暑い日曜日。
今日も完全休養。
日経新聞3面〈直言〉に、
柳井正さん登場。
タイトルは、
「失敗で磨け、無二の価値」
もちろんファーストリテイリング会長兼社長。
決算は2023年8月期。
営業最高益を見込む。
今後10年で売上高10兆円の目標。
アパレルで世界首位を目指す。
現在はZARA、H&Mに次いで世界第三位。
「ユニクロ」の海外店舗数は5月末で1633店。
国内店舗数の2倍だ。
営業利益も海外事業が日本を超える。
「今でこそ海外で成功しているが、
進出後20年ほどは失敗の連続だった。
ロンドンに数十店も大量出店して、
最初は大成功すると思ったら
結果は大失敗だった」
1号店はナイツブリッジの店。
ハロッズ百貨店のそば。
私も取材に行った。
「北京や上海などでも、
商品が全く売れない時期があった。
米国もそうだ。
現地の事情を把握せず
出店したのが理由だ」
「現地のニーズや商習慣を
よく知っているのはその国の人。
だからこそ世界の人材と
日本人でチームをつくり、
それぞれの国や地域で
最適な運営体制をつくることが大事だ」
現地化だ。
「そのために
日本の繊維を製造する技術を
中国など海外に持って行き、
協力工場など現地の企業家や個人と
共同で事業を拡大してきた」
「失敗を繰り返し、
社員の実際の行動が今の時代に合うように
変わらなければダメだ」
「ファーストリテイリングも、
数々の失敗を経て各地の特徴を学び、
少しずつ成長の芽が出てきた」
課題。
「機能性の高い衣料など
世界で通用する品をつくることだ」
「自分の店の商品が、
ロンドン、ニューヨーク、パリの
目抜き通りにあっても
売れるかどうかだと
今、世界中で言っている。
売れる商品構成とサービスを
考えなくてはならない」
「売れるものは本来、世界中で売れる。
それを日本のローカルの基準だけでとらえて
“この程度でいい”と思って満足して
経営していると小売業は失敗する」
「海外に出る時には3つの問いがある」
第一。
“あなたは何者で
他の企業やブランドとどこが違うのか”
ポジショニングである。
第二。
“世界中でどんな良いことをしているのか”
SDGsだろう。
第三。
“その国でどんな良いことをしてくれるのか”
その国への貢献。
この三つの問いに答えなければ、
世界で成功はしない。
そのために、
「価格と価値のバランスをとることを
一番大事にしている」
「どの国も他にはない、
いい企業に来てもらいたい。
この3つに答えないと
新しい地域や国には出られない」
「海外事業を育てなければならない。
日本企業は成長する市場に挑む
“本気さ”が足りない。
もっと危機感を持って
世界に出て行かないと
“ゆでガエル”になってしまう」
セブン-イレブンの世界戦略も、
「本気さ」が問われている。
消費者の目。
「年々厳しくなっている。
安ければ安いほど
売れるというわけではない。
反対に質が良ければ、
値段は関係なく
売れるということもない」
トレード・オンである。
「機能性を高めて
価値ある商品に仕上がったのなら、
その分価格を上げる必要がある」
“服を変え、常識を変え、世界を変えていく”
ファーストリテイリングのモットー。
「当社も大企業病に陥っている。
変わらないと生き残れない」
自ら、変われ。
国内の年収を最大4割上げた。
キャリア採用では年俸最大10億円を掲げて、
国際人材の獲得に乗り出した。
「日本企業の報酬は安すぎる。
特に若い人が安い。
年収を引き上げたことで
幹部候補となる若者を採れる。
人材が厚くなれば
グローバルで幹部候補の人を
行き来もさせられる。
世界に出て行かないと、
実力は高まらず成長もできない」
「年収数億円の人は複数いる。
GAFAからも採りたいと思っていたが
必ずしもいい人材ではないことを勉強した」
「米国流がグローバル流ではない。
プレゼンテーションは上手だが
仕事はできない人がいる」
これは最近の人材採用のときのポイントだ。
「グローバルで優秀な人材といえば
みんな欧米を思い浮かべるが、
アジアにも優秀な人材はいくらでもいる。
ベトナムをはじめ東南アジア、
インド、中国の人たちはすごく優秀だ」
「外資の経営幹部は日本をとばして
シンガポールや上海などに行く」
「日本は人材鎖国の状態だ。
移民を受け入れやすくする必要がある。
“開国”しない限り昔の繁栄を取り戻すことはない」
賛成だ。
「知的好奇心があって
会社をよくしようと思ってくれる人、
自分の職責だけでなく
全体最適で考えて仕事を実行できる人がいい」
「会社の考えに共鳴してくれることも必要だ」
知識商人である。
「ただ、外部から人材を引っ張ってきても、
会社の文化と合わなかったら
力を発揮することはできない」
ビッグモーター問題に対して。
「経営者やオーナーが
正しい考え方を持たないといけない。
金のために何でもするのなら
事業をやる値打ちはない」
「次期経営体制の中で
創業家の柳井家には、
株主の代表として、
ガバナンス(企業統治)をやってほしい。
大株主として株主の権利を主張してもらいたい」
これはサム・ウォルトンの考え方と同じだ。
ファミリーはファウンダーになるということだ。
正しいと思う。
柳井さんは変わらない。
「当社も大企業病」
強いメッセージである。
〈結城義晴〉