小松務さんが亡くなられた。
㈱小松製菓代表取締役会長。
79歳。
商業界全国連合同友会会長として、
倉本長治の商人道運動を継承し、
日本中の商人の先頭に立って、
導いてくれた。
私は㈱商業界社長時代に、
とくにお世話になった。
そして商人舎発足の会では、
発起人に名を連ねていただいた。
小松さんの会社は、
南部せんべいのトップメーカーだ。
その南部せんべいは、
青森県八戸地域の特産品。
小麦粉を原料にした煎餅(せんべい)。
小松さんの母上のシキさんが、
青森で奉公している12歳のころ、
焼き方を覚えた。
その後、岩手の二戸に帰って、
商売を始めた。
幼いシキさんは「商人になる」と決意した。
そして戦後の混乱が続く昭和23年、
21丁の焼き型でたった一人、
南部せんべいを焼いて売る商売が始まった。
小松煎餅店。
せんべい屋は評判を呼んで、
繁盛する。
小松務さんはこのせんべい屋を継ぐ決意をする。
1960年には工場を新設し、
小松製菓と商号を変更し、
人が増え、店も立派になり、
1975年、仙台に「巌手屋(いわてや)」1号店を開業。
1980年には、
漫画家のおおば比呂志氏による、
キャラクターも出来上がった。
シキさんの物語は、
「むすんでひらいて」という本にまとめられ、
テレビドラマにもなった。
小松さんはそのすべてを仕切って、
南部せんべいでトップの製造小売業をつくり上げた。
特長のあるオンリーワンの経営だ。
まずマーチャンダイジングは、
新商品開発に熱心に挑戦する。
ベースは南部せんべい。
しかし毎年のように新しい付加価値をつける。
オリジナル商品は55種類、
サイズやパッケージの違いを含めると、
500アイテムを超える。
15年ほど前だっただろうか、
セブンプレミアムにも取り組んで、
よく売れた。
しかも菓子の製造機械の大半は、
なんと社内製作である。
それから経営そのものが、
「人本主義」である。
小松さん自身、
モラロジーの活動に熱心だった。
全国PTA協議会のトップを務めた。
もちろん商業界同友会活動は、
チューター会会長、
連合同友会会長を務めた。
創業者のシキさんは丁稚奉公などで、
想像を絶する肉体的・精神的な労苦を経験した。
だから経営者として、
社員、顧客、取引先を問わず、
人間尊重・個性尊重の経営を貫いている。
二代目経営者の小松さんは、
そのサキさんの考えを、
一段と充実させ、近代化させた。
2002年に定年を一気に65歳に引き上げた。
さらに70歳までの雇用を保障している。
「小松製菓退職年金制度」は、
「幸せ会」と呼ばれて、
OBやOGに80歳まで年2回、
年金を支給している。
2006年8月3日、
私は二戸を訪れた。
当時の工藤澄人「商業界」編集長も、
取材で同行してくれた。
小松さんは㈱商業界の社外取締役だったので、
私は第58期決算の事前報告に行った。
暑い日だった。
しかし真夏でもクーラーのない事務所。
昭和の時代にタイムスリップしたような錯覚の中で、
私は人間を取り戻したような気分になった。
暖かい会社だった。
奥様が葬儀のお礼の言葉として書かれている。
「本当に必要な時には
厳しいことを言える優しさと、
困っている方がいれば
放っておけない面倒見の良さ」
これこそまさに小松務だ。
私が商業界社長を辞するとき、
「結城さん、もしかしたら、
辞めたほうが結城さんにとっては、
いいかもしれないよ」
その通りだった。
あの岩手弁は今も忘れられない。
「結城さん、会社の経営は、
細かく、厳しく、続けることだよ」
小松務さんに教わった。
私がよく使う「徹底」の定義である。
私は「詳細に、厳密に、継続する」と言ったり、
さらにひらがなで、
「こまかく・きびしく・しつこく」と、
表現したりした。
難しいことを的確に、
易しく言い表す達人だった。
本当にありがとうございました。
今、小松製菓は息子さんの豊さんが、
代表取締役社長として、
立派に継承されている。
心からご冥福を祈ります。
今日はあまりよろしくないニュース2本。
商人舎流通SuperNews。
オーケーnews|
東伏見店エスカレーター死亡事故を受け防止策強化
6月12日(水)10時15分、
オーケー東伏見店。
下りエスカレーターで、
高齢の女性客が転倒し、死亡した。
オーケー(株)がコメント発表した。
今年2024年3月13日に、
東伏見店は開店した。
その際にエスカレーターは新設された、
一人乗りの細いエスカレーターだが、
「現時点において、
設置・稼働・点検状況等に
問題は確認されていない」
関係当局への事故原因の調査に、
全面的に協力していく考えだ。
エスカレーターを設置した店には、
いつもこのオーケーのリスクがある。
異変が起こったらストップする。
そんな安全装置ができるはずだ。
もう一つは、
ロピアnews|
菓子や食品の原料・原産地表示漏れ18商品、再発防止を徹底
こちらは、
農林水産省関東農政局が、
食品表示法第8条第2項の規定に基づいて、
ロピア中央林間店に立入検査に入った。
昨2023年上期。
そして不適正表示を確認した。
その後、今年6月11日に、
表示の是正と原因の究明・分析の徹底、
再発防止対策の実施等について指示を出した。
小分け加工した菓子類および調理食品18商品に、
原料原産地名の表示漏れなどがあった。
73店舗において、
合計64万5994パックが販売された。
この報道を受けて、
ロピアの持株会社㈱OICグループがコメントした。
「法令に対する認識不足と、
社内管理体制の不足が原因」。
これは全社で真摯に受け止め、
再発させてはならない。
徹底しなければならない。
「こまかく・きびしく・しつこく」
ああ、小松務さん、
早すぎる。
合掌
〈結城義晴〉