静岡から関東にかけて、
大雨が降っている。
朝から傘をさして、
東京・新小平。
第一屋製パン㈱本社と小平工場。
いつもここに来ると、
パンの香りがする。
お陰様で順調な成績。
それでも消費の風向きが、
少し変わろうとしている。
それを指摘するのが私の役目。
名誉会長の細貝理榮さんが、
第64回日本書鏡院展で、
特選を受賞。
菅原道真(みちざね)の漢詩。
「九月十日」という題の、
道真の七言絶句。
去年今夜侍清涼
秋思詩篇獨斷腸
恩賜御衣今在此
捧持毎日拜餘香
去年の今夜 清涼(せいりょう)に侍(じ)す
秋思の詩篇 独(ひと)り断腸(だんちょう)
恩賜(おんし)の御衣(ぎょい) 今此(いまここ)に在(あ)り
捧持(ほうじ)して毎日 余香(よこう)を拝す
「去年の今夜は、清涼殿でお仕えしました。
『秋思』という題で詩を詠みました。
今は一人で断腸の思いです。
帝から賜った御衣は今もここにあります。
毎日捧げ持って、残り香を拝しております」
道真は宇多天皇に重用され、
その皇子だった醍醐天皇のもとで、
右大臣に遇される。
しかし太政大臣の藤原時平にうとまれ、
無実の罪を問われて、大宰府に流される。
1年後、大宰府で謳った漢詩だ。
この書には、
細貝さんの人柄がよく出ている。
特選の受賞、おめでとうございました。
さて商人舎流通スーパーニュース。
PPIHnews|
’24年6月期2兆円突破記念・12億円分の大還元キャンペーン
Pan Pacific International Holdings。
6月15日(土)。
2024年6月期売上高が、
2兆円を突破。
35期連続増収も達成。
2024年時点で日本第5位の小売業。
1位セブン&アイ・ホールディングス、
2位イオン
3位アマゾン・ジャパン、
4位ファーストリテイリング。
そして5位PPIH。
1989 年、ドン・キホーテ1号店開業。
独自のフォーマットを確立してから、
総合スーパーを買収した。
長崎屋、ユニー。
そしてMEGAドン・キホーテの新フォーマットに転換。
日本全国で店舗網を拡大してきた。
海外でも米国とアジアで出店を広げ、
2024年5月末時点で7つの国と地域で店舗展開する。
国内・海外で計739店舗を運営する。
月刊商人舎2024年4月号。
[店舗研究特集]
MEGAドンキ成増店
これは魔境のポジショニング戦略だ!
この特集で私たちは、
ドン・キホーテの特徴を2つ挙げる。
第1が個店の営業力である。
強い個店をつくる要因となっているのが、
店舗への大幅な権限移譲である。
これはドン・キホーテのスタート時からの方針で、
現在でも「強み」として活かされている。
いわゆるチェーンストア理論の正反対の政策である。
2011年に安田隆夫創業会長が執筆し、
発刊したものだ。
ドン・キホーテが拡大するにつれ、
安田創業会長は大企業病への危機感を強く意識した。
それがきっかけとなって、
自ら企業理念の明文化と明確化を試みた。
2013年、2015年に改定されて、
版を重ねている。
第一条
高い志とモラルに裏づけられた、
無私で真正直な商売に徹する
第二条
いつの時代も、ワクワク・ドキドキする、
驚安商品がある買い場を構築する
第三条
現場に大胆な権限委譲をはかり、
常に適材適所を見直す
第四条
変化対応と創造的破壊を是とし、
安定志向と予定調和を排する
第五条
果敢な挑戦の手を緩めず、
かつ現実を直視した速やかな撤退を恐れない
第六条
浮利を追わず、
中核となる得意事業をとことん突き詰める
さらに「社員心得・行動規範十箇条」がある。
これが面白いが、
詳細は月刊商人舎4月号。
第2の特徴は高い利益率である。
これも意外な内容だ。
売上総利益率(粗利益)は、
2023年6月期で31.0%。
5年前(2018年6月期)の25.9%から、
大幅に改善されている。
2024年6月期第2四半期では
31.6%とさらに利益率が向上している。
売場では「驚安」を掲げているが、
けっして低粗利益率ではないのだ。
ドンキは「安さ」のイメージは強烈だが、
絶対売価は意外に安くはないのである。
店舗への権限委譲に基づいて、
現場での一定以上の粗利益コントロールが
進んでいるから可能となる。
さらに3割を超える粗利益には、
「情熱価格」と名付けられたPB商品が貢献している。
食品、衣料品、寝具、家電など
幅広い分野で新商品を投入し、
2024年2月時点では、
約4000アイテムのラインアップとなっている。
これまで2兆円を超えた日本の小売業。
イトーヨーカ堂と旧ジャスコ。
ヤマダ電機は2011年3月期に超え、
ファーストリテイリングは2018年8月期に達成した。
アマゾン・ジャパンは2020年12月期。
そこにあのドンキが到達した。
ドンキに長崎屋とユニーが加わって、
それで2兆円を超えた。
その後、2兆円を維持しているのは、
総合スーパー業態には存在しない。
アマゾン・ジャパンと、
ファーストリテーリングは伸びているが、
イトーヨーカ堂もイオンリテールも、
ヤマダも、2兆円の大台を割ってしまった。
達成するのも難しいが、
それを維持するのが難しいのも、
2兆円だ。
〈結城義晴〉