日経新聞の記事。
「セブン新型店、格安勢と勝負に」
月刊商人舎3月号の記事と被った。
特集ではないけれど、
特別企画で取り上げた。
こちらは山本恭広編集長が取材して、
書き下ろしの記事となった。
日経の記事の執筆は、
編集委員の鈴木哲也さん。
会ったことはない。
読み比べると実に面白い。
視点が全く違う。
日経の表現では、
「コンビニエンスストアとスーパーを
組み合わせた新型店」
商人舎は、
「コンビニエンスストアとスーパーマーケットの、
コンビネーションストア」
そして新しい「フォーマット」の実験。
同じような表現だが、
専門性が異なる。
日経記事。
「コンビニの便利さと
生鮮品などの品ぞろえを強みに、
安値競争はしない方針だ」
「しかし千葉県松戸市の店舗周辺には、
格安スーパーがひしめく」
「新たな成長の芽を探るが、
“定価販売”で成長してきたコンビニ王者ゆえの
『イノベーションのジレンマ』を
越えられるか試される」
セブン-イレブン松戸常盤平駅前店を、
増床して改装した。
もともと直営店のトレーニングストアで、
売場面積は通常店の約2倍の290㎡。
永松文彦セブン-イレブン・ジャパン社長も、
この店にはよく通った。
「イトーヨーカ堂のノウハウを導入して、
肉・野菜・魚といった生鮮品や
冷凍食品を大きく取り入れたのが特徴だ」
このあと鈴木編集委員の記事は、
競合相手に向かう。
5月開業予定のオーケー、
クリエイトSDのドラッグストア、
地元スーパー。
「ともに価格競争力に定評がある」
駅の反対側には西友。
そして業務スーパーとビッグ・エー。
しかしSIPストアは、
この価格競争には巻き込まれない。
商人舎はそう考える。
あくまでもコンビニだからだ。
日経記事は真の競争相手を見つける。
「似た業態として正面からぶつかるのは、
イオン系小型スーパー“まいばすけっと“になる」
私たちもはじめはそんな見立てをしていた。
しかし実態を知ると、違う。
「コンビニと共存できない時代になった」
岡田元也イオン会長の言葉を持ち出して、
「流通2強のセブンvsイオンの争いが
小型店をめぐって激しくなる」
日経の好きな構図だが、
残念ながら、これも全く違う。
その理由は月刊商人舎3月号に書かれている。
今、「まいばす」は1025店(2023年2月末)を超えた。
こちらは教科書通りのドミナントエリア主義。
その意味ではセブン-イレブンと同じだ。
しかしSIPストアは正反対だ。
なぜか。
この視点がなければ、
新しいコンビネーションストアの、
意味はわからない。
日経はクレイトン・クリステンセンを持ち出す。
『イノベーションのジレンマ』
「セブンイレブンの事業モデルが
極めて強固である分だけ、
その“常識“と相反する要素をもつ新型店が
成功方程式を導くのは想像以上の難路だろう」
ここにクリステンセンを持ち出すのは、
的外れだと思う。
日経の提案というか、感想。
「完全に独立した子会社で専念する方法も
あるのではないか。
数々の成功体験をもつ
既存のセブン-イレブン部門と
一定の距離を置く方が、
思わぬ突破口を見つけやすいかもしれない」
断言しておこう。
それはない。
セブン&アイは、
小型スーパーマーケットの、
ドミナントを築こうとは1ミリも考えていない。
SIPストアの初日は、
客数3300人。
売上高197万円。
コンビニの改善と見れば成功。
小型スーパーマーケットとすれば失敗。
「SIPストア」なんて、
大げさなネーミングをつけるから、
こんなに大騒ぎになった。
ちなみに、
SIPの「S」はSEJ、「I」はIY。
「P」はパートナーシップ。
スーパーマーケットの人たちが、
勉強に行く意味はない。
〈結城義晴〉