11月の三連休、真ん中の土曜日。
昨日の日経新聞朝刊一面。
「セブン、商品企画に生成AI」
ほかのメディアには出ていないから、
日経のスクープなのだろう。
したがって文面からしか、
判断はできないが、
気になることがある。
セブン-イレブン・ジャパンが、
商品企画に生成AIを導入する。
クラウド上に、
独自のITシステム基盤を設けた。
そのプラットフォームに、
米国のオープンAIやグーグル、
英国のスタビリティーAIなどの、
生成AIを搭載した。
そしてPOSデータをはじめ、
ベンダーとの取引情報や、
SNSのデータを分析する。
そしてそれを商品企画に活用する。
これは多分、優れた仕組みだ。
あるべき方向性をもつ。
従来の商品企画は、
構想から骨格を固めるまで、
消費者アンケートなどを基に
社員が商品のアイデアを練り、
複数回の社内会議を経ていた。
今後は新たなシステム基盤で、
マーケティングの「流行」を分析する。
企画書の作成もAIに任せる。
ん~。
システム関連部署で先行して導入した。
たとえば社内会議は、
1つの企画あたり平均5回程度だった。
それが1回まで減った。
商品企画は10カ月前後かかる。
それが最短で1カ月程度に縮まるらしい。
10分の1に短縮される。
確かに時間やコストは減るだろう。
その浮いた時間は、
他の業務や品質改善の取り組みに充てられる。
しかしシステム部門と商品企画部門は、
内容が同じわけではない。
商品企画はマーチャンダイジングであり、
マーケティングである。
そのマーケティング情報を集め、
分析するには大いに役に立つだろう。
企画書の作成にも貢献するだろう。
それらは飛躍的に時間短縮されるだろう。
ただし人間が商品企画を考え、
多くの人間がディスカッションして、
それを練っていくプロセスを、
どこまで生成AIに任せるか。
もちろんキャリアのないバイヤーよりも、
断然優れた企画がすばやく出来上がるに違いない。
卑近な例で申し訳ないが、
将棋ソフトは明らかに、
アマチュアよりも強い。
しかしトップ棋士たちは、
AI情報をもとに、
自分で研究を続ける。
八冠の藤井聡太と王座だった永瀬拓也は、
「VS」と称して練習対局を繰り返す。
二人ともAIで研究し尽くして、
自分の頭で考えた戦法を互いにぶつけ合う。
高いレベルの人間同士が、
それぞれにAIを活用して考え、
さらに協働して、
独自の商品企画をつくり出す。
つまりこのシステムの採用によって、
考える時間が少なくなったり、
考える密度が薄くなったりしたら、
それはよろしくないと思う。
多分、考えない商人は許さない。
鈴木さんはプロ中のプロの商品企画を求めるからだ。
もちろん素人将棋差しよりも、
AIソフトのほうが断然強い。
素人バイヤー、
素人マーチャンダイザーよりも、
生成AIのほうがいい企画をつくるだろう。
そして生成AIに頼ってしまうと、
人が育たない。
こちらの方が問題を大きくする。
日経記事は書く。
「世界の流通大手では
“リテールテック”の活用が進む」
「店内のカメラで顧客の視線を把握して
興味ある商品を割り出したり、
血圧などを基に消費者の健康状態に合う商品を
スマートフォンに表示したりするなど」
そして結論。
「小売業の商品開発において、
生成AIを使うのは世界でも珍しい」
世界のリーディング企業は、
人間が考えるところは、
まだ放棄してはいない、とも考えられる。
私にも本当のところはわからない。
だからやってみることは悪くない。
ただし、考えなくなったら、
知識商人ではない。
ナレッジ・マーチャントではない。
〈結城義晴〉