結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
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2024年06月09日(日曜日)

孔子とソクラテス・論語と弁明・公益と私益

昨日8日(土)、九州南部が梅雨入り。
今日の9日(日)には四国が梅雨入り。

その影響でその影響で、
関東地方も天気がすぐれない。

「論語」に縁のある一日だった。

日経新聞「風見鶏」
「渋沢栄一になるためには」
高橋哲史編集委員が書く。

7月から新しい1万円札の顔となる渋沢栄一。
fb

渋沢は明治以降に、
500社近い企業の設立にかかわった。

「論語と算盤」をうたい文句に、
孔子の教えを日本の資本主義に
植えつけようとした。
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根っこにあったのが、
「道徳経済合一説」

「金もうけは決して悪いことではない。
ただ、自分だけがもうかればいい
という振る舞いでは、
いずれ必ず行き詰まる」

「では、どうすべきか。
大事なのはもうけを社会のために生かす、
すなわち『私益』と『公益』を
両立させる発想だ」

「渋沢はそれができてはじめて、
国全体が豊かになると考えた」

新自由主義は、
1980年代に米英から世界に広がった。
渋沢が理想とした資本主義とは異なる。

「弱肉強食の競争で一部の人に富が集まり、
世界で分断が加速した」

「公益より私益を優先する風潮が
強まったのは否めない」

ここで岸田文雄首相。
2021年9月の自民党総裁選で公約した。
「新自由主義的な政策を転換する」

そして目標に掲げたのが、
「新しい資本主義」の実現。

高橋編集委員。
「意識したのは渋沢の思想だろう」

あら、そうだったのか。

「それに共鳴する議員連盟の会長を務め、
政権発足後は
『富める者と富まざる者、
持てる者と持たざる者の分断』を防ぐと、
内閣の基本方針に明記した」

6月から始まった首相肝煎りの定額減税。

首相が繰り返すのは、
「税収増を国民に還元する」

「国に入ってきた税金が余ったから、
国民に分配する」

「それは渋沢が唱えた公益にかなうものだと
主張したいにちがいない」

そうなのか?

だが実態は公益というより、
「選挙目当ての私益を追求する減税ではないか。
国民の多くは見透かしている」

首相こそ本当に論語を学ばねばならぬ。

「子の曰(のたま)わく、
政を為すに徳を以てすれば、
(たと)えば北辰(ほくしん)の其の所に居て、
衆星(しゅうせい)のこれに共するがごとし」

「北辰」は北極星、例えば内閣総理大臣。
「衆星」はまわりの多くの星、例えば国民。

政治を行う時に道徳によっていれば、
まるで北極星がその天の頂点にあって、
まわりの多くの星が、
その周辺を正しく巡るようになるだろう。

選挙目当ての私益は、
徳とはかけ離れたものだ。

だから国民に見透かされている。

ほぼ日の糸井重里さんも最近、
論語に凝っている。

今日も論語の考察。

たくさんの解説書やら研究書、啓蒙書がある。
「そりゃそうだ、もともと『論語』そのものが
孔子の言ったことを解釈したり、
孔子に質問しているという内容なのだから、
すでに『論語』自体が
『研究』のはじまりの書だよね」

そう、論語は孔子の言ったことを、
弟子たちがまとめたものだ。

ソクラテスも語っただけ。
弟子のプラトンが『弁明』などを、
対話編として書いた。
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さらにディオゲネスが『列伝』に残した。

孔子とソクラテス。
不思議に似ている。

弟子たちが残した孔子の『論語』には、
さらに2500年もの間に、
たくさんの人たちの研究が積み重ねられた。

だから膨大だ。

ソクラテスも同じ。

そこで糸井さん。
「最初は渋沢栄一の書いた
『論語の読み方』という本を、
ちょっと距離をおいて
読んだりしていたんだ」
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「他の学者や研究者や作家たちとちがって、
渋沢栄一は実業の人、つまりは
実利を重んじる人だからね」

「『論語と算盤』という本も書いているくらいで、
「自らを利するために
『論語』を使っていると想像してた」

「ところが、あるとき、気づいたんだよね。
渋沢栄一だけが『論語』を
『使っている』のだけれど、
他の人たちは『研究』しているんだなと、ね」

ここからが糸井流。
「もともと孔子は、
『わたしの言うことを研究しろ』と
言っていたわけじゃなかったはずだ」

「『使ってもらえる』ことを望んでいたと思うし、
わたしの考えは『使える』ものだという自負もあった」

「だとしたら、さんざん
『論語』を使って生きて、
使うものとしての『論語』を
語っている渋沢栄一こそ、
『論語の読み方』を書くには
最も相応しいのではないか」

「わたくしも、
そう思うようになったのであります」

その通り。
さすが糸井さん。

渋沢自身、
『論語と算盤』の中で言っている。
「学問と社会とはそれほど
大きな違いのあるものではない」

研究の「論語」は学問。
使う「論語」は社会。

「あたかも地図を見るときと、
実際に歩くときとのようなものだ」

「地図を開いて見れば、
世界も一眼で見渡せる。
一国一地方は近くにあるように見える」

「しかし詳細な地図をもってしても、
実際と比較してみると、
予想外のことが多い」

「それを深く考えず、わかった気になって
実地に踏み出してみると、
茫漠としておおいに迷う」

地図を上手に使って、
実地に踏み出し、
「公益=私益」を果たした。

それが渋沢栄一だ。

小売業も商売も、
渋沢栄一に倣うべきだ。

1万円札を手にするたびに、
そのことを思って感謝しよう。

首相肝煎りの定額減税は、
公益ではない。

国民の税金を使った私益だ。

〈結城義晴〉

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