ダイエー横浜西口店。
スクラップ&ビルドして、
再スタート。
かつてのダイエーのドル箱店舗だ。
しかし市場環境が変わり、
施設も老朽化して、
2019年2月に営業を終了していた。
上階には居住スペースがあって、
1970年代には社宅となっていた。
私の友人のバイヤーたちはほどんど、
このダイエー横浜西口店の上階で、
新婚生活を送った。
思いの深い店舗だ。
私自身、この店から、
歩いて10分くらいのところで育った。
だから私の躯体の9割くらいは、
ダイエーの食品で出来上がっている。
今回のフォーマットは、
イオンフードスタイル。
つまりスーパーマーケットだ。
ダイエーnews|
イオンフードスタイル横浜西口店10/27オープン
早朝から行列ができた。
この店になじんだ顧客が、
待ちに待った開店である。
しかしあの「何でもそろうダイエー」は、
今回のオープンでは454坪1フロアの、
スーパーマーケットになっていた。
上階には今後、家電のエディオンと、
ドラッグストアのハック、
スポーツのビクトリア、
ワンプライスショップのキャンドゥ、
靴のABCマート、
そしてクリニックなどが入る。
開店と同時に顧客が入ってきた。
オーソドックスなコの字型レイアウトで、
顧客が多いからだろうが通路は狭く感じた。
それでも精肉売場では、
薩摩姫牛などを積極的に売り込んでいる。
各所で試食販売を展開しているが、
もっと大量に食べさせればいいのに、と思った。
正月番組の「芸能人格付け」のように、
ほんの一口だけ食べさせる。
オープン当日なのだから、
これでもかと食べさせて、
顧客を喜ばせるのがいい。
店舗左翼コーナーに、
鮮魚の対面売場が設けられている。
金目鯛が1尾1000円で売られて、
人気を博している。
これも「いいものをどんどん安く」で、
いくら売れても品切れしない、くらい、
どんと売るのがいい。
オープン初日としては、
青果以外は陳列量が少なくて、
売場展開が臆病になっている印象だ。
冷凍食品部門は充実させて、
イオンの総合力が結集された印象だ。
グロサリーでは、
トップバリュベストプライスが目立った。
オープン後、しばらくは、
「いいものをどんどん安く」。
つまり「享楽円」販売でなくてはいけない。
顧客はその気になって、
店にやって来てくれている。
なのにコンペティティブブランドがズラリ。
ん~。
最後のデリとベーカリーは、
必死の売場づくり。
レジには完全セルフを導入して、
セミセルフとの組み合わせ。
ダイエーはずっとTEC製だから、
これも妥当な判断だろう。
レジ裏の花の売場は見事だった。
スマホアプリで会員になっておいて、
スキャンして入店すると、
商品を手に取って店舗を出るだけ。
自動的に決済ができる。
天井のカメラと棚のセンサーで、
顧客の行動を読み取る。
Amazon Goは、
2018年1月にシアトルで始まったが、
そのシステムと同じ発想だ。
こちらはNTTデータの開発。
弁当やホットデリカ、飲料、菓子など、
約400品目の品揃え。
利用客は1日1000人が見込まれる。
この店の前の通行者は、
1日2万人と計算されている。
その通行客をターゲットにする。
ただしAmazon Goはもう、
結論が出ている。
店自体からの収益は得られない。
ジャストウォークアウトシステムのための、
デモンストレーション機能を担う。
スーパーマーケットとしては、
初めての試みだが、
このダイエーの450坪ほどの売場から、
15坪分をこのシステムに割く意味はあったか。
大桃昌史店長は勉強家で、
月刊商人舎の読者だ。
会社の方針もあるだろうが、
地域の顧客を精一杯喜ばせてほしい。
想定しているよりも、
商圏は広いと思う。
頑張れ。
私はその足で、
サミットストア横浜岡野店へ。
徒歩10分ほど。
新店がオープンしたら、
競合店を覗いてみる。
流通ジャーナリズムの鉄則だ。
サミットnews|
10/21「サミットストア横浜岡野店」改装オープン
1週間前にリニューアルを施して、
ダイエーの開業を迎え撃った。
今や、サミット屈指の繁盛店である。
店舗入り口を広くし、
鮮魚部門の前のスペースを効果的にし、
惣菜部門を拡大し、
冷凍食品売場を拡充した。
実に効果的な改装である。
「おためし下さい」コーナーも、
原則を貫徹して続けられている。
店長に声を掛けたら、
丁寧に説明してくれた。
足立功一 店長。
1カ月前にこの店に赴任した。
つまりダイエー対策の腕利き店長。
『サミットスタディ』を発刊したとき、
東中野店をモデルとして、
全面写真展開した。
足立さんはそのときの青果部門チーフで、
売場づくりを担当してくれた。
いい売場だった。
そのいい売場が、
この岡野町店でも実現されている。
「先週の土日はよく売れしました。
今日も午前中は前年比100%です」
意気軒高。
こちらはイオン天王町とダイエー横浜西口に、
挟み撃ち状態で攻められている。
それでも顧客を喜ばせようとの意志が現れている。
朝日新聞「折々のことば」
昨日の第2891回。
「すぐ気ぃついてたら、
よかったんですけど」
〈スーパーマーケットの店員(京都)〉
編著者の鷲田誠一さん。
「知人は、買った品物を袋に詰める台に
読みかけの本を忘れたのを
帰宅してから気づき、
慌てて取りに戻った」
「するとレジにいた女性店員に
こう声をかけられた」
「本はきちんと店の奥にしまわれていた」
「相手の不注意にあきれるのではなく、
なくさなくてよかったですねと
微笑むだけでもなく、
客の焦りや取りに戻る労まで
ねぎらう濃(こま)やかな心配りに、
知人はグッときたらしい」
スーパーマーケットは顧客から、
「グッときた」と思ってもらわねばいけない。
最後はそれが勝負を分ける。
〈結城義晴〉