日経新聞日曜版の一面記事。
「イオン、パートも中核業務」
イオンは日本国内に、
40万人の非正規社員を雇用する。
国内最大のパートタイマー数である。
店舗の販売部門に、
AIの業務システムを導入している。
たとえば「AIワーク」は、
ワークスケジューリングを自動化したシステムだ。
4月末からすべてのパートタイマーを対象に、
AI活用の研修を施したうえで、
従業員の勤務計画や商品の発注、
さらに販売計画づくりなど、
店舗の中核業務を担えるようにする。
つまり正社員の仕事を移管する。
とくに販売計画は現在、正社員が担っている。
売上げや仕入れに直結する中核業務だ。
AIを使うとその作成時間は8分の1となる。
飛躍的に負荷が軽くなるため、
正社員の業務の一部を移管することができる。
月刊商人舎2022年11月号の記事。
イオンリテール「データドリブン改革」物語
40万人のパートタイマーの人たちが活躍して、
中核の業務を担うようになる。
これからのオペレーションの方向性を示している。
さて、日経新聞の文化欄。
結構充実している。
「現代の詩人の名句」
詩人の高橋順子さんが書く。
金子兜太は俳人たちを分類した。
「彼は業俳(ぎょうはい)」
「彼は遊俳(ゆうはい)」
業俳は専門俳人。
主宰誌をもったり選句をしたりして、
作句を生業(なりわい)にしている人。
遊俳は楽しみで俳句を作っている人。
現代詩の詩人たちに「遊俳」が多い。
たとえば辻征夫(つじゆきお)『貨物船句集』より。
満月や大人になってもついてくる
「いまでもそのへんの路地に、
ぼおっと月を見上げている辻が立ち止まっていて、
ぶつかってしまいそうだ」
もう一句。自由律。
雪降りつもる電話魔は寝ている
三好達治の「雪」。
「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ」
あれを前提にした句。
抒情的な雪が降っているとき、
電話魔は寝ている。
面白い。
詩人・山本楡美子(ゆみこ)の遺句集『楡の花』
夕焼けや家族の名前を書いてみる
高橋評。
「夕焼けは家族と取り合わせると、
なつかしい絵本の味わいである。
しかし家族の名前を書けと
いわれないのに書いている、
これは尋常ではない。
手元にあかあかと
悲痛な夕焼けのかげがさしている。
別れを意識しているのである」
詩人・那珂太郎の遺句集『空寂(くうじゃく)』から。
白障子あくれば虚空に通ふらし
「現実と紙一重のところに
“無”をのぞきこむ瞬間は、
短い俳句のかたちでこそ
印象がより鮮明になるようだ」
作者も俳句のつもりだが、
けれどもこの透徹した美しいイメージは、
謎をはらむゆえに現代詩でもある。
現代詩人の遊俳がつくった俳句。
実に面白い。
同じようにパートタイマーの人たちは、
日本では主婦のプロであることが多い。
その遊俳たちがつくった販売計画。
業務計画や発注計画。
面白いかもしれない。
いや、面白いに違いない。
業俳の句とは違っている。
そこがいいことも多い。
業俳と遊俳。
故金子兜太先生、さすが。
〈結城義晴〉