商人舎オフィス。
ありがたいことに、
狭いオフィスに蘭の花盛り。
㈱寺岡精工会長の寺岡和治さんは、
ブログ16周年も祝ってくださった。
まだまだ、やります。
日経新聞夕刊の「こころの玉手箱」
大久保恒夫さんの連載は、
2日目が「手帳とシャーペン」
コンサルティングの道具。
手帳のカバーは、
ルイ・ヴィトンの黒のタイガ素材。
丈夫で長持ち。
シャープペンシルは100円など格安品、
どこかで必ずなくしてしまうからだ。
3日目は、
「店舗巡回時に持っていたカバン」
これもルイ・ヴィトン。
カバンの中には、
パソコンと手帳、資料だけ。
だが丈夫で長持ち。
大久保さんらしくて、いいなあ。
あとの二つの玉手箱が楽しみだ。
さて、藤井聡太、21歳。
将棋の名人・竜王、七冠。
最後のタイトル王座に挑戦中。
永瀬拓也王座(31歳)と1勝1敗で迎えた、
第71期王座戦五番勝負第3局。
永瀬はこのタイトルを防衛すれば、
永世王座の地位を獲得する。
永世位はどのタイトルも、
通算5期獲得して与えられる。
永瀬はその5期目がかかっている。
一方の藤井が奪取すれば、
将棋界のすべてのタイトルをとって、
八冠が誕生する。
もちろん史上初の偉業だ。
藤井がプロになり立てのころ、
永瀬は藤井に働きかけて、
「VS」(ヴイエス)を始めた。
versus。
一対一の練習将棋だ。
これによって藤井は強くなった。
もちろん永瀬も強くなった。
しかし互いにその思考法や、
強み・弱みを知ることとなった。
よく知る二人の対戦。
その第3局は藤井先番で、
永瀬は「雁木」(がんぎ)という囲いを採用した。
雁木は階段状の構造物のことだ。
雁(がん)の群れは斜めにジグザグに連なって飛ぶ。
これに見立てた建物構造を雁木という。
将棋では角と銀を雁木状に並べる。
それが雁木囲いという。
最近のプロの間で流行っているのは、
専門的に言えば「新雁木」である。
ただしこの作戦は難しすぎて、
私など指し熟(こな)せない。
将棋には有名な「矢倉囲い」がある。
これは金銀3枚で王を固く囲う。
雁木は角と金銀で囲うが固くはない。
柔らかい囲いだ。
使い熟すには技量がいる。
藤井は大駒の角を早々と交換して、
持ち駒にして戦う戦法を得意とする。
「角換わり」と呼ぶが、
永井はそれを避けて、
雁木に囲った。
予(か)ねて用意の作戦である。
そのうえ、さりげなく、
9筋の端の歩を突き越しておいて、
その端歩から仕掛けた。
見事に決まった。
藤井は永瀬の術中にはまって、
じわりじわりと追い詰められた。
そしてAIの評価では、
永瀬95%、藤井5%という、
永瀬の必勝形まで局面は進んだ。
しかし持ち時間は、
藤井10分ほど、永瀬1分。
最終盤に藤井は意を決して、
敵陣に王手で飛車を撃ち込んだ。
〈2一飛〉
金底の歩というが、
それを打って凌げば、
永瀬が勝っていた。
つまり〈3一歩〉
しかし永瀬は無類の受け将棋の名人。
深く読んで「飛車には飛車」で守った。
〈4一飛〉
藤井は一閃の角打ちで、
95対5を40対60に逆転させてしまった。
〈6五角〉
この最高の棋士同士の対局で、
こんな逆転はそうそう生まれない。
そのあとは淡々と進んで、
81手で永瀬が投了した。
こんなに悔しそうな顔は、
見たことがなかった。
藤井はずっと下を向いていた。
勝つには勝ったが、
相手のミスに助けられた。
むしろ序盤・中盤のふがいなさに、
自分で自分を攻めているようだった。
「たいていの場合、幸運とは、
神から与えられるものでも、
自分で勝ちとるものでもない。
相手に恵んでもらうものである」
〈結城義晴著『Message』より〉
仕事も競争も同じだ。
幸運は相手から恵んでもらうもの。
自分はひたすらIntegrityに徹するだけだ。
藤井も永瀬も、
真摯であった。
そして幸運は、
藤井聡太に傾いた。
仕事も競争も同じである。
〈結城義晴〉