世界中が悪くなっている。
それが止まらない。
アレクセイ・ナワリヌイ氏が死んだ。
ロシアの反体制派活動家。
プーチンがもっとも恐れる男。
47歳だった。
北極圏の刑務所に収監されていた。
ヤマロ・ネネツ自治管区にある。
3月には大統領選挙が控えている。
プーチン政権がそれへの影響を考えて、
排除に動いたとの疑念が強まっている。
しかしこういった理不尽なことが行われて、
その真相を突き止めることができない。
罰することもできない。
悪い世の中だ。
ナワリヌイ氏は、
刑務所内の仮設裁判所で発言している。
ロシアのウクライナ侵攻について、
「私はこの戦争に反対です」
「この戦争は、
ロシアの問題から注意をそらすように
設計されていると思う。
それは、より大きな貧困につながるだけだ」
正しいと信じることを言う。
そんな勇気のある人間が、
殺害される。
惜しいことだ。
ナワリヌイ氏を救えなかった。
世界は悪くなっている。
残念なことだ。
私はニューヨーク7日目。
ロピア2024年米国研修第4団。
ザ・ニューヨーカー・ウィンダム2階ホール。
朝7時からセミナー。
第3陣と第4陣の団長は、
井上裕一さん。
ロピア九州本部長、42歳。
何度もアメリカ研修に参加しているが、
そのたびに学ぶことがある。
先輩として本部長として、
団員たちにしっかり動機づけをしてくれた。
これまでに視察し学習した企業や店を、
改めて総括しつつ、
業種・業態とフォーマット戦略。
そのためのポジショニングの考え方。
ロピアの若手に理解してもらいたいことを、
事例を盛り込んで語る。
何度も書くけれど、
日本で講義をするよりも、
何十倍、何百倍も理解が進む。
ロピアは「肉の宝屋藤沢店」の業種から始まった。
それが「ユータカラヤ」の業態になり、
「ロピア」のフォーマットに変わってきた。
急速に変わりつつ、
急激な成長を遂げた。
講義が終わると出発。
今日はちょっとだけ観光もした。
つかの間の観光。
バスはブルックリンへ。
一丁目一番地に、
冷蔵平ケースをおいて、
青果以外の商品をアピールする。
今日は生チョコレート。
これは全米第一のスーパーマーケットの手法だ。
クローガーは必ずこの重要な売場に、
売れ筋の精肉アイテムを配置する。
入り口の青果部門に変化をつけるためだ。
ホールフーズもそれに倣っている。
創意を尊びつつ良いことは真似よ。
倉本長治の商売十訓だ。
精肉の対面売場の隣に、
「ファイン・カッツ」のスペースがある。
精肉のカッティングを見ることができる。
店舗右翼はチーズ売場から、
惣菜・ベーカリーまで。
中央にはセルフデリの平ケースが並ぶ。
最後はベーカリーだ。
パンだけでなく、ケーキとクッキーを、
焼きたてで提供する。
2階にはイートインスペースがある。
そこから駐車場を見下ろすことができる。
駐車スペースには屋根が設けられていて、
その屋根にはソーラーシステムが施されている。
この店で使う電力はこの太陽光発電で賄われる。
ホールフーズのフォーマットに満足して、
今度はトレーダー・ジョー。
銀行の支店跡の物件に出店した。
天井が高く、快適な空間の店だ。
それはポジショニング要件を、
十二分に満たしている。
フォーマットは基本業態に、
ポジショニングをプラスしたものである。
入り口わきに店内チラシの配布場所がある。
「フィアレスフライヤー」と呼ぶ。
1カ月に1回の発行で、
プライベートブランドの解説が、
面白おかしく綴られている。
値段をアピールするチラシではない。
その「フィアレスフライヤー」アイテムを、
エンドでずらりとそろえて展開している。
ニューアイテムのコーナーは、
どの店にも必ず設けられている。
店の入り口側のエンドと、
高い高い天井と、
銀行方式のチェックスタンド。
店舗中央には冷凍食品売場が、
縦に配置されている。
いつも行列ができるトレジョは、
ニューヨークの大繁盛店では、
この銀行方式のレジを採用する。
公平なチェックスタンドは、
並ぶ顧客にストレスを強いることがない。
ホールフーズとトレーダー・ジョー。
堪能した後はマンハッタンに戻る。
もともとはワナメーカー百貨店の建物。
その1階と地下1階を使った。
1階は天井も高い。
シックで快適な売場をつくった。
その1階は即食売場。
これはセオリー。
ウェグマンズではフードサービス部門と呼ぶ。
入り口のバレンタイン売場は、
カットフルーツに変わっていた。
即食の中で際立つのが寿司売場。
ネタとシャリの味、鮮度、メニューの豊富さ。
どれをとってもマンハッタンのトップである。
サラダは即食の王者だ。
ウェグマンズの得意のメニューだ。
アジアンフードも即食。
1階のフードサービスコーナーには、
ウェグマンズのミールソリューションの、
エッセンスが凝縮されている。
エスカレーターで地下1階に降りると、
ウェグマンズの最大の各売場が登場する。
市場のイメージの青果部門。
低い天井を補うために、
スケルトンにした上にボードを設ける。
平台の真ん中に籠盛りを入れて、
狭い売場で多品目多SKUを実現させる。
青果部門に続くのが鮮魚部門。
「魚屋」のステージに、
エイドリアンさんが立っていた。
エイドリアンさんはこの魚屋の責任者で、
解体ショーの主役を務める。
「リブ・ウェル(Live Well)」と呼ばれる、
従業員のケア機能の話をしてくれた。
生活のケアから精神面のケアまで、
24時間で対応してくれる。
ウェグマンズは、
シングルマザーの従業員を大切にする。
エイドリアンさんもそのことに賛同し、
そんなウェグマンズという会社を誇りにしている。
魚屋の解体ショーの売場のわきに、
前回訪れた時のプレゼントが飾られていた。
ロピアのロピタ君。
オスカー・ファリネッティは、
家電チェーンのオーナーだった。
イタリアのユニユーロ。
その会社を売却してから、
イタリア中を巡ってスローフードを研究し、
2007年にイータリーを創業した。
2010年にこのマンハッタンに出店した。
そして大成功を収めた。
ミールソリューションの極致にある。
市場であり、食堂であり、
学校である店。
それがイータリーだ。
そして食堂。
チーズ屋のそばにはチーズの食堂。
野菜のそばには野菜の食堂。
肉屋、魚屋にはその食堂。
開業のときにはパン屋だったが、
今は売れ筋のピザ屋に変わった。
団員はここで買物。
市場で買って、
そこで食べる。
これがイータリーの王道の楽しみ方です。
ここまでですべての視察研修が終わった。
そして団員はそれぞれに自由研修に入っていった。
私たちはホテルに戻った。
最後の最後は浅野先生を囲んで、
井上団長とスリーショット。
実にいい研修でした。
ありがとうございました。
小売業は正義を貫ける。
そして正義を貫いた者が勝つ。
そこが私は大好きだ。
(つづきます)
〈結城義晴〉