Everyone, Good Monday!
[2024vol㉗]
2024年第27週。
今日から7月。
小学校に入ったばかりのころ、
漢字の読み書きテストがあった。
私は得意としていた。
いつも全問正解だった。
けれど「七月」だけは間違えた。
「ひちがつ」と回答したら、
赤い✕。
「ひちがつ」と回答したら、
また赤い✕。
ショックだった。
私は5歳のときに、
九州の福岡から横浜に引っ越してきた。
博多弁では「ひちがつ」だった。
この二度目の✕で、
標準語では「しちがつ」なのだと知った。
もう65年も前の話だが、
よく覚えている。
その、しちがつ。
英語ではJuly。
英語の原語・ラテン語では、
「Iūlius」と表記して「ユーリウス」と発音する。
ラテン語は古代ローマの共用語である。
紀元前45年、
ユリウス・カエサル(Julius Caesar)が、
ユリウス暦を考案した。
英語ではジュリアス・シーザー。
カエサルは自分の生まれが7月だったので、
7月を「Iūlius」とした。
そこから英語のJulyという言葉が生まれた。
日本の旧暦では「文月」。
「ふづき」でもあるし、
「ふみづき」でもある。
文月や神祇釈教恋無常
〈正岡子規〉
前にも引用したが、
七月はこの句に尽きる。
「神祇(じんぎ)」は天神地祇(てんじんちぎ)の略で、
天地の神々のこと。
「釈教(しゃっきょう)」は釈迦の教え、
仏教のこと。
「恋」は恋。
「無常」は人生のはかないこと。
和歌を分類すると4ジャンルに納まる。
それが「神祇」「釈教」「恋」「無常」。
そこで「神祇釈教恋無常」という言葉が、
世の中のすべての有様を表すようになった。
「じんぎしゃっきょうこいむじょう」である。
子規は和歌の名手でもある。
だからその常套の分類語を使って、
この一句をつくった。
才能が光る。
「7月はすべてが様々だなぁ」
子規はそう感じたのだろう。
結核を病み、蒸し暑い七月は、
とりわけ諸行無常であったに違いない。
能登半島地震から半年が経過した。
7月1日はそのことを実感する日だ。
1月1日16時10分。
マグニチュード7.6の内陸地殻内地震。
亡くなられた方々のご冥福を祈りたい。
心からお見舞いを申し上げたい。
多くの人々の献身的な奉仕があった。
目覚ましい復旧をした。
けれど「メイン道路から一歩入ると、
被災当時と変わらぬ壊れた家々」が残る。
「家の前まで水道が復旧しても、
庭の私有地部分の管が破損していて使えない。
水が通っても下水管が壊れていればトイレに困る」
山陽新聞の「滴一滴」が指摘する。
「代替道路などが少ない、
半島という地形の不利さ、
地震の揺れの大きさをはじめ、
さまざまな要因で復旧が進まない」
「公費解体」は進まない。
これは家屋の解体や撤去の費用を、
行政が負担する制度だが、
その進捗の遅滞が復興の障害となっている。
㈱どんたく、㈱ヤスサキなど、
現地の食品小売業の健闘にエールを送りたい。
羽咋のイオンも鹿島の平和堂アル・プラザも、
ファミリーマート35店舗も、
いつも以上に奮闘した。
朝日新聞「天声人語」
石川県羽咋市の三宅久子さんの短歌を紹介する。
地割れせし中に傾く納屋の壁
余震のたびに隙間の開く
歌人は地震のとき夫、娘と自宅にいた。
納屋が半壊した。
ゆつくりと試運転なる列車行く
直りしレールを噛(か)み締むるごと
コラム。
「思えば万葉集の時代から、
人々は災害も病も戦いも、
あらゆる出来事を詠んできた」
それが「神祇釈教恋無常」である。
「傾いた納屋は解体が決まった。
畑にはいま、夏野菜の葉が茂る」
現地を訪れたコラムニスト。
「能登の優しい土で育ったキュウリをかじると、
大きな音がした」
ここで一句、あるいは一首、
ほしいところだが、
天声人語には詩心が足りないか?
ここまで来たけれど、
堺屋太一さんが指摘したように、
5段階が必要だ。
①救助
②救済
③復旧
④復興
⑤振興
石川県の「創造的復興プラン」は、
⑤の「振興」を意味している。
「半年経過」を意識してつくった感じが、
無きにしも非ずだが、
別冊「施策編」はA4106ページにわたる労作だ。
さまざまな施策が盛り込まれている。
期待したいところだ。
そして小売流通業も、サービス業も、
全面的に支援したい。
今週は月刊商人舎7月号の入稿に勤しむ。
ランチは近場の北海道ラーメン。
では、皆さん、今週も、
「神祇釈教恋無常」でいこう。
Good Monday!
〈結城義晴〉