イスラエルが、
パレスチナ自治区ガザを砲撃している。
この地区を支配しているのが、
イスラム組織のハマス。
そのハマスが民間人を殺傷している。
それに対してイスラエルが報復をする。
アメリカとイギリス、フランスは、
イスラエルを支持し、
ロシアと中国はパレスチナを支援する。
世界は二つに分かれて、
戦争や紛争は終わらない。
私たちはアメリカに来てから5日目となる。
ニューヨークは3日目だ。
今日はマンハッタンを巡る。
伝統的なスーパーマーケットと、
大人気の全国チェーンの闘い。
ブロードウェイを歩いて、
比較しながら視察する。
これも3年ぶり。
どんな変化が起こっているのか。
ユダヤ人のゼイバー兄弟が開いた店。
はじめは珈琲とスモークフィッシュの店だった。
それが独特の商品を増やしていって、
スーパーマーケットになった。
1店舗しかないけれど、
マンハッタンの人たちから愛されている。
セルフサービスのチーズ売場。
珍しいチーズにも、
それぞれに顧客がついている。
売れるから並べる。
惣菜売場も対面方式。
ゼイバーズだけの味を提供する。
不思議なことに私たち日本人も、
とてもおいしく食べられる。
そして圧巻のスモークフィッシュ対面売場。
今日は二人の調理人。
福島道夫さんが注文したのが、
スモークサーモンと、
ホールのスモークトラウト。
すぐに食べやすく調理してくれる。
いかがでしょう?
福島さんはベーグルも20個買って、
それに合う味のクリームチーズも購入。
みんなに振る舞ってくれた。
食べなければわからない。
だから食べる。
一番奥が珈琲売場。
私も必ずこのコーヒーを買って帰る。
みんなにもお薦めした。
それぞれに次の店に歩いていく。
私はゼイバーズカフェに入った。
先ほどのコーヒーが飲めるし、
パンやペストリーが食べられる。
私はコーヒーを一杯。
歩いて5分ほどでシタレラ。
マンハッタン育ちのデリショップ。
デリを核商品にするけれど、
どの店も総合化していって、
スーパーマーケット形式になる。
隣接して、
フェアウェイマーケット本店。
マンハッタンの王者。
典型的な地元スーパーマーケット。
生鮮食品の鮮度と価格で他を圧倒していた。
そこで次々に支店を出した。
投資会社に会社を売却して、
ニュージャージーなどにも出店した。
そしてナスダックに上場した。
そこでまた多店展開を図った。
しかし郊外では、
フェアウェイの良さは発揮できなかった。
上場3年で倒産。
チャプター11を適用申請。
その後、二度目の倒産。
通路奥のコーナーにオーガニック野菜。
しかしコロナ前までは、
中2階にオーガニック専用売場があった。
野菜と果物の売場からは、
ボリューム感がなくなった。
以前の売場はこんなにすごかった。
惣菜は対面売場で独特の味を提供する。
チーズ売場も、
ゼイバーズに引けを取らなかったが、
それが貧弱になった。
鮮魚と精肉売場もスペースが半減した。
この対面売場にずらりと鮮魚が並べられ、
裏側にこれでもかと精肉が品揃えされていた。
それがこちらの面に、
肉と魚が隣り合わせとなった。
裏側にはリーチインケース。
ガッカリだ。
中2階のオーガニック売場は、
飲料コーナーに変わった。
以前はすべてがオーガニック青果だった。
そしてオーガニックは毎年3割伸びていた。
変わらないのはエレベーターの写真。
ジョディ・フォスターが微笑む。
チェックスタンドには、
セルフレジが導入された。
改装とは本来、店をより良くするものだ。
ところがフェアウェイは、
店の魅力を削ぐ方向で、
何度も改装が加えられた。
悲しいくらいだ。
その理由の一つが、
この店の登場だ。
5分ほど歩くと、
トレーダー・ジョー。
地下1階と地下2階の2層店舗。
地上1階と2階にはデュアンリード。
マンハッタンのドラッグストア。
エスカレーターで地下1階に降りる。
花と乳製品から始まる。
まだ朝の9時前だ。
それから青果部門。
通路の真ん中にバナナの島陳列。
1本19セントの売り方は変わらない。
キングコングがバナナを持って、
エンパイヤステートビルを登るイラスト。
平台の青果は精肉部門の前まで広がった。
完全にフェアウェイから青果を奪っている。
BUTCHER SHOPは多段ケース。
すべてセンター供給だ。
エスカレーターで地下2階に降りると、
グロサリー売場が広がる。
全品がプライベートブランドで、
人気が高い。
今は、パンプキンのアイテムが、
売場を席巻している。
ハロウィンを控えて、
トレーダー・ジョーの客数はさらに増える。
冷凍食品もすべてプライベートブランド。
生鮮以上に評価が高い。
冷凍冷蔵アイテムも、
頻繁に新製品が開発され、
強くアピールされる。
エスカレーターで地下2階に上がる。
カート用のエスカレーターも並んで設置されている。
チェックスタンドからは、
朝の9時過ぎなのに、
長い行列ができている。
久しぶりの買物で、
私も120ドル以上買ってしまった。
ワイン抜きでこれだけ買うことは、
あまりない。
私はコロナ前に年間30回ほど、
トレーダー・ジョーを訪れた。
長いブランクもあって、
家のトレジョ在庫が切れた。
だから大量に買ってしまった。
ありがとう。
フェアウェイ本店が負けてしまうのも、
よく理解できる。
伝統の老舗も、
「良いものを安く」のPBにはかなわない。
地上1階のデュアンリード。
ここはコンビニエンスストア機能を果たす。
2階が日用雑貨と化粧品。
そして調剤薬局。
この売場はウォルグリーンの店名。
ディアンリードが、
ウォルグリーン傘下にあるからだ。
そしてトレーダー・ジョーと、
デュアンリードは、
ネイバーフッド型の商業集積である。
フェアウェイの単独店は、
利便性の面でも負けている。
フェアウェイは歯を食いしばってでも、
生鮮三部門を縮小してはいけない。
鮮度と安さを追求し続けねばならない。
トレーダー・ジョーには、
生鮮の強みはないからだ。
私たちはシタレラの、
やや大型の店を訪れた。
フェアウェイの隣の店は、
2層で300坪ほどである。
こちらは1フロアで400坪くらい。
入口に精肉部門。
そして圧巻の鮮魚部門。
これはトレーダー・ジョーとも戦える。
そしてデリ部門。
シタレラの味は他の真似を許さない。
しかしこの店はセルフデリの売場をつくった。
ホールフーズが開発した販売方式だ。
しかしそれは失敗した。
セルフデリの売場のままに、
パック商品が並んでいた。
自分の強みを忘れて、
ホールフーズの真似をしても、
顧客が離れていく原因をつくるだけだ。
青果部門はもともと狭い。
それなりに維持しているが、
全体に普通のスーパーマーケットに、
近づいてしまっている。
グロサリーなどは、
マンハッタンの店らしい、
密度の濃い品揃えだ。
しかし「自分の強み」を喪失した店は、
限りなく普通になっていく。
シタレラとフェアウェイが、
そのことを示している。
ゼイバーズは絶対に方針を変えない。
ブレることがない。
1店だけだがしっかり顧客を捉える。
それがサバイバルの道だ。
自分の強み、他との違い。
それを堅持することこそ、
ポジショニングの本質である。
(つづきます)
〈結城義晴〉