日経新聞電子版。
「米ブラックフライデー本番」
節約鮮明、「去年より低調」
「大手小売店が早朝から店をあけて
大規模セールを実施したが、
客の入りはやや少なめとの声が多い」
ん~。
考えられる理由の第1は、
インフレの長期化。
消費者の節約志向が根強い。
米国では3%のインフレが続く。
これが今、消費の底流にある。
第2はセールの前倒しによる、
需要の先食い。
「早仕掛け・早仕舞い・際の勝負」が、
ウォルマート、コストコ、アマゾンなどで、
大々的に展開される。
すると他の小売業も一斉に早仕掛けに入る。
ほとんどの企業がそれをやると、
当然ながら「際」、つまり当日の売上げは減る。
トータルで均してみると、
全体では増加しているはずだが、
それでも当日のインパクトが減る。
第3は販売ルートの、
オンラインへの移行。
この現象は確かに大きい。
米国アドビの発表。
11月1日から11月23日まで、
つまりBlackFriday前日までの23日間、
オンライン販売の売上高は、
前年同期比6.8%増。
767億ドルだった。
しかしこれならば、
月曜日のサイバーマンデーには、
BlackFriday当日の客離れの反動が出る。
全米小売業協会の予測では、
今年11〜12月のホリデーシーズン売上高は、
前年同期比3〜4%増の見込みだ。
9573億〜9666億ドルで約143兆円。
伸び率は4〜5年ぶりの低さ。
インフレの影響を除いた実質レベルでは、
ほぼ横ばいとみていい。
このアメリカの潮流は、
日本でも起こるに違いない。
しかしそれでも、
今年の年末商戦も戦略は、
「早仕掛け・早仕舞い・際の勝負」だ。
勤労感謝の日と、
BlackFridayが終わったら、
年末商戦に一直線。
「早仕掛け」は企画の前倒しと、
準備の前倒し。
そして一つの小さな企画が終わったら、
「早仕舞い」をして、すぐ次に移る。
この劇的転換が何よりも大事だ。
若い人たちにはわからないだろうが、
昔のテレビの人気番組。
「8時だョ!全員集合」
1969年に始まって、1985年まで続いた。
ドリフターズのお化け番組だった。
劇場やホールを使って観客を入れ、
生放送でテレビ放映された。
1時間の番組は、
ショートコントが次々に演じられた。
ドリフターズのメンバーは、
この生放送のために1週間をかけて、
アイデアを練り、必死で稽古した。
連続したコントの繰り返しなので、
舞台装置は一瞬のうちに転換された。
この劇的転換が売り物の一つだった。
「早仕舞い」である。
年末商戦にも、
「早仕舞い」が必須だ。
朝日新聞「折々のことば」
第2917回。
11月22日の掲載。
くろうとはどの道の人も、
みなあと片付けがうまい。
〈幸田文(あや)〉
「いけ花の先生が花を生け終えた後、
不用になった枝を三寸くらいに
切り揃えてまとめた」
「その様を見て塵(ちり)さえ愛おしく思えた」
生け花の先生のしぐさが浮かんでくる。
いいなあ。
「障子を張り替える経師屋(きょうじや)さんは
次に家人が掃除にかかりやすいよう
片付ける」
プロの仕事だ。
「人情のこもった仕舞い方と
その『ゆとり』は、次の仕事への
『あと片付けという繋(つな)ぎ目』から
生まれる」
1904年~1990年。
明治生まれの随筆家・小説家。
幸田露伴の次女。
繊細な観察の眼ときりりとした文体。
「後工程はお客様」
これは小売業の仕事の神髄。
そのポイントは、
「あと片付け」と「早仕舞い」
ブラックフライデーが終わったら、
組織全体の「あと片付け力」が、
勝負を分ける。
そんな年末商戦がやってくる。
〈結城義晴〉