もう節分、そして恵方巻。
そのあとに春分、春が来る。
ああ、春だ。
日経新聞一面。
「イオン、育休中の手取り全額補償」
イオンやセブン&アイは、
日本の小売業を代表している。
私はそう思っている。
だからイオンやセブンがやることは、
小売業を先導していることが望ましい。
イオンは育児休業する社員を対象に、
子供が最長1歳になるまで
休暇前と同水準の手取り額を補償する。
男性の育児休業取得は伸び悩んでいる。
政府の目標。
男性の育休取得率を2025年度に50%、
2030年度に85%に引き上げたい。
しかし2022年度の取得率は女性が80%、
男性は17%。
イオンの現状は、
女性がほぼ100%であるのに対し、
男性は15%だ。
その、国の現行制度。
育休の取得期間が180日間(6カ月間)まで、
月給の67%が給付金で補償される。
それ以上休業すると月給の半分になる。
救済措置として、
給付金は非課税となり、
社会・雇用保険料が免除される。
それでも手取り額は、
実質2割程度減少する。
生活に響く。
そこで国の制度は2025年度から、
手取り額の実質10割を補填するように変わる。
だたその期間は最大で28日まで。
イオンが先駆けて実施する制度では、
補填期間が政府の新方針の10倍以上になる。
イオンは子供が最長1歳になるまでの育休に、
休業前の税引き後の手取り額の10割を補償する。
国の給付金との差額は、
休暇の終了後に社員に支払われる。
対象はグループの約150社。
取得に対して年齢制限はない。
ひとり親世帯も対象となる。
育休を取得する可能性のある社員数は、
グループ全体で5万人程度。
初年度の取得者数は男女で2000人の想定。
給与を補填するコストは、
十数億円になる。
それでもコストの割に成果は大きい。
他産業の例。
セールスフォース日本法人。
育児休業中の収入は基本給の100%になる。
22年11月から会社側が補償している。
出生時の男性向け育休も、
法定の3倍の最大12週間休める。
これによって男性の育休取得は、
以前の3倍超に増えた。
イオンが先導して、
新しい制度を導入する。
チェーンストアが他産業に先駆けて、
育児休業社員を手助けする。
それは産業全体にとって、
とてもいいことだ。
制度が刷新されれば、
その恩恵に浴した者は、
それ以上のものを会社や店に返してくれる。
それが人間だ。
会社は国や他産業に先駆けて、
新しい制度を入れる。
良いことは真似よ。
良いことに対しては、
どんどん真似ていい。
日経新聞「折々のことば」
第2987回。
I would ⅽure you.
(ウィリアム・シェイクスピア)
近世イングランドの劇作家。
シェイクスピアの『お気に召すまま』
その台詞(せりふ)。
”cure”は「治す、癒す」の意味だ。
そして強い願いを表す“would”が使われている。
「私が必ず治します」と訳すべきところ。
しかし、英文学者の下館和巳。
シェイクスピア劇を東北弁で上演してきた。
下館は「治(なお)っから」と訳す。
編著者の鷲田清一さん。
「病む人への思いやりが滲(にじ)む」
病気の人、けがをした人に、
声をかける。
「必ず治します」ではなく、
「治っから」
東北弁のやさしさも出ている。
いい訳だなあ。
鷲田さん。
「子どものことも『育てます』より
『育ちます』と言うべきなのだな」
下館の『東北のジュリエット』から。
子どもを育てるときにも、
生徒や学生や院生に教えるときにも、
部下や仲間に接するときにも、
「育てる」ではなく、
「育ちます」だ。
何度も書いているが私は、
「じゃましないこと」をモットーにしている。
それは育てる、教えるではない。
「治っから」
I would ⅽure you.
イオンの育児休暇制度も、
I would ⅽure you.
〈結城義晴〉