9月最後の日。
朝晩は涼しくなった。
昼は息が苦しいほど蒸し暑いけれど。
バーベナが咲いた。
上田隆穂さんから新刊本が送られてきた。
学習院大学経済学部教授。
『グラフィック経営学入門』
大学の先生たちの共著で、
上田先生が編著者。
ライオン㈱という会社を通して、
経営学をわかりやすく論じる。
先生方は自分の専門領域の要点を、
ライオンの定量・定性情報を使いながら書く。
とくにライオンの役職員には、
役に立つだろう。
もちろんそれ以外の企業にも。
私ならばたとえば、
イオンを通して、
チェーンストアを論じる。
あるいはヤオコーを通して、
スーパーマーケットを説明する。
もっとも、
セブン-イレブンを通して、
コンビニエンスストアを解説するとしたら、
それだけでほとんどを論じてしまうことになる。
私の場合、
㈱商業界の社長の最後の仕事として、
『岡田卓也の十章』を発刊した。
工藤澄人君が担当して私が監修した。
それを岡田さんが最後に読んでくださった。
三人の合作だ。
あの本はイオンの岡田さんを通して、
商業界精神とチェーンストアの原則が描かれた。
この書き方は、ある。
さて、梁川憲太郎君。
商人舎の専属ライターとして、
流通スーパーニュースの記事を書いてくれていた。
9月いっぱいで退社した。
コロナ禍の2022年2月から今年9月末まで、
毎日毎日、本当に丁寧な記事を書いてくれた。
入社してすぐに体調を崩した。
そこで自宅でもできる仕事として、
スーパーニュースを担当してもらった。
記事の執筆は、正確で迅速。
「この1年8カ月のあいだは、
ほぼ毎日、ニュースを書いたり、
結城先生のブログを読んで過ごしていたので、
そこから多くのことを考えたり
学ばせていただきました」
「商人舎で培った経験を、
今後も活かしていきたいと思っております」
「みなさまの温かさは一生忘れません」
これからは本格的な「物書き」を目指して、
身体に留意して、
自分の世界を築いて、
頑張ってほしい。
最後に、
ほぼ日刊イトイ新聞のエッセイ。
「今日のダーリン」
糸井重里さんが毎日書く。
“人間関係”について考察する。
「なにより脳がエネルギーを消費する」ことが、
人間関係らしい。
最初に結論がある。
「”人間関係”の問題は、
だいたい”距離感”の問題である」
これが糸井さんの真骨頂。
素晴らしい。
一つだけのコンセプトを、的確に導き出す。
「あっちがそれほど親しいと思ってないのに、
こっちが親しすぎるふるまいをしたら、
関係はわるくなる」
「親しき仲にも礼儀あり」
「親しいと思っているどうしの間でさえ、
距離感は大事だ」
「”距離感”をじょうずにとれる人は、
相手をもラクにする」
「もうちょっと近くとか、
少し遠めにするとか、
互いが居心地のいい距離を
探してくれるのだから、相手だって、
それが気持ちいいにちがいない」
「基本的な法則」を二つ、
伝授してくれる。
ひとつは、
「距離にかかわらず
口から出すことばは、
できるだけていねいなほうがいい」
私もこれは徹底している。
もうひとつは、
「じぶんが想像した距離より、
少し遠めに距離をおいたほうがいい、
ということだ」
糸井さんはこれをモットーとして、
広告業界でトップを走ってきた。
そしてキメのフレーズ。
「どっちも、
“少々水くさくあれ”
ということになる」
「近づく関係なら、
いつかそれなりに近づくものだから。
やや遠めに距離をとっておけば、
迷惑にはなりにくい」
論理的だ。
「人間関係は、
むつかしいものかもしれないけれど、
へたなりの距離を守っていたら、
臆病にならないですむ」
「むつかしいことは、
“うまくやろうとしない”が
正解だよな」
上手くやろうとなど考えず、
自分らしくやろうとする。
それが人間関係問題の対処法だ。
むつかしいことも、
うまくやろうとなんか、
考えてはいけない。
自分らしくやれればいい。
梁川憲太郎、
頑張れ。
〈結城義晴〉