警告特集
最高益の「塞翁が馬」
絶好調決算の直後に待ち受けるもの
[CoverMessage(表紙の言葉)]
絶好調の本決算である。次々に過去最高益、増収増益が報告される。とくに食品を主体とするスーパーマーケット、そしてそれを主力とする総合スーパー。コンビニは伸び切った観があるものの、これも好調。しかし全体を見ると、そのベースにあるのは食品の値上げ効果である。1品単価がアップして、客数が減るという、危険な兆候が見えるチェーンもある。そしてこの「円安」。そろそろアベノミクスも正しく評価しなければならない時が来た。浮かれてはいられない。1ドル160円のラインまで浮上して、これには何の光明も見えない。深刻さは底なし沼のようだ。消費者の「節約意識」はますます強くなる。禁欲円購買がごくごく当たり前のものとなる。「円安不況」である。「人間万事塞翁が馬」。禍福は転々とする。良いことが起こると、それが原因となって、ひどく悪いことが起こる。今、まさにそのときだ。経営者は、店長は、リーダーは、何を、どう考え、どう行動するか。警告を発しつつ、提言しよう――。
結城義晴、島田陽介、林廣美。
三人の期待を込めた警告。
受け止めてほしい。
それから、
[特別企画]
ベイシアのベールを剥ぐ!?
不思議なチェーンストアだ。ユニークな会社である。群れない企業。わが道を行く戦略。非上場企業である。その経営実態はベールに包まれている。にもかかわらず、存在感がある。通常ならば、埋没してしまう。しかし㈱ベイシアは業界から、競争相手から、ずっと意識されてきた。グループの㈱カインズは日本一のホームセンターとして躍進を続け、㈱ワークマンはユニクロを凌ぐほどの突出した成長を見せた。本誌はベイシアそのものにも、注目してきた。今回、二人の本部長がインタビューに応じてくれた。その発言をもとに少しだけベールの内側を覗いてみよう。
真夏の営業企画
円安不況に全社・全店・全部門を結集しよう
円安によるインフレや生活コストアップが家計を圧迫している。今春の賃上げラッシュを超える生活費高騰——。消費者全般の生活不安心理は高まるばかりだ。最大の商機である夏季商戦にチェーンストアはいかに営業企画を組み立てるか。いかに実行するか。その基本的な考えを提案しよう。
[新店の注目点]
「そよら横浜高田」の期待値
ご愛読をお願いします。
さて、
商人舎Basic in Las Vegas。
2日目の朝。
今日から毎日、
午前中は結城義晴の講義。
その第1回。
このベーシック編の主旨からはじめて、
アメリカの経済と社会、小売業の基礎データ、
そして小売業界の趨勢など、
鳥の目と魚の目で講義する。
さらにウォルマートについては、
とくに丁寧にその思想から営業の考え方まで。
EDLPやロールバック、
さらにアプリ開発の10の機能など、
最新情報をわかりやすく説明する。
最後はすでに訪れた企業と、
今日訪問する企業。
会社の全体像を講義で話し、
そのうえで店を訪れる。
10時半まで2時間半の講義。
いつも脱線してしまうが、
それが面白い。
講義が終わると、
専用バスで2日目の視察に向かう。
ウォルマート対策のための、
非食品強化型の店舗。
入口の花卉売場は本当に素晴らしい。
導入部は広い広い青果売場。
これならばウォルマートと戦える。
デリカテッセンの核売場。
ここ「ボアーズヘッド」が導入されている。
訳せば「イノシシの頭亭」。
1905年創業のミートデリとチーズの専門ブランドで、
クローガーやパブリックス、さらにスプラウツなどの、
有力スーパーマーケットが導入している。
シーフードとミートの対面売場。
スミスは対面売場を重視している。
非食品は、家庭用品からアウトドアグッズ、
アパレルまでを強化。
ここでランチ。
焼きたてのピザができ上がる。
それにモッツァレラチーズサラダ、
フライドチキン、コーンなどを加えた。
豪勢なランチだ。
次に向かったのは、
ボンズ。
セーフウェイ傘下から、
アルバートソン傘下へ。
ロサンゼルスとネバダのチェーン。
しかし極端に客数が少ない。
ミート&シーフードの対面売場。
スミスに負けないように設けているが、
客数が少ないのでうまく機能していない。
その客数が少ない理由の一つが、
このクラブメンバーへのディスカウント価格。
7.99ドルと表示されているが、
レギュラー価格は8.49ドル。
つまりは二重価格になっている。
それが顧客の信頼を損ねている。
店舗奥主通路沿いに、
ファーマシーがある。
調剤薬局。
冷凍食品のアイルには顧客が一人もいない。
床はピカピカだけれど。
ピックアップサービスもしていて、
駐車場も設けられているが、
その発注は来ないのだろう、
店内でピッキング作業をしている従業員は、
一人もいなかった。
デリは対面売場だ。
エブリデ—ローコストだが、
必要な部署には人を割く。
ミート売場の平ケースの間の島陳列。
両サイドがバンズ、
そして真ん中右がケチャップ、
左がマスタード。
平台にはソーセージが販売されていて、
ホットドックができ上がる。
主通路沿いには、
アメリカ国旗を模したプレゼンテーション。
ウォルマートは安いだけではない。
楽しい売場づくりがその真骨頂なのだ。
スプラウツファーマーズマーケット。
ナチュラル&オーガニックのスーパーマーケット。
団員たちはバスから降りると、
すぐにファサードを撮影する。
記録のためだが、結構目立つ。
そして50人ほどが、
400坪ほどの店内に入って、撮影する。
すかさずスプラウツの店長がやってきて、
「No Photo!」
店の入口から奥までが見通せる。
奥壁面には農場の絵が描かれている。
隣接しているのが、
トータルワイン。
ワインとリカーの専門大店。
ウィンコフーズ。
倉庫型のディスカウント・スーパーマーケット。
スーパーウェアハウスストアと呼ぶ。
導入部はウォール・オブ・バリュー。
「価値ある壁」。
巨大なラックに陳列された超特売商品の売場。
このウォールを抜けると、
広大な生鮮売場が現れる。
デアリー(乳製品)やフローズンは、
すべてリーチインケース。
団員たちは各社の価格戦略を分析するために、
真剣に商品を調査する。
従業員持ち株制度を導入する。
2万人のアソシエーツが、
自分の会社の株をもって、
モチベーション高いオペレーションを見せる。
ホールフーズ。
郊外の住宅地のショッピングセンターの核店舗。
毎年訪問している店だが、
内装を変えた。
それでも高いレベルで管理された、
美しい店であることは間違いない。
ホールフーズは、
ロングテールの品揃えだからだ。
ホールフーズのこの店の退潮ぶりには、
ちょっと驚いた。
いったんホテルに向かって荷物を下ろし、
最後はイータリー。
イータリーは、
イート(EAT)とイタリー(ITALY) を合わせた店名。
イタリアの産物産品・料理を、
「学び、食べ、買う」がコンセプト。
創業者のオスカー・ファリネッティは、
市場であって、食堂であって、
なおかつ学校のような店をつくろうと考えた。
ラスベガス店は、開業当初に比べると、
リニューアルされて食べる機能が強化された。
その分、学ぶ機能が弱体化した。
これは問題だと思う。
それでも団員たちはそれぞれに、
イータリーを楽しんだ。
ラスベガス2日目は、
講義から始まって、
店舗の観察や調査に全力を挙げた。
充実した1日を過ごして、
私も団員もみんな満足した。
(つづきます)
〈結城義晴〉