珍しく、昨夜、熱が出た。
私はその対処法をもっている。
それをやった。
朝には熱は下がった。
軽く朝食をとって薬を飲み、
タクシーに乗り込んだ。
万代知識商人大学第9期が始まった。
例年3月開講の万代カレッジ。
今年はひと月遅れて、
4月に開講。
4月はミッションマネジメント、
5月はヒューマンリソースマネジメント、
7月はフィナンシャルマネジメント、
10月はオペレーションマネジメント、
11月はマーケティングマネジメントと、
ストラテジックマネジメントを、
2日間かけて学ぶ。
そして来年1月の論文発表・修了講義。
6回、7日間で実施される。
その間の9月には、
商人舎ミドルマネジメント研修会に、
全員が参加して、
万代知識商人大学の復習をしつつ、
他社の同志たちと交流する。
よくできたカリキュラムだ。
9期生たちは1年かけて、
マネジメントの体系とその基礎を学ぶ。
仕事はできる者ばかり。
3000人の中から選抜された32人だ。
Managementの「Manage」とは、
馬を御するときの手綱の取り方、といった意味だ。
昔、渥美俊一先生は、
みんなで丸太を漕いで、
どこかへ向かうこと、
という説明をした。
安土敏こと、荒井伸也さんは、
Managementとは、
「段取り組みのことだ」と、
簡潔に説明した。
いずれも正しい。
そのマネジメントは多様化してきた。
なんにでもマネジメントをつけるきらいがある。
しかしその中で大きな枠組みをすると、
6つのマネジメントになる。
それが万代知識商人大学のカリキュラムとなっている。
講義会場は万代本社に隣接する、
万代会議棟の大ホール。
朝9時に開講式がスタート。
物事を斜めから見ずに、まっすぐに見よう。
知識を学んで商売の楽しさを知ろう。
和久さんは丁寧な言葉で、
9期生たちに期待の言葉を贈った。
私が最初に受講生たちに贈る言葉は、
「ビッグシンカー」。
Big Thinker。
世界で初めて企業内大学をつくったのが、
ゼネラルエレクトリック社だ。
1956年のことである。
通称「クロントンビル」。
そのクロントンビルのたった一つの考え方が、
「Big Thinker」である。
大きなモノの見方、考え方。
物事を大きく捉えて考える。
そして実践にあたっては、
小さく着手する。
開講挨拶のあとは、辞令交付。
阿部秀行社長が一人ひとりに辞令を言い渡す。
32名が次々に辞令を受け取る。
会社の正式な業務として学ぶからだ。
今日はコーポレート部門の取締役たちが出席。
管掌部門のミッションを説明しながら、
受講生へ期待の言葉をかける。
これから1年にわたって、
役員たちが自ら講義する。
これが企業内大学のメリットである。
教えられる者は、
自分たちの実務に即して講義が受けられる。
講師たちは大学で講義するために、
自分の管掌を再整理して、
イノベーションにつなげる。
生徒も教師も、
共に学んで成長することができる。
外部の講師は結城義晴だけだ。
昼食休憩をはさんで、
4時間30分。
午前中に2時間、
午後に2時間半。
まずマネジメント体系の説明から入る。
ピーター・ドラッカーは語っている。
「鋸(のこ)や金槌、あるいはペンチしか
持たない者は、大工は出来ない。
それらの道具を一揃えにしたとき、
初めて大工道具を手にしたということが出来る。
それが、私が『現代の経営』で行ったことだ。
私はマネジメントを体系として
まとめたのだった」
万代カレッジ生には、
スーパーマーケットにおける
優秀な大工になってほしい。
それはマネジメント体系の完全な理解から始まる。
講義は倉本長治の商売十訓、
ピーター・ドラッカーが重視する3つの概念、
商業の基幹産業化と知識商人の役割。
さらに午後からスライドを使って
「商売の使命と万代の使命」。
何とか気力で持たせていたが、
午後になって体力が限界にきた。
だから着座での講義となった。
「ミッションマネジメント」の意味を説明してから、
具体的にその事例を解説した。
ウォルマート創業者サム・ウォルトンの10ルール。
イオンの理念、ベニマル商法十二章。
最後にチェーンストアのガイダンス。
万代も160店を超えるチェーンストアである。
だからそのコンセプトはミッションと深くかかわっている。
ゴドフリー・レブハーのチェーンストアの定義、
さらに自著『チェーンストアー産業ビジョン』。
5時間にわたる講義で、最後は声が枯れた。
しかし万代カレッジ第1回講義は無事に終了。
30分ほどの短い時間だが、
これが実にいい。
商売の在り方、マネジメントの在り方を、
経験を交えて話す。
仕事や商売の半分はゲームだと考えてみてほしい。
ゲームをクリアするのは楽しい。
仕事は楽しい。
クリアする方法を一所懸命に考えて、
いいやり方が見つかったら、
夜も寝ていられない。
商売の半分はそんなゲームだ。
楽しめ。
しかも毎日毎日結果が出る。
こんな楽しいことして、
そのうえ給料までもらえる。
万代のチーフの仕事は、
楽しいものだ。
楽しまなければいけない。
和久さんもお疲れさま。
万代知識商人大学第9期、
開講式とミッションマネジメント。
何とかやり遂げた。
体はくたくた、声は完全に涸れた。
熱も出てきた。
それでも講義となると、
全身全霊を傾ける。
手は抜けない。
ご清聴を感謝する。
〈結城義晴〉