらすべての商人から求められ、深められることを、自ら欲している。商売の精神と技術は、すべての商人から愛され、高められることを、自ら望んでいる。かつても、現在も、商売に関する言葉と論理は、多くの人々によって高められ、深められてきた。
ここにわたしたちは、商人の知恵と知識、精神と技術、言葉と論理とを、時代のメルクマールのごとく総括し、集大成し、上梓することを決意する。現場・現物・現実に即して、Practice Comes First! を貫徹し、難しいことを易しく、易しいことを面白く、面白いことをより深く、考察、分析、論述、表現してゆくことを宣言する。
しかしながら、多くの商人を煽り、貶める甘言はなくならない。あまたの商人を迷わせ、道を外させる詭弁はふえるばかりだ。昭和の時代に起こった商業の近代化が、平成の時代を通して、商業の現代化へと、わたしたちを誘う。さらに次の元号の時代へ向けて、わたしたちは甘言や詭弁を排し、それらを見分けることのできる知識商人をこそ同志と考え、真の商売を探求するものである。それら知識商人の総力によって、商業の現代化を志すものである。その達成のため、世の知識商人との喜ばしき連帯を期待する。
読む、知る、考える、行う。検証する。再び実行する。顧客のために。再び、読む、知る、考える、行う。顧客のために。それが知識商人の尊い態度である。――2019年1月
この新刊本にも、
同じメッセージを載せた。
本ができたら、
手にとって読んでいただけたら幸いである。
白焼きを読み終えたら、
月刊商人舎9月号の入稿。
山本恭広編集長がまとめた大作、
1万1000字の原稿を。
ちょっと手直ししながら読んで、
「結城義晴の述懐」を書く。
そして明日の朝、入稿する。
仕事は続くよ、どこまでも♪
では、みなさんも、
今日もお仕事、
おまんまうまいよ。
〈結城義晴〉